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小説 :フラッシュバック

誰だって時よりフラッシュバックが起こる
それは場面に限らず
鮮明な匂いや感触 
覚えているだろうか
ある日の鉄棒を握った手の匂い
何度水道から水を流せど鼻の奥にまで届く匂い
鉄の匂いを 起こす

小さな加工場から鉄を叩く音
熱を持った鉄板は職人の分厚い手によって
息をする間に形を変えてゆく
 ほらできた
分厚く固い職人の手は
小さな手に触れると温かく色づいた
小さな手に渡った大きな銅の鶴
日光は物干しの下を潜り抜け少女の手の中に輝きを注ぐ
鶴は飴色にキラキラと反射し、少女の目にも輝きを与えた
  じぃじありがとう
咄嗟に立ち上がり家族に見せて回る
 ねえ見てじぃじが作ったの
 あのね、わたし!わたしにくれたの
家の中を鶴と駆け回れば煌めきが増える

あぁ私はこの日々が大好きであった。



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