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RIPPLE〔詩〕

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2023年1月の記事一覧

即興詩みっつ〈ブリザード〉

即興詩みっつ〈ブリザード〉

(2023/1/24)

吹雪いたのは何処だったか

緑土でもない枯野でもない

日常にコンクリートを敷き詰め

ペンキをぶちまけた無様な庭で

墓石もどきに腰をおろす

その日たまたま震えていた俺を

歳月という名の巨人の眼が

掠めて素気なく通り過ぎるまでの時間

凪こそがずっと痛かった

乾いた缶を何処に打ちつける



(2023/1/26)

対岸の木を見つめる人も

シンクの茶碗を見

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即興詩みっつ〈若者〉

即興詩みっつ〈若者〉

(2023/1/14)

鏡張りのビルが切り取る

窮屈な升の内にさえ

きっとそれはあるはずと

流れる雲に首を振り

落ちゆく夕陽に眉をしかめた

引き継いできたはずのものは

すっかり失われてしまった

無味の眺望に打ちひしがれて

ありもしない里へ帰ろう

ああそんなところにいたのかい

探し物をする人の

疲れた顔だ



(2023/1/16)

籠から飛び立った鳥は

二度と帰って

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即興詩ふたつ〈水〉

即興詩ふたつ〈水〉

(2023/1/13)

水鏡に爪先ひとつで立つ人の

振り仰ぐ顔に

情欲と恥じらいとを

見透かされた

みすぼらしい者です

一瞥も一声もくれず

見捨てもしてくれなかったあなたは

残して 残さず 逝ってしまった

逆さまの空ばかり

こんなにも物足りないのに

なぜ閑けさが漲るのでしょう



(2023/1/14)

雨だ

道も庇も

奏者不在の

ドラムスになる

古いラブホの一

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即興詩ふたつ

即興詩ふたつ

(2023/1/13)

あの朝日の先に

たぶんヒトはいない

だからひとまず

朝日と僕のあいだに

生きる人々のことを思った

日々とやかく言うことの

愚かしさよりも

虚しいことを知ると

数秒前の僕が現れて

隣りから肩に手を置いたんだ



(2023/1/12)

森が

ほどけて

ほどけかかって

慌ててまばたきをした

ああ森だ

それは深いだけだ


#詩 #ポエム

即興詩(2022.1.5)

即興詩(2022.1.5)

穏やかさと残り物の余白が

はかなくたなびく晴天へ

なけなしの息を吹きかけた

あれを太陽と呼ぶことの

おこがましさなど知りたくなかった

怖くないぞと口を結んで

大丈夫だと虚言を吐いた

経験と引き換えに預けた子猫は

里親猫にくわえられながら

ミャアのひと声であの空と癒合する

焦がれ続けてきたものたちが

虚空へと吸い込まれてゆく刹那を見た

人に与えられているのは

真似をするかし

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