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新居の家具をすべて自分で作ってみた-ベッドフレーム編-

帰宅するたびに迎えてくれる直置きされたベッドマットレス。底はカビないようにすのこを敷いているが、冷気は底に溜まるので、毎夜冷え切るのは時間の問題だった。

写真の通り、当時はカーテンすらなく冷気は通り続けるので半ば外にいる心地になる。底に溜まる冷気から逃れるべく、ベッドフレームを作ることにした。前回同様、⽊製ものづくりのデザインからパーツに加⼯するまでの⼯程をオンラインで完結できるクラウドサービス「EMARF」を使用する。

▲vol.1「引越し編」はこちら

部屋の中で最も面積を取る家具、「ベッド」

マットレスのみでも7畳の居室の3割を占めるベッド。いずれ地方に行きたい自分にとって家具が移動の足枷になり、嵩張る引っ越し代に頭を抱えるのは何としても避けたかったので、ベッドの携帯性を考えてみた。

よって、コンパクトで組み立てやすく、パーツ数も少ないベッドフレームを作っていく。

プロセス①:48板1枚で作れるベッドフレームを考えてみた

主な合板の流通規格として、36板(サブロクバン,1820*910mm)と48板(シハチバン、2440*1220mm)の2種類が存在する。今回は、家具の中でも大きい部類に入るベッドを48板1枚で収める。なるべく端材を少なくし、48板を無駄なく使用する。

▲手前が36板。奥が48板。

しかし実際、人の体重を支えるベッドフレームは面方向でまともに受ければしなり、いつかは折れてしまう。断面方向で受けるのが定石だが太さと肉厚がなければ負けてしまう。構造的には肉厚で大きな部材が必要になってくることが分かった。

プロセス②:考えたものをどんどん形にしてみる

強度を保った構造を担保しつつ48板に収めたい。今回は複雑に考えず建築と同じく柱と梁で考えてみることで、問題の洗い出しと解決を探り、ポジティブに設計を進めていった。以下その変遷の一部である。

・天板を作ると48板の8割が天板になってしまい、他のフレームを組むことは不可能→肉抜きしてみて、その肉抜きした部材がフレームになることは可能ではないか?=抜け感が出て、軽い印象になる。
・部材同士の間隔もEMARF内で決まっているので、長い部材はすべて幅1220mm内で収めなければならない→足を短くしてローベッドなら可能では?=高級感が出るし、低重心なので揺れが少ない。
・コーナーは足をぶつけやすいので足元は天板の下に隠れるように。天板が浮遊しているように遊んでみよう。

▲アイディアを元に作成したモデル。ホゾや部材同士の取り合いなどはこの時点ではほとんど詰めていない。

▲48板に収めるのは苦戦したが、収まった!っと喜びも束の間、並べた姿はものすごく単調に。こちらはボツ案の仲間入りになった。

▲最終的に採用した案。いい感じにおさまった。プロセス3ではここからホゾなど細かいところを設計していく。

プロセス③:ホゾや部材同士の取り合い、収まりを考える。

採用した案を元に、設計で最も重要な「収まり」を考えていく。部材の数は出来るだけ最小限に、だけれど構造的には強く、狭い部屋の中で圧迫感がないものを作るという条件に至った。そこからはホゾと寸法の闘いが始まった。現実は3Dモデルのように無重力で物体同士が貫通できることはない。

▲RhinocerosでEMARFコマンドを使い、ワンクリックで相欠きを作っていく。

▲京都、天龍寺にあった埋め木細工。この工法からインスピレーションを得て埋め木で4辺を固められるジョイントを作った。

▲EMARFの発注画面。ネスティングもミリ単位で調整してEMARFの加工パス画面が出てきた時の喜びと言ったら。
※ネスティング・・・一枚の板の中で切り出す部材を配置すること。端材の少ない配置になるほど「歩留まりが良い」と言う。

▲今回は筆者の働くVUILDの工房で加工した。通常は指定の場所へ、地域の工房から配送してくれる。

▲まとめるとかなりコンパクトに。大人一人で運べる。

175cmと体格が大きめな本人もこのフレームに身を任せるのは不安だったが意外としっかり。メッシュ状の相欠きと四辺の上フレーム、そして3Dプリンターで作ったオリジナルの契りによってガッチリ固められた。

▲スマホをスマホを置いたり、コップ1つくらい置けたり。まだまだ何もないが生活の豊かさが少し上がった。

▲藤編みの単体としての存在も残しつつ、余裕のある収納ができた。

板1枚を家具に変えられるという可能性

一般的な流通規格材を使いEMARFを使ってオンラインで設計/加工を完結できるこのベッドは、携帯性の他にも、製造の簡易さ、そして全国に点在するEMARFの加工拠点で製造できるという強みがでてくる。

例えば災害や有事の際には、48板1枚さえあれば製造できるため、近くのEMARF拠点にデータを送ることで、体育館などの避難場所でもベッドの上で寝ることができる。収納が下にあるので、プライベートを確保することができ、畳めば大人一人で持ち運ぶことも容易だ。個人の利便性を超えてEMARFで作れるからこその価値を見つけていきたい。

▲次はホームセンターで売ってる紙管とEMARFを併せてトイレの収納家具を製作中。


販売サイト立ち上げました

今回作ったベッドを買いたいという問い合わせを頂き、販売することにしました。その他、今まで作った暮らしのための家具とともにご購入頂けます。

暮しのなかで作る(craft)をチカラ(kraft)に変える。イカダ(raft)のように、解体可能で移動できる家具を作る。そんな思いからK -RAFT(クラフト)という屋号でサイト立ち上げました。

「この家具いいな」と思ったり、「もっとここをこうしたら買いたい!」という方にぜひ、このサイトを訪れていただけると幸いです。








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