天才と凡人
「君は天才になるよ。つかまり立ちできたもん」
「逆上がりできたの!?お前天才なんだ!!」
「夏休みの宿題もう終わるなんて天才かよ!」
「1年生なのにメンバー入りとか天才すぎて笑える」
「またクラス順位1位?やっぱ天才だったんだ」
「天才って失敗するんだ」
天才と凡人は紙一重だ。
それに気づいた人間がこの世に何人いるだろうか。
もう期待しないでほしい。黒く光った半透明の眼球をこちらに向けないでくれ。今にも裂けそうな口角をそれ以上引き上げないでくれ。私を嘲笑うのをやめてくれ。その指先を向けないでくれ。
「天才」は「謙虚」でいると嫌われるらしい。
「凡人」は「謙虚」でいると好かれるらしい。
貴方がいつもみている私は貴方と同じ人間。
貴方が言う「凡人」が私。
誰に言ってもみんな顔を歪ませて苦笑い。
人生順風満帆そう?
全ては自分のためだった。自分の居場所が欲しかった。天才か凡人がなんてどうだってよかった。どうせなら微塵になりたい。私の名前を宇宙に響き渡るくらいの声で何度も何度も何度も何度も何度も呼んで欲しかった。ただそれだけだった。
どれだけ勉強しても
どれだけ運動しても
どれだけ絵を描いても
どれだけにこにこ笑っていても
どれだけ人の相談に乗ったって
最期は誰も手を差し伸べてくれなかった。
溺れてる私がいるのに気づいている私。
あゝ重い。沈んでいる。水面から指が離れていく。
「天才」というキャッチコピーを付けられた「私」という商品は売れ行きが悪い。
“また廃棄ですね" “使い物にならないですね"
壁一枚先で私を捨てる会話が繰り広げられる。
嗚呼またか。そんな言葉もう慣れた。
自分のために着々と手にしていった勇気と希望は
気づいた頃にはもう星の欠片ほどのちっぽけなものになって私の心に刺さって抜けなくなっていた。
ズキズキ音を犇めきながら今もまだ刺さったまま。
思い出せば出すほど血管を一本一本切っていく。
努力で掴んだ天才の肩書き。私には荷が重かった。
2022.3.15 拝啓 天国の私へ
1の経験。あいつらいない。
1人だって案外良いもんだったもの。
2022.4.7 拝啓 天国の私へ
そろそろ下界に降りてきても良いかも。
だって名前を呼ばれたからね。
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