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『ノクターナル・アニマルズ』/ちらっと昔を思い出す

最近、見た面白かった映画『ノクターナル・アニマルズ』。監督はファッションデザイナーのトム・フォードで、映画も撮れるんかい。アーティスティックな映像と構成で美しかった。

主人公の美術商のスーザンは金持ち夫と豪邸に住んでいるが、夫は不倫中で、仕事もやりがいを感じられない。昔の夫エドワードから『夜の獣たち』という小説が届き、読み進めながら過去を思い出す。


小説の内容は痛ましい内容で、ドライブ中に妻と娘を理不尽に殺されたトニーの復讐が描かれる。ひ弱な性格のトニーは暴漢に妻と娘を奪われる。警官ボビーと犯人を殺すことにするが、犯人を撃ち殺せない。最後は銃が暴発して自分も死んでしまう。
エドワードの作家としての才能に惹かれたスーザンは再会しようとするが、約束の場所にエドワードは来ずすっぽかされる。終わり。


現実と小説の内容、過去がかわるがわるに差し込まれて、重層的な構成だった。

小説を送りつける元夫のエドワードが粘着質な性格なのかと思うが、途中で明らかになるのがスーザンのエドワードへの裏切り。
スーザンは、金持ちで差別主義者の母親と同じになりたくないと思いながら、母親の言うとおり作家志望のエドワードとの貧しい生活に耐えられず、金持ち彼氏に乗り換えるのだった。エドワードとの子供を堕ろし、車でイケメン彼氏と抱き合っているところをエドワードに見られてしまう。

小説の主人公、トニーは、現実の元彼エドワード役のジェイク・ギレンホールが演じていて、一見、小説のトニーは作者自身のエドワードが投影されているのかと思う。でも、この映像はスーザンの「想像」である。

トニーがそのままエドワードを表しているのかというと、そうなのかな?と疑問だった。調べると、トニーイコールスーザン、と指摘があって確かにそういう見方もできるなと思う。
芸術家の道をあきらめ美術商になり、金持ちの夫と豪邸に住むことを選んだスーザンの主体性の無さが、流されるまま選択できず大事なものを失うトニーを表していると。

自分にもスーザンの生き方は心当たりがある(スーザンほど美も才能もないが)。学生時代に付き合っていた社会的には弱い彼氏と別れて、強い人を選んだ。元彼との交際を母にやめておきなさいと反対されたというのも同じ。
元彼は病歴があった。付き合っているときは体調が悪いことはなかった。彼はアンチ大企業で地方の企業に就職した。私は彼が好きだから一緒に支えあえると自信を持っていたが、どんどん怖くなってしまった。まあでも別れたことを後悔はしていない。(遠距離になって連絡の頻度が十分じゃないと責められたり、その辺の価値観の違いで別れた)


スーザンの生き方が悪いとは思わない。小説家や芸術家として成功するかなんて、後になってからしかわからない。悪い、良いというのではなく、エドワードから君はそういう生き方のままでいいの?という問いかけだったのかもしれない。


スーザン役のエイミー・アダムスがとても綺麗でため息がでる。冒頭の踊る全裸巨体の女性は何を示しているのか私にはわかりませんでした。ここで脱落する人もいるかもしれないけど、ここを乗り越えたらストーリーはちゃんと進みます!

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