見出し画像

「コロナ禍だからこそコミュニケーションの課題意識をチームに根付かせる」 / デザインの現場に訊く #4

前回の記事に引き続き、レバレジーズのデザイン戦略室のメンバーにデザインの現場を訊くインタビュー企画です!
4人目は、価値観に共感した企業からスカウトが届く、新卒学生向け就活サービス「キャリアチケット スカウト」のプロダクトマネージャーを担当している富田さん。サービス開発の中で、デザイナーからプロダクトマネージャーになった彼女に「キャリアチケット スカウト」の開発プロセスについて、デザインマネージャーの小林が訊いてみました。

デザイナーからプロダクトマネージャーに転身

ー 改めて、よろしくお願いします!

はい!よろしくお願いします!

ー はじめに、「キャリアチケット スカウト」について教えてください。

「キャリアチケット スカウト」は、新卒向け就活エージェントサービス『キャリアチケット』から生まれたスカウトサービスです。
従来の学生向け就活サービスとは違い、自分では探せなかった企業とのマッチングを期待している学生と、学生のありのままの個性や働くことへの価値観などからスカウトしたい企業との繋がりを生んでいます。

画像1

「キャリアチケット スカウト」のサービスページ


ー 「キャリアチケット スカウト」の開発スケジュールはどんな感じだったんですか?

サービスの発案は2021年の1月で、代表や各事業部と連携をとりつつ事業戦略や事業設計を4月まで行っていました。私がデザイナーとしてジョインして開発に取り組み始めたのは4月からです。6月までは機能設計や画面設計を詰めて、UIデザインをしていました。そしてエンジニアとの実装を7月から始め、9月にリリースというのがざっくりとした流れになります。

ー 確かにかなりのスピード感でしたね。 富田さんは新卒5年目で、今回の開発で初めてプロダクトマネージャーを担当されましたが、どういった経緯だったんですか?

はじめは、デザイナーとしてリファレンスの収集をしたり、マーケターとコミュニケーションをとった上で、デザインの意思決定を担う立場でした。
ただ、デザインって設計全部を考えることだと思っているんです。「ものづくりだけを行う 」関わり方は嫌で、システムや機能設計にレビューを入れたり、スムーズに開発を進行する上で問題になりそうな箇所を先回りして改善案を発案したりと、色々な場面に顔を出していました。

いわゆるプロジェクトマネージャーのような動きを率先して行っていたら、開発を進める時期くらいに、事業責任者からプロダクトマネージャーとして動いてほしいと提案され、役割が変わったんです。

ー すごい抜擢ですね。プロジェクトマネージャからプロダクトマネージャーになって、一番何が変わりましたか?

1番の違いは「KPIなどの戦術が履行できているかを見る立場」から「サービスの品質を維持するための体験が反映されているかどうか責任を持つ立場」になったことです。

実際、私は開発が始まるまでプロジェクトマネージャー的ポジションで、デザインや実装も行いつつ、スケジュールの履行率を見て軌道修正したり、エンジニアが各マイルストーンの中で本当に履行完了できるのかを重視していました。
ですが、その立場のままではサービスで求められる要件や品質が、本当にそのプロダクトで満たされてるかどうかの判断は難しいと思っていました。

「ものづくりだけを行う関わり方は嫌」という自分自身の性から、「伝わる見た目になっているのかどうか」や「ユーザーが求める本当の機能になっているのか?」などを判断するように責任範囲を広げた結果、今の立場を任されるようになり、サービスとしてもチームとしてもいい方向に進みました。

画像2

「キャリアチケット スカウト」の開発スケジュール

コミュニケーション意識をチームに根付かせる

ー 開発を進めていく中で、難しかったことってありましたか?

エンジニア側を十分に考慮したコミュニケーションが取れなかったことです。私が勉強不足だったため、すぐ実装できるだろうと思った機能追加でも、実はコストや工数が想定よりもかかったり、iOSアプリの申請の難易度が高かったりと、エンジニアサイドを考慮した提案ができませんでした。

逆に「この機能って、その工数に見合った価値をユーザーに与えるのか」ということを振り返る、とても良い機会になりました。

ー そういった、他のメンバーとのコミュニケーションの問題ってどうやって解消していったんですか?

Figmaでひたすら作って動かしてそれを見てもらったり、既存アプリのインタラクションを参考に見せたり、とにかくチームでの共有・記録を心がけていました。
コロナ禍のリモートメインでの開発において、細かいインタラクションはどうしても普通の言葉だけのやりとりでは意思疎通が難しかったんです。それに加えて、リモートだと、テキストで残すことを意識しないとどんどん情報が流れてしまうんです。だからこそ、初期リリースの段階から、コミュニケーションに対する課題意識がチームに根付いたことはよかったと思っています。

画像3

「キャリアチケット スカウト」のFigmaデータ


ー 富田さんはフロントの実装もされたんですが、実装においてもコミュニケーションの部分は意識されましたか?

そうですね。フレームワークはNext.jsを使い、UIパーツをコンポーネントとして管理する実装方針となったため、設計はAtomic Designをベースに「ムラのないデザイン」を心がけていました。

全体像から細部まで一気に考えると、無理にコンポーネントを意識した結果、結局全部が粗いまま終わったり、議論での決定事項が洩れる可能性もあるとエンジニアさんと話し合っていました。

初期段階の頃から着手するエリアのスコープを細かく分けて「ここの実装範囲においてこのデザインは本当に必要なのか」を、実装しながら調整していきました。

チーム間の議論の主語を「ユーザー」にする

ー その取り組みは素晴らしいですね。では、開発の際に上手くいったことって何ですか?

ユーザーの声をベースに意思決定し続けられたことがとても良かったです。
具体的には、デザインに着手する前に、どんな思考回路を持った学生が、どんな課題を相談したいかを知るために、ユーザーに近い立場にいたキャリアカウンセラーやキャリアチケット カフェ(「キャリアチケット」が運営する大学生限定のカフェスペース)の学生スタッフ数人にヒアリングを実施しました。自分たちだけで判断するのではなく、実際に学生に触ってもらった上で意見を聞いて、その意見を元に、質問項目のいる・いらないの判断を常に意識していました。
学生がどんな反応をするかのリサーチを惜しまず、毎回改めて、「キャリアチケット スカウト」は本当の意味で就活に課題を持った学生の課題を解決をしているのかどうかをチームで考え抜き、常にブレずに貫けたことで、自信を持ってリリースすることができました。

ー 開発期間が短い中で、チーム間のその意識の統一は大変だったんじゃないですか?

そうですね。スクラム体制で開発は進めていましたが、どうしてもスピード重視になっちゃう時がありました。
でも事業責任者がずっと
「本当にユーザーのためになることをしたい」
と言い続けてくれたおかげで、チーム間の議論の主語が「ユーザー」になったんです。

もちろん「ユーザーのためになるものを作りたい」って全員が意識しているんですが、それを口に出して言い続けられるかどうかで違ってくると思っています。
どの会社、どの組織、どの事業でも言えることかもしれませんが、

・納期に追われて、諦めるような意思決定をしてしまう
・理論上は解決できているが、微妙に違和感がある

などが潜在的な不安としてあるんです。
しかし、常に「ユーザー」を主語にして議論を進めていくことをチームに浸透させていった結果、意識のズレがなくなり、意思決定に自信が持てるようになり、とても良い方向に進みました。

富田_記事内写真2_レタッチ済み


ー その「ユーザー」を主語にする意識ってどんな時に弱くなると感じましたか?

KPIやOKRのような短期的な指標を共有するだけだと失われると思います。
そもそも、そういった数値の指標はユーザーにどんな良い影響を与えたいかを先に決めて、結果的に数値に降りてくるんです。だからこそKPIは目的によって数値を変えるべき、変わるべきものですよね。

ですが、数値の指標を先に決めて「それをやった結果、結局どうならなきゃいけないのか」の部分が一緒に理解・共有できていないメンバーがいると、スプレッドシートに並んでいる数値を見続けてしまったり、本質の判断を見誤ってしまうと感じています。

就活に困っている学生に企業との出会いを与えたい

ー サービスの価値を意識しながら進めていく中で、こだわった点は何ですか?

そもそも、就活のスカウトサービスは、「学生がプロフィールを充実させて、公開して、それを企業が見て、スカウトする」というのが主な流れです。

でも、「プロフィールが充実していない学生にオファーができない」という企業側の問題と、「そもそも企業にアピールするプロフィールを書けない」という学生側の問題がスカウトサービスの本質的な課題になっているんです。学生は、充実したプロフィールを書くことができれば自分に自信がつくし、企業も学生が本当にやりたいことや向いていることを把握した状態で選べるから、どちらにとってもメリットしかありません。

「キャリアチケット スカウト」の対象ユーザーは、就活に困っていない就活生ではなく、就活がうまくできない人にこそ企業との出会いを与えたいと思い、「学生にプロフィールを充実させてもらうこと」に特にこだわりました。

ー そのこだわりはアプリ内にどのように反映させたんですか?

たくさんユーザーヒアリングをした中で、「自己分析ができない」という問題に最終的には行き着くんですよ。就活のESって大体300〜500文字程度なのですが、結構な割合の学生が「そんなに書かなきゃいけないの?」って手が止まっちゃうんです。

そこで、自己PRのような長い文章を書く場合は「何がまずPRになるか」を一言で書いてもらって、次に「それがなぜPRに繋がるか」「その具体的な経験って何か」という流れで、自主的に深堀りができるテンプレートを設けるだけでいいんです。学生は細かく情報整理しながら、フォームをちょっとずつ埋めていくことで、最終的に接続詞を変えれば、いつの間にか自己プロフィールが出来上がっている、という機能がこのプロダクトの最大の価値になります。

画像5

「キャリアチケット スカウト」のプロフィールページのUI


ー 今後、「キャリアチケット 」は何を目指していますか?

そもそも、キャリアチケットの目指すべきゴールは「量より質の就活」です。学生自身がちゃんと自分のことをわかっていれば、企業との出会いっておのずと絞られ、巡り会えると思っています。

就活のナビサイトに掲載されている企業の中からやみくもに探さなくても、学生が本質的に自分のことをちゃんと語ることができて、自然と理想の企業に出会える状態を目指したいです。

富田_カバー写真_レタッチ済み


ー 最後に、どんなプロダクトデザイナーと一緒に働きたいと思いますか?

「今、何が問題で、何を解決すべきか」を考え続けられる人です。「アプリが作りたい」や「こういうデザインにしたい」という理想の形をしっかりもってデザインを生み出すことも重要ですが、その先のゴールである「どういったデザインを目指すべきか」をイメージとして描けるといいのかなと思っています。

どういう進み方をしたらベストか?ストーリーは描けているか?を常に探究できて、それが楽しいと思えるデザイナーと一緒に「キャリアチケット スカウト」を育てていきたいです。

ー ありがとうございました!

富田 優 / Yu Tomita
「キャリアチケット」 プロダクトマネージャー / リードデザイナー

法政大学デザイン工学部にて、IoTを中心にプロダクトデザインを専攻。2017年にレバレジーズに入社後、2年目で新卒の就活支援サービス「キャリアチケット」のリードデザイナーとしてアサイン。現在は同サービスのUI/UXの改善及びプロジェクトマネジメントなどを担当。

レバレジーズのデザイン戦略室では、デザイナー、マネージャー、ディレクターの方を募集しています。応募はこちらから。

デザインマネージャー候補
プロダクトデザイナー(リードUI/UXデザイナー)
プロダクトデザイナー(UI/UXデザイナー)
アートディレクター/グラフィックデザイナー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?