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即興詩ふたつ〈水〉

(2023/1/13)

水鏡に爪先ひとつで立つ人の

振り仰ぐ顔に

情欲と恥じらいとを

見透かされた

みすぼらしい者です

一瞥も一声もくれず

見捨てもしてくれなかったあなたは

残して 残さず 逝ってしまった

逆さまの空ばかり

こんなにも物足りないのに

なぜ閑けさが漲るのでしょう



(2023/1/14)

雨だ

道も庇も

奏者不在の

ドラムスになる

古いラブホの一室で

リズムに没入するふたり

脳裡に安居あんごをよぎらせた

仏教学科の大学院生

八重洲の地下路で

一杯あおる勤め人

お迎えを待つその人だけは

セッションしていた

おろしたての長靴鳴らし

黄色い傘をスティックにして


#詩  #ポエム

ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!