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RIPPLE〔詩〕

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2019年8月の記事一覧

「泣きつづけよう」
(詩集『巡る風花』より)

何事もなく 得ているようで
知らないうちに 失っていく

ジブンという名の 幻想は
手があるように 見えているだけ

得ていくことと 失うことは
ひとつ屋根の下で ともに暮らす

呼吸と心拍とが ひしめいて
胸の居場所を 取り合うように

ーー欠けたもので できている としたら

待っていたのは 立ち止まるとき
望んでいたのは 下を向くとき

目にと

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四行詩 22.

四行詩 22.

ひとことで片付けられる気楽さと

つらさとの間を今日も生きていく

ひとことも役に立たない悲しみと

よろこびとかで世界は出来ている

恵まれなかった手ばかり見つめ、踏みしめる踵の感触を忘れる。果たして「恵み」とは「なければならない」ものだったか。手の先にぼやけていた大地を見遣る。焦点はうまく合わないが、いつもそこにあったらしい。踵の微かな痛みに気づく。傷ついたのは顔でも心でもなかった。私は…何を怠ってきたのか。