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『孤独の迷宮』『孤独の百年』と1978年の『日本人の世界地図』

1950年2月、スィウダドゥ・ドゥ・メヒコで、35歳のオクタビオ・パス(Octavio Paz、1914年3月31日~1998年4月19日)の7章構成、「わたしたちの日々(Nuestros días)」を付録とする文化評論『孤独の迷宮』 El laberinto de la soledad(Cuadernos Americanos)が刊行された。

1952年5月30日、メヒコ政府が38歳のオクタビオ・パスを初代駐日代理大使に任命した。

1959年、スィウダドゥ・ドゥ・メヒコで、オクタビオ・パスの9章構成の文化評論『孤独の迷宮』 El laberinto de la soledad第2版(Fondo de Cultura Económica)が刊行された。
付録「わたしたちの日々(Nuestros días)」が第8章として組み込まれた。

1967年6月5日、ブエノス・アイレスで、40歳のガブリエル・ガルスィア・マルケス(Gabriel García Márquez、1927年3月6日~2014年4月17日)著『孤独の百年』Cien años de soledad(Editorial Sudamericana)が刊行された。

1972年5月5日、G・ガルシア=マルケス著、42歳の鼓直(つづみ・ただし、1930年1月26日~2019年4月2日)訳『百年の孤独』(新潮社、950円)が刊行された。
装幀は岸健喜だ。

(うしお)』(潮出版社)1976年9月号から、42歳の高畠通敏(たかばたけ・みちとし、1933年11月16日~2004年7月7日)、36歳の長田弘(おさだ・ひろし、1939年11月10日~2015年5月3日)、54歳の鶴見俊輔(1922年6月25日~2015年7月20日)の鼎談『日本の中の世界書物・映像・事件の周辺』の連載が1「“アパートの哲学者”とアメリカ」で始まった。

』1977年4月号に、42歳の高畠通敏、37歳の長田弘、54歳の鶴見俊輔の鼎談『日本の中の世界』8「中南米(ラテンアメリカ)から日本文化を再考する」が掲載された。

』1977年9月号に、42歳の高畠通敏、37歳の長田弘、55歳の鶴見俊輔の鼎談『日本の中の世界』12「ゴヤとドン・キホーテの哲学」が掲載され、連載が終わった。

1977年12月21日、スィウダドゥ・ドゥ・メヒコで、46歳の山口昌男(1931年8月20日~ 2013年3月10日)が63歳のオクタビオ・パスにインタヴューをおこなった。

1978年2月7日、月刊文芸雑誌『』(中央公論社)3月号「特集:今日の海外文学2オクタビオ・パス 迷宮の詩学」(480円)が発売された。
オクタビオ・パス山口昌男の対談「詩・エロス・宇宙」、46歳の山口昌男オクタビオ・パス―人類学者の解読した」が掲載された。
41歳の天沢退二郎(あまざわ・たいじろう、1936年7月31日~2023年1月25日)「中南米文学論」も掲載された。

1978年8月10日、38歳の長田弘、44歳の高畠通敏、56歳の鶴見俊輔著『日本人の世界地図』(潮出版社、1,300円)が刊行された。
『日本の中の世界』をまとめたものだ。

同書のⅧ「中南米から日本文化を再考する」の長田の発言を引用する(200頁)。

 例えばパスが『孤独の迷路』で、孤独はひとの生きる条件であるとともに試練であり浄化だというふうにいう。孤独というのは、ぼくらのもつ観念では、人びとから切れることをいうわけだけれども、パスのいう孤独は人びとがたがいに分けもっているものとしての孤独ですね。あるいは、コロンビアの作家ガルシア・マルケスの『百年の孤独』。これは原題は「孤独の百年」ですけれども、それはおそらく、六〇年代キューバの合い言葉の一つ「闘争の百年」に対応している。孤独と闘争がいわばメビウスの環になっている。パスやマルケスのいう「孤独」はぼくらのいう一人の密室としての「孤独」とは違う。逆に、切りはなされている人びとを結ぶものとしての「孤独」ですね。矛盾した言葉のもつ力を生きている言葉として差し出されている。ラテン・アメリカの言葉はそういう矛盾を生きる魅力をもってるし、それは日本の社会の辻褄を合わせるありようというものの奇怪さを照らしだす言葉としてもあるわけですね。

長田の発言を引用する(201~202頁)。

辻褄の世界に属さない矛盾する世界を追ってゆくと、そのさきに「奥地」の物語が出てくる。それが人びとの生きて息してる歴史の時間なんだということですね。歴史は国家の時刻表なんかじゃなく、人びとの生きるいわば物語の時間が歴史なんだ。そういう歴史の時間というものをもっとも深く感じさせるものとしてマルケスの『百年の孤独』を考えるんですが、この物語は「奥地」にある家族が住みつくところに始まって、かれらの生きる場所としての「奥地」が失われるまでの百年の物語でしょう。ある日突然「国家」が「奥地」のその家族の集落に入り込んできて、そこから『百年の孤独』の物語は一気に奇態な年代記に入り込んでいく。そして百年ののち「奥地」はア跡形もなく消え去って「国家」だけが物語の外にのこる。つまり、「奥地」が失われて、そのとき人びとの生きた物語もまた失われるわけですね。ラテン・アメリカの言葉が語りかけているのは、ぼくらはそうした「奥地」というものを自分にどのように辻褄の世界の向こうにもちえているかという問いかけなんじゃないだろうかと思うんです。

1979年12月10日、「ラテン・アメリカ文化叢書」Ⅱ、オクタビオ・パス著、
48歳の吉田秀太郎(よしだ・ひでたろう、1931年1月19日~)訳『孤独の迷路素顔のメキシコ人』(新世界社、2,800円)が刊行された。

1980年4月23日、山口昌男編著『二十世紀の知的冒険山口昌男対談集』(岩波書店、1,900円)が刊行された。
オクタヴィオ・パスとの対談「詩・エロス・宇宙」を再録した。

1981年7月2日~7日、東京国際見本市協会B館で、演劇実験室「天井桟敷」第29回公演、45歳の寺山修司(1935年12月10日~1983年5月4日)作・演出『百年の孤独』の公演がおこなわれた。

1982年10月15日、「叢書 ウニベルシタス」、オクタビオ・パス著、44歳の高山智博(1937年12月19日~)、熊谷明子訳『孤独の迷宮メキシコの文化と歴史』(法政大学出版局、2,500円)が刊行された。

1984年9月8日、有楽町スバル座で、ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独』原作、35歳の岸田理生(きしだ・りお、1946年3月10日~2003年6月28日)、46歳の寺山修司脚本、寺山修司監督の映画劇『さらば箱舟』(127分)が公開された。
撮影は1982年1月~3月に沖縄でおこなわれた。

1985年、バルサロナで、オクタビオ・パス著『批評の情熱』Pasión crítica(Seix Barral)が刊行された。
山口昌男(Masao Yamaguchi)との対談「東洋、映像、エロス(Oriente, imagen, eros)」を収めた。

1986年4月25日、「潮文庫」、長田弘高畠通敏鶴見俊輔著『日本人の世界地図』(潮出版社、590円)が刊行された。

1993年7月21日、アップリンクが、赤石高生撮影のモノクロ・ビデオの記録映像、『演劇実験室「天井桟敷」第29回公演 百年の孤独』のVHS(ULV-024、税込5,800円)を発売した。

1997年3月14日、「同時代ライブラリー」、長田弘高畠通敏鶴見俊輔著『日本人の世界地図』(岩波書店、本体1,200円)が刊行された。

1962年のレメディオス・バロ(Remedios Varo、 1908年12月16日~1963年10月8日)の油彩画「螺旋の運航(Tránsito en espiral)」

1999年8月25日、G・ガルシア=マルケス著、69歳の鼓直訳『百年の孤独』全面改訳新装版(新潮社、950円)が刊行された。

2006年12月20日、「ガルシア=マルケス全小説」、G・ガルシア=マルケス著、鼓直訳『百年の孤独』(新潮社、本体2,800円)が刊行された。
表紙画は、シルヴィアベッヒュリ(Silvia Bachli、1956年~)だ。
解説は梨木香歩(なしき・かほ、1959年~)だ。

2011年4月11日、63歳の田村さと子(1947年3月26日~2020年1月19日)著『百年の孤独を歩く : ガルシア=マルケスとわたしの四半世紀』(河出書房新社、本体2,400円)が刊行された。

2015年10月15日、阿波弓夫(あわ・ゆみお、1947年~)著『オクタビオ・パス迷路と帰還』(文化科学高等研究院出版局、本体4,800円)が刊行された。

2018年5月6日、友田とん著『『百年の孤独』を代わりに読む』(本体1,200円)が刊行された。

2024年6月26日、「新潮文庫」、ガブリエル・ガルシア=マルケス著、鼓直訳『百年の孤独』(新潮社、税込1,375円)が刊行された。
装幀は三宅瑠人(みやけ・りゅうと、1988年~)だ。
解説は89歳の筒井康隆(1934年9月24日~)だ。

2024年7月1日、「ハヤカワ・ノンフィクション文庫」、友田とん著『『百年の孤独』を代わりに読む』(早川書房、本体1,180円)が刊行された。
2018年私家版に加筆修正した。
装幀は鈴木千佳子(1983年~)だ。

2024年7月5日、『新潮』(新潮社)8月号「特集:『百年の孤独』と出会い直す」(税込1,200円)が発売された。
78歳の池澤夏樹(1945年7月7日~)と58歳の星野智幸(1965年7月13日~)の対談「ガルシア=マルケス化する世界で」を収めた。

2024年7月10日、31歳の関口竜平(1993年2月26日~)著『『百年の孤独』を代わりに読む』を代わりに読む』(本屋lighthouse、税込800円)が刊行された。
解説は友田とんやってみれば何かが起きるという期待のもとに」だ。


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