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#598 「テイケイ事件」東京地裁(再掲)

2023年10月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第598号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【テイケイ(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2022年6月1日)

▽ <主な争点>
警備現場からの移動時間などが労働時間に該当するかなど

1.事件の概要は?

本件は、T社と労働契約を締結したXが同社に対し、2018年10月から2019年9月までの期間(以下「本件請求期間」という)における時間外労働に対する割増賃金および交通費の不払がある旨主張して、(1)労働契約および労働基準法(労基法)37条1項に基づき、8万3715円および遅延損害金、(2)労基法114条に基づき、付加金7万3860円および遅延損害金等の支払を求めたもの。

Xは毎週水曜日に勤務先の現場から支社まで赴いて勤務実績報告書を提出していたところ、この報告書提出等に要した時間(現場からの移動時間、制服などの着用等のための待ち時間、報告自体に要する時間)の労働時間性などが争点となった。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社およびXについて>

★ T社は、身辺警備請負業、建物警備請負業、貴重品・重要書類等の護送業務等を業務内容とする会社である。

★ Xは、2017年10月、T社と期間の定めのない雇用契約を締結し、警備業務に従事している者であり、所属は埼玉県甲市所在の甲支社(以下「支社」という)であった。XはT社が注文者との間の警備請負契約に基づき警備業務を提供すべき現場において警備業務を行っていた


<警備業務の勤怠管理の方法等について>

★ T社は交通誘導の警備業務に従事する従業員(警備員)について、以下のとおり、勤怠管理を行っていた。

(1)警備員は毎回の勤務時において、各自のスマートフォンからT社のホームページにアクセスし、自身のIDおよびパスワードを使用してログインし、開始時刻と退勤時刻を入力する。

(2)警備員は勤務日ごとに勤務実績報告書に警備開始・終了時刻、休憩時間などの必要事項を記載し、現場において顧客の担当者から確認印を得て、前週の水曜日から火曜日までの1週間分を原則として水曜日までにT社に提出する。

(3)T社はスマートフォンによる入力内容と勤務実績報告書の記載が合致していることを確認し、各日の勤務時間を確定して、翌週の金曜日に給与を支払う。


<本件業務報告等について>

★ Xは水曜日に現場での業務がない場合は、夕方までには自宅から支社に赴き、水曜日に現場での業務がある場合には、勤務終了後に現場から支社に赴き、勤務実績報告書を提出したり、制服等の点検を受けたりしていた(以下、Xが本社に赴いて行った行為を併せて「本件業務報告等」という)。

★ Xが現場での勤務終了後に勤務実績報告書を提出する場合、支社に到着するのは午後6時以降であり、支社には同じく本件業務報告等を行うために来社する他の警備員がいたこともあって、制服の着用等のための待機時間があったが、現場での業務がなく夕方までに行く場合、他の警備員は少なく、滞りなく本件業務報告等を行うことができていた。

★ Xが現場から支社まで移動するのに要する時間は早くても1時間程度であった。


<実績支援手当の支払等について>

▼ Xは2018年10月、T社を相手方として、2017年10月13日から2018年10月22日までの期間における毎週水曜日の業務報告の時間を含む未払残業代等を請求する労働審判を申し立て、2019年2月、同社がXに対して解決金として10万円を支払うことを命じる審判がなされ、これが確定した。

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