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自己認知で出来上がった歴史の修正

「いい国(1192)作ろう鎌倉幕府」

高校受験を振り返ってみれば社会が一番暗記に苦労した思い出が蘇る.いくら覚えようとしても既にインプットした情報でストレージが一杯.記憶容量を増やすなんて物理的変革がない限り無理だ.

そんな苦しい思い出のある社会という科目だが、この本を見れば多少は解消される.

まず僕らのやっている歴史というのは時系列が存在して、そこに名前をプロットしインプットするという作業だ.これができなければ何もできない.

そのため暗記記憶とされて一部からは犬猿される.

確かに数字と名前を組み合わせて覚えていくスタイルではいつまで経っても覚えることはできない.

本書の最初でも紹介されていたが

2020年 新型コロナウイルスによるパンデミック
2020年 安倍政権が約12兆8800億円の財源を補填し国民に一律10万円を給付する
2020年 国民の89%がマスク着用をしている
2021年 オリンピック組織委員会会長の森喜朗元総理大臣が女性蔑視問題で辞任する

未来の学校ではこんな時系列で歴史を学習することになるかもしれない.

しかしこれでは面白くない.そこで取り入れるのが時代の背景を理解することである.

上記の時系列を使えばコロナウイルスによってステイホームが推奨され工場封鎖などの措置が出る.これにより経済不安が発生する.さらに学校の休校によって出費が嵩む問題が発生する.

こんな感じに時代の背景を理解していれば「経済不安を少しでも解消するために安倍政権は10万円を給付したんだな」(簡単な解釈で)とスムーズに情報を加えることができる.

国民の89%がマスクを着用しているのもコロナによる感染拡大不安だな.

なぜ2021年にオリンピックの話題なのか?

コロナによるパンデミックでオリンピックが延期し、会期が2021年に延長されたからだな.

なんて覚えていくことができる.

これにより先ほどまでは羅列された情報が繋がり、一つの時代として作られたのである.

このアプローチをとっているのが「絶対に挫折しない日本史」である.

従来の歴史のような暗記手法ではなく、時代背景を理解していくアプローチは画期的である.

例えば平安時代の天皇に後白河天皇という人がいる.この時代の天皇主権政治は院政が主流であり、天皇→上皇→法皇(上皇が出家)という位の中で統治されていた.当時の庶民は下民とされ親子代々で仕事を引き継ぐような自由は存在しない.その中で興味深いのが後白河天皇という変わった天皇だ.

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では後白河法皇を西田敏行氏が演じたことで記憶に新しい人もいると思う.

この後白河天皇は当時、最先端とされた「今様」の発展の中心人物であり、自身が編纂に携わった作品集として『梁塵秘抄』があげられる.

しかし、この「今様」は当時の庶民が楽しむものであり高貴な公家が嗜むものではなかった.その中で後白河天皇は今様を勉強し庶民(遊女)と隔てなく交流し、最終的には『梁塵秘抄』という現代に現存する作品集まで作り上げた.

この時の理由に庶民からの情報の確保が挙げられているが天と地の差がある身分の者同士に交流があったと考えると後白河天皇の自由さや性格を窺い知ることができる.

このように 今様ー後白河天皇→『梁塵秘抄』と覚えるよりも圧倒的に覚えやすいことがわかる.第一に著書が日本史の勉強(固有名詞)を目的としていないことが内容から理解することができるが、日本史のアプローチ方法が知れるだけで圧倒的に自分のためになる.

小学生、中学生で習った歴史は意外にも自己認知の賜物が多く、実際とは印象がかけ離れていることがある.

名称→時代背景というボトムアップ式には限界がある.しかし時代背景→名称というアップダウンであれば大枠の中に埋めていけるため事実と思考とのギャップを縮めることができる.

高校生含め、日本史の勉強以前に読むべき著書はコレ、と言って間違いない.

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