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好きを大切にできる――タレント・遊歩が芸能界に感謝する理由

『第42回ホリプロタレントスカウトキャラバン』に参加し、男女混合開催では初の男性グランプリを獲得した経歴を持つ遊歩。その明るいキャラクターと、有望なイケメンをピックアップして世間に紹介する「イケメンコンシェルジュ」などプレゼン力の高さでバラエティを中心に活躍する遊歩だが、近年は演技にも力を入れている。初主演作となる舞台『スカベンジャーズのアスカ』の開幕を9月に控え、日々稽古中の遊歩を直撃。アクティブな彼のスタンスに迫る!

■決まりごとはひとつもないし、好きなことができる世界だった

「正直、グランプリに選ばれたあとも、“一年ぐらいで辞めちゃうかな、沖縄へ帰るんだろうな”と思っていたんです。やっぱり不安でしたし、そういう悪い想像が先に立っていました」
 
そう語るのは、沖縄出身のタレント・俳優で、ファッションやコスメ(主に韓国系)にも詳しいことから若い女性に支持されている遊歩。昨年3月、出演したバラエティ番組『今夜くらべてみました』で、「定岡ゆう歩」から現名称への改名を発表。名前の通り、楽しみながら芸能界を渡り歩いているかに見える彼だが、業界に飛び込んだ当初は不安の方が大きかったという。だが、その芸能の特殊なあり方、自由さが、遊歩にとって居心地の良いものへとなっていった。
 
「もちろん厳しい世界ではあると思うのですが、決まりごとはひとつもないし、好きなことができる。僕は“これをやらないでください”って言われたことがないんです。仕事をする現場も、ご一緒する人たちも毎回違うというのも性に合っていて、充実しているなと感じます。だから、僕はこの業界に入ることができて運が良かったと思いますね」

■舞台やテレビドラマでの「演技」にハマって、生活がガラッと変わった

 明るいキャラと、“好き”を魅力的に伝える高いプレゼン能力を生かしたバラエティへの出演が目立つ遊歩だが、近年、力を注いでいるのは俳優業だ。元々、舞台やミュージカルに力を入れているホリプロだけに、遊歩も勉強としてその現場を体感できる機会が多くあった。その中で、演じることへの興味が募っていったそうだ。
 
「舞台上で繰り広げられる演技の迫力に、“こんなにすごいんだ!”と衝撃を受けたんです。そこから演じることに興味が湧いて、テレビドラマや配信ドラマにのめり込んでいきました。小さいときからテレビもドラマもあまり見る習慣がなかったのに、今では週にドラマを10本くらい見ています。生活がガラッと変わってしまったことに、自分が一番びっくりしていますね(笑)」
 
以前からその文化に興味を抱いていた韓国ドラマや、故郷である沖縄を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』にもハマっているという遊歩。朝ドラを見るために、その日用事がなくても早起きし、何度も繰り返し観るのが日課にもなった。
 
「『ちむどんどん』は1話15分だし、好きなシーンがあったらそこから3回くらい繰り返し見たりとか(笑)。故郷が舞台というのもハマった理由のひとつだと思いますし、あとは、(ホリプロの)先輩の前田公輝さんが出演していて。それこそ、僕は(前田が出演していた)『天才てれびくん』世代なので、てれび戦士から朝ドラ俳優に駆け上がっていらっしゃることを、勝手に感慨深く思っています(笑)」
 
様々なドラマを見ながら研究を重ねるだけでなく、俳優としてさらなる活躍を目指すための実践的な練習にも地道に取り組んでいる。ワークショップにも積極的に参加し、マネージャーと二人三脚でその道をしっかりと切り拓こうとしている。
 
「今は週一回のペースで演技のワークショップに通っています。ホリプロの先輩である久保田磨希さんが指導してくださるもので、他の若手俳優さんたちと一緒に参加していて。ほかにも、会社に所属されている映画監督のワークショップを受けたこともあります。声の出し方みたいな基礎的なところから、演技のノウハウまで幅広く学んでいる日々です。それまで演技をまったく経験したことがなかったし、完全にわがままからはじめたところもあるのですが、マネージャーに相談したら“できるところからやっていこう”と。すごく支えてもらっています」

■初主演舞台では、“この人についていって大丈夫なんだ”と思ってもらえるように

 自由に生き方を決められるのは芸能界の長所ではあるが、逆に言えば、親切に売れる道を示してくれるガイドのようなものもない。しかも、次々と新たな才能が誕生する中で自分を保っていく難しさは、遊歩も感じるところだと語る。
 
「この業界って、何かに長けている人がとにかく多いんです。容姿もそうですし、演技力とか、トーク力とかも。そういう人たちを間近で見られる環境にいることは幸せではあるのですが、そこで自分と比べてしまったり、演技や振る舞いを無理に真似しようとしたりすると、自分を見失ってしまう。そういうときは、声に出しちゃいますね。“わたしはわたしで大丈夫!”って。口に出した方が落ち着くんです」
 
9月からは、遊歩の初主演作となる舞台『スカベンジャーズのアスカ』がスタートする。長年、俳優育成を手掛けてきた俳優養成所「アップス」が新たに始動させた「アップスシアター」の第一弾作品で、ゴミに溢れた「外側」で暮らすスカベンジャー(=ゴミ・クズ拾いをして生活する人)たちと、AIで統制された「内側」で暮らす少女の出会いから物語がはじまる。遊歩が演じるのは、内側の世界に憧れるスカベンジャーの若者・リクだ。
 
「主演という立ち位置ももちろんはじめてで、まさか自分に決まるとも思っていなかったので驚きました。リクという役も自分とは違って軸がしっかりしているし、人を守らなきゃいけないという思いも強い。僕は誰かを守るような経験をこれまでしてこなかったので、どうやって彼に近づいていけるかを日々模索しているところです」
 
主演ということは、舞台を引っ張る座長のポジションに就くこととなる。そこに不安はないのだろうか?
 
「今のところ、そこまで不安はないのですが……ただ、アクションの稽古でもなんでも、最初に僕がやることになるんですね。だからお手本を見せるじゃないですけど、“この人についていって大丈夫なんだ”って思ってもらえるように、頑張っていきたいです」

■阿部サダヲさんのような、何にでもなれる俳優に

最後に、遊歩がデビューするきっかけとなったスカウトキャラバンについても話を聞いた。芸能界を熱望していたわけでもなく、興味本意で応募したものの、そこに後悔はまったくないと語る。
 
「最初は本当にちょっと興味があったくらいで、ホリプロに送った写真も、バイト先のユニフォームのままだったし、髪の毛もセットせず(笑)。でも、いろんなことに挑戦できるし、自分がやりたいことや向いていることが見つかるかもしれないです。例えばグランプリを選ぶ決選投票のとき、特技を披露するコーナーで僕はピアノを弾いたんです。スタッフさんから“好きな曲をつなげたメドレーをやってほしい”とリクエストされて、最初はそんなことやったことがなかったからできない、って思っていたのですが、本番ではしっかり成し遂げることができました。それがすごく自信にもなったと思います」
 
興味本意で受けたオーディションから、自分の特技と向き合う中で楽しみを見出し、芸能界へと飛び込んだ遊歩。その後も様々な経験を重ねていく中で強く興味を抱いた、俳優という道。彼の“好きなことをする”という考え方と、それを生業にするための努力が実を結ぶ日も近いだろう。
 
「目標は阿部サダヲさんのような俳優になることですね。3枚目も怖い役も、できない役はない、という俳優になりたいです。今はオーディションの台本をもらっても、自分はちょっと苦手だなとか、自分っぽくないと思って役を遠ざけて見てしまうことがあるんです。そこにちゃんと向き合った上で、どんな役柄でもこなせる人間になりたいです」

【リーズンルッカ‘s EYE】遊歩を深く知るためのQ&A!

Q.最近、ハマっていることは?

A.沖縄の民族楽器である三線をはじめました。練習に没頭していて、自宅ではずっと弾いていますね。僕は耳コピでピアノが弾けるのが特技なんですけど、三線もまずはコードを覚えて、あとは耳でメロディを聴きながら合わせています。将来、三線も自分の武器にできれば良いですね。やっぱり沖縄出身なので、故郷の良さと自分の魅力、どちらも伝えていきたいです。

<編集後記>

「メディアの人に取材されるのも嫌いじゃないです。おしゃべりが大好きなんで(笑)」と、明るく取材を受けてくれた遊歩さん。インタビューにもあるように、現在は演技への情熱は凄まじく、こちらもその熱に押されてしまうほどでした。9月からはじまる『スカベンジャーズのアスカ』は、そんな遊歩さんの情熱がしっかりと反映されたものになりそうです。

<マネージャー談>

取材の日、かっこよく写真を撮っていただき、とてもテンションが上がっていました!(笑)
普段の遊歩は、真面目で頑張り屋です。
最近は、「スカベンジャーズのアスカ」の稽古に連日励んでいます。リクを楽しく演じ切ってほしいです!


 <プロフィール>
遊歩(ゆうほ)
1996年7月21日生まれ、沖縄出身。『第42回ホリプロタレントスカウトキャラバン』でグランプリを獲得し、ホリプロに所属。趣味はイケメンウォッチングと洋服のリメイク。
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【作品情報】

ピュアガール ピュアボーイ募集中!

取材・文/森樹
撮影/梁瀬玉実

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