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「禅の響 -ZEN no OTO- | 本手ノ調」生きる事の深さを見つける

生命は息し、それは無から一瞬に解き放たれ放出し、やがて終焉を迎える。
無は次のはじまり。生命力に溢れ、命を凝縮している。
この一連の流れは、地球が生を終えるまで無常に繰り返される。
人間はありとあらゆる死から目を背ける。
恐怖は極端に萎縮され、小さな個人の枠組みを形成し、そして全てを盲目にする。
万物の過程は人間が考えている以上に、美しく、幸福に満ちている。


 人は何故、死に抗おうとするのでしょうか。それは呼吸を止めてしまうのと同じように思います。自身が死して尚も、血や形状までもが繋がっていたとしても、一つの地球の種が呼吸をしている事は、とても神秘的です。

 心一つ変化のしないものはありません。そこに良いも悪いもなく単に生き様であり、それは人間に限らず、マクロでもミクロでも関係なく事象として常に繰り返されている事です。

 それが、例え安定・平穏に見えたとしても。

 「本手ノ調」は禅の哲学が強く感じられる曲です。心を安定させて吹禅(すいぜん。座禅のように奏する事)したとしても、完璧な平静さはありません。私たちは、そうした心の揺れに実は敏感で、表層的な部分で補おうをします。それは二人称の相手に対しても同じです。

 人は願いますが、また平穏だけで過ごす事はできません。つまり良い演奏など本来はないものです。心の内側から滲み出る深層を感じる事が芸術の根本ではないでしょうか。


 

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