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志は高く、でも「一番」だと思わない。前田公輝が大事にする、人間を正直に表現すること

夢を持つことは簡単だが、同じ夢を持ち続けることは難しい。
さらに言うなら、そうした長年の夢を叶えられる人間は一握りだろう。
前田公輝、31歳。
子役としてデビューし、学業との両立など難しい時期を経て、現在は専業の役者として日々研鑽を積んでいる彼は、「朝ドラ」への出演という夢を叶え、さらに大きな目標に向かって邁進している。ファンミーティング「家族会議」開催の当日、久々にファンと対面できることを何よりも喜んでいた前田に、役者としての在り方について聞いた。

■夢が現実になった朝ドラ『ちむどんどん』への出演


「20代になったばっかりの頃かな、“30歳になったら朝ドラに出て、とてつもなく売れる”って友達に夢を語っていたんですよ。そうしたら、30歳のときに本当にお話がきて。言霊というか、言葉の力には驚いていますね」
 
現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』で、主人公・暢子に恋をする一本気な男・智(さとる)を演じている前田公輝。自分がかつて語った言葉が現実になったことに、少し不思議そうに、しかしながらしっかりとその運命を受け入れた迷いのない表情で話してくれた。これまでに多数のテレビや映画、舞台で活躍してきた前田だが、やはり朝ドラの放送がはじまってからは、その反響の大きさに驚いているようだ。
 
「反響はものすごいですね。毎朝15分流れたものが、数時間後には記事になっていることもそうですし、Twitterで上白石萌歌ちゃんとのオフショットをアップしたら、その反応も想像以上で。ネット上だけではなく、別の撮影現場などでも感想をもらうこともありますし、幅広い世代の方からリアクションをいただいていますね」

■外見と中身が独立していても良いと気づいた『HIGH & LOW』シリーズ

前田は6歳のとき、ホリプロの子役養成所「ホリプロ・インプルーブメント・アカデミー」に1期生として入所。同年にはデビューし、子役として『天才てれびくんMAX』や『さわやか3組』などの人気作に出演。17歳の頃には、映画『ひぐらしのなく頃に』で主人公に抜擢されるなど、子供から青年、そして大人へと年齢を重ねながらその役柄を広げてきた。
中でも彼が大きな転機となった作品として名前を挙げるのが、『HIGH & LOW』シリーズだ。メガネをかけたクールな役どころ、しかもアクションでキレのある動きを魅せる轟洋介役は、前田本人とのキャラクターの違いも含め、役者としての在り方を考えさせるものだったという。
 
「僕自身はこうしてお話をするのが大好きな性格なので(笑)、クールな役柄の轟がこれまで受け入れられるとは思っていませんでした。それまで“顔には性格が表れるものだ”と考えていたので、性格的に轟とは正反対である僕が演じることに違和感を覚える人がいるだろうと危惧していたんです。でも、彼のクールな振る舞いにファンがついてくださることを実感できて、それから役者としてのスタンスもかなり変わりましたね。外見と中身はそれぞれ独立させることができるんだって
 
『HIGI & LOW』シリーズは、今秋に久々の新作『THE WORST X』が公開される予定で、そこには轟もメインキャストとして登場する。前回の『THE WORST』では“スランプもあった”と語る前田だが、今回はキャラクターもアクションも、より深く表現できていると自信を見せる。
 
「本作でのアクションはめちゃくちゃ良いですよ! アクションシーンって体を動かすので顔が崩れがちなんですけど、轟に合わせてターミネーターのように機械的に。今までそれは意識していませんでしたが、今回は新キャラクターもいるので敢えて自覚的にやりました」
 
子役からアクションシーンもできる大人の俳優へ――。『ちむどんどん』では精悍で一途な若者を演じているが、今後演じたい役柄はあるのだろうか。
 
「まだ経験していない役柄でいうと、大恋愛をする役ですね。成熟した男性と女性の恋愛。そういう役柄は、撮られ方とか映り方とか、経験値が必要だなと感じていて。カメラの前で魅せる恋は違うと思っていて、画面の中でもっと恋をしていきたいと思います」

■自分の魅力を理解して、それを素直に出す大切さ

そんな前田も、役者として苦しい時期を過ごしたこともある。特に大学に通っていた20歳前後は「まったく仕事がなかった」と彼は振り返る。それでも努力を続ける中で現在に繋がる道筋を立てたわけだが、そこで重要だと感じたのが、“自分らしさ”をそのままアピールすることだった。

「自分の魅力を理解して、それを素直に出すことが大事だと思うようになりましたね。気を遣える人間だと思うのであればずっと気を遣った方が良いし、おしゃべりだと思う人は包み隠さず喋り続けた方が良い。そういう本質をむき出しにしている人は魅力的だし、いずれそれに興味を持ってくれる人が現れるんです。周りを見渡しても、暗いと売れないとか、明るいと仕事が多いとかはなくて、自分はこういう人だと知っている人に仕事があるんですよ。その上で、役者をやるのだったら、志は高く、でも自分は一番と思わない――くらいの考えがちょうど良いと思います」

■夢に対して現実のピントが合っていく感じがある

子役デビューを果たしてから20年以上が経ち、現場ではもはや中堅以上の存在となっている前田。経験がひとつひとつの技術となり、それが彼なりの演技論の確立にもつながっている。「これから役者になりたい人に、アドバイスするなら?」という質問に対しても、大先輩からの教えも含め、惜しみなく自分の考えを語ってくれた。
 
「個人的には、人前でどれだけ感情が出せるかだと思います。その練習としてオススメしたいのは、映画館。映画館は声こそ出せないけれど、周りは暗いから表情に出せるじゃないですか。でも周囲に人はいるから緊張感もある。そんな環境の中で作品の世界観に没入して、泣いて、怒って、笑ってと感情を表現するのが良いと思いますね。
あと、大先輩の船越英一郎さんが教えてくださったのは、シーンの3分前の感情を考える、というものです。“学校に登校して、友達とおはようと挨拶を交わす”というシーンがあったら、どういう気持ちで登校してきたかを考える。シナリオから逆算して、良いことがあったのか、悪いことがあったのか、一番シンプルですけど、それが重要だと。それをやると、セリフではなくて、ちゃんと会話になるんですよね」
 
最後に、役者として、そして人間として目指したい将来像を前田に聞いた。そこで返ってきた答えは、ある意味では贅沢な、だがある意味では自分から勝ち取った勲章とも言える状況との対峙であった。
 
「朝ドラを撮影していると、夢が広がっていくのがわかるというか。今は自分の将来に対して最高に選択肢が増えている状態で、その中からどういう将来像を作り上げるべきか、それに悩んでいる最中ですね。“こうだ!”とひとつ決まった道は今はないのですが、仕事でも、生活でも、SNSでも、こういう風にしたいとアイディアはいろいろあるし、それが実現できるかもしれないと、夢に対してピントが合っていく感覚があります」

【リーズンルッカeye’s】前田公輝を深く知るためのQ&A!

Q.役者以外にやってみたいことは?

売れなかった時期に詩を書きはじめたんです。一人暮らしをはじめた20歳くらいの頃かな。今の自分の心境や仕事に対する思いとか書き綴ることがストレス発散になっていて。『天てれ』のときも高校のときもバンドをやっていて、ギターもまったく弾けないわけではないので、歌はやってみたいと思いますね。そう思いながらこの前本格的に歌詞を書いたら、悪くない内容がサラッと出てきたので、自分発信のものとして見せられるクオリティにできればと思っています。

Q.尊敬する先輩は?

先ほども名前を出しましたが、『赤ひげ』シリーズでご一緒している船越英一郎さんです。船越さんは、「朝ドラで前田公輝がどう磨かれていくのか、近くで見たい」とおっしゃってくれるほど、本当に芸能界のお父さん的存在。役者としても、かなり影響を受けていると思います。

<編集後記>

ファンミーティング前の慌ただしい時間の中で、取材と撮影に応じてくださった前田さん。矢継ぎ早な質問に対しても素早く考えをまとめて返答をくださるので、短時間ながら濃密な時間となりました。ちなみに最近ハマっているのは、役者仲間の佐藤流司さんから教わったというUFOキャッチャーだそうです。

<マネージャー談>

性格が明るくて、初めてお会いする方にも楽しんでもらいたいサービス精神があるので、本当によく喋ります。なので、取材や打合せの際は、押してもいいように少し多めに時間をとります。笑
この日は2年ぶりのファンイベントだったのですが、“ゲーム企画をより楽しくするには”などを、スタッフを含めたグループ電話で話していたらあっという間に1時間を超えます。
基本的に楽屋でも笑い声がたえません。笑

【プロフィール】
前田 公輝(まえだ ごうき)
1991年4月3日生まれ、神奈川県出身。6歳で芸能界デビューし、2003年からNHK教育テレビ「天才てれびくんMAX」でてれび戦士として3年間出演。2008年、映画「ひぐらしのなく頃に」で初主演を果たす。2010年、舞台「白虎隊・ザ・アイドル」で初舞台にして、初の舞台主演を果たす。その後も映画、ドラマ等、精力的に活動している。
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