いつだって､心からの選択をしたい｜私と結婚のはなし

私は複数の選択肢から何かを選ぶとき、
あえて具体的な理由がないほうを選びます｡

なぜなら、明確な根拠がないのに
迷いを断ち切れられないということは
心がそちらに惹かれているからだと思っていて｡

そんな私が、とくにこれまでの人生で
さまざまな選択を迫られたのが結婚でした｡

いつ入籍するか、どこに住むか、
結婚式をするかどうか、など…
決めなければならないことはたくさん｡

その中でも､私にとって一番大きな選択は
どちらの名字を名乗るかということでした。

私は自分の名字が好きです。

私の名字にはある植物の漢字が入っていて､
大学生のときの同級生の友だちに
「植物の漢字が入ってると綺麗な雰囲気だね」
と言われた思い出があります｡

ただ、“自分の名前が好き”｡

理由としてはそれだけですが､
名前を変えずにいられたら…と思っていました｡

夫にその思いを告げると、
「いいじゃん､自分は名字にこだわりないし
名字が変わるの面白そうだからそっちにしよ」
とありがたいことにノリノリで｡

しかし､夫の家族は猛反対でした。

たしかに､私が名字を変えたくない理由は
「自分の名字が好き」というものだけ｡
夫の家族の､“家柄を大切にしたい”という
思いもよく分かります。

夫は家族を説得しようとしてくれましたが
一向に理解してもらうことはできず､
だんだんと夫も疲弊していくように｡

結局、最後は私のほうから
「私が名字を変えるよ」と夫に言いました｡


それは､いま無理に私の意見を押し通したとして
夫の家族と険悪になってしまったら
幸せなスタートを切れなくなると考えたから｡


夫は最後まで私に悪いと思っていたようですが､
「もし結婚してから､やっぱり違うと感じたら
いったん離婚してやり直せばいいよ」と私｡

そうして私たちは婚姻届を出し、
夫側の名字で晴れて夫婦となりました。

「この選択をしてよかった」のかどうかは､
正直まだわかりません。
でも､いまのところ後悔はしていません｡

なぜならいったん離婚というのも冗談ではなく
いつでもやり直せると本気で思っているから｡

そもそも、私は自分が結婚するとは
思っていませんでした。

私の両親は訳あって法律婚をしていません。
だから私の名字というのも女性側(母)の名字｡

他にもまわりの家庭とちょこちょこズレがあり､
自分にとっての普通は一般的な普通とは
すこし違うのかもと少なからず感じていました｡

そんな家庭で育った自分には、
いわゆる“普通”の結婚をする未来が想像できず｡

なので夫にお付き合いを申し込まれたとき、
「結婚を考えていないので」と一度断りました｡
「まだあなたのこともよく知らないし」という､
よくある言葉とともに｡

それでも何度か会ううちに､自分の家族のことを
なにげなく夫に話したことがありました。


私の話を聞いたあと､夫が放った一言は

「前に『僕のことをあまり知らないから』と
言っていたけど、本当は逆に
自分のことを知ってほしかったんじゃない？」｡


ああ、確かにそうかも、と思いました｡

こんな私でもいいと言ってくれるか自信がなくて｡

それでも夫はぜんぶ受け入れてくれて､
私もこの人となら結婚したいと思えるように｡


だから､「この人とずっと一緒にいたい」という
人生最大の選択を私にくれた夫に感謝しているし､

その上で出てきた「名字問題」についても
２人の生活をいかにスタートするかという場面で
そのときできる最善の選択だったと思っています｡

⊹   ⊹   ⊹

私は「自分の名字が好きだから」という
明確な理由がありつつも
最終的に自分の思いとは逆の選択をしました｡

でもそれは､誰かに選ばされたのではなく、
夫とのこれからを大切にしたいと感じていた
私の心が選んだ結果だと今では思っています｡

もし選択を間違えても､いつでもやり直していい｡

そう考えると､まずは一歩踏み出せる気がします｡

先日ふと､夫に「結婚してよかった？」と聞くと
「そりゃよかったよ！」という返事が。

それだけで､今は十分だと思っています｡