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RIPPLE〔詩〕

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2020年10月の記事一覧

神話詩「ヒュアキントス讃歌」

神話詩「ヒュアキントス讃歌」

表題のヒュアキントスはギリシャ神話に登場する少年の名。太陽神アポローンに愛されたが、2人で円盤投げの遊びに興じているさなか不運な死を遂げる。少年から流れ出た血が花を象り、これがヒヤシンスの起源と伝えられている。

「ヒュアキントス讃歌」

 あのとき喘いでおけばよかった
 風はひとふき
 微笑みを交わすように
 あらゆるものを奪い去る

 白日にさらされた情火は
 承認の嵐だった
 そこから始まる

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詩「恥じらいのあらわ」

詩「恥じらいのあらわ」





「恥じらいのあらわ」

流行りのシャツに袖を通して
裸になっていく少年少女
夕闇にいちど溶け
朝日に散りゆく
逆光のシルエット
粒子がたなびいて代弁した
かの人の健勝と
かの人への羨望を
裸になれないわたしは
恨めしそうに衣を脱ぎ去り
草をまとって 朝露の羊水へ……

空よ あなたに
甘えるように仰向いた
誰も
わたしの背中を見ませんように


#詩 #詩歌 #ポエム #文芸