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#309 「アクティス事件」東京地裁(再掲)

2012年4月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第309号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【アクティス(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2010年11月26日)

▽ <主な争点>
業務派遣命令を不当に拒絶したこと等を理由とする普通解雇

1.事件の概要は?

本件は、業務派遣命令を不当に拒絶したこと等を理由として普通解雇されたXが当該解雇は無効であると主張して、A社に対し、地位確認および未払賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A社およびXについて>

★ A社は、ソフトウェアの開発等を目的とする会社である。

★ Xは、平成8年7月、A社との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、同社において、システム開発事業部係長として、また、ソフトウェア開発におけるプロジェクトリーダーとして勤務していた者である。

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<本件派遣命令、本件解雇に至った経緯、解雇事由等について>

▼ A社は平成20年5月、共同プロジェクトを立ち上げたN社からシステムエンジニアの派遣要請を受けたことから、Xを適任者と判断し、当該派遣業務に就かせることをXに伝えた。

▼ Xは同年6月、N社での派遣業務に備え、具体的な準備を進めていたが、A社に対し、通勤時間が片道30分程度余計にかかるとして、マンスリーマンションの賃料を負担するよう求めたり、余計にかかる通勤時間を勤務時間として取り扱うよう要請したりしたところ、A社はこれらの要請を拒絶した。

▼ XはA社に対し、「N社での派遣業務は前年夏以来のセクハラ騒動が影響しているのかと勘ぐられる」であるとか、「派遣会社に勤務している覚えはない」などとN社への派遣を拒絶するかのような発言を行った。

▼ Xの上記発言を受け、A社はXに対し、「N社における請負業務を行う」との派遣命令(以下「本件派遣命令」という)を発したところ、同年7月2日、Xは本件派遣命令を拒絶する考えを示し、突然、体調不良を理由に帰宅し、以降出社しなくなった。

▼ Xは同月9日、A社に対して、「うつ状態で通院加療中、1ヵ月間の自宅静養を必要とする」との記載がある診断書および休職届を提出し休職を申し入れたところ、同社はこれを承認した。

▼ A社は21年4月、Xの休職期間が同月1日をもって終了したことを前提に、Xに対し、「自己都合退職」を勧奨したが、Xがこれに応じなかった。そこで、同月、同社はXに対し、同年5月31日付で普通解雇する旨を通知した(以下「本件解雇」という)。

▼ 同年6月、A社はXに対して解雇通知書を送付し、同年5月31日をもって本件解雇が成立したことを通知した。

★ 上記解雇通知書には、本件解雇の事由として以下のような記載がある。

1.当社就業規則に該当する上司に対する誹謗・中傷行為、会社運営・組織の和を乱す行為(服務規律違反)があったため

2.当社就業規則に該当する会社の運営を乱す多大な迷惑行為により、業務への支障(業務妨害)があったため

3.当社就業規則に該当する派遣等の命令を正当な理由なく異動拒否する服務規律違反があったため

4.保険会社の調査では、「病気による休業とは認められない」行状であり、傷病虚偽の疑いがある

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<A社の就業規則の定めについて>

★ A社の就業規則には、以下のような条文(抜粋)がある。

(異動)
第7条
 業務上必要があるときは、従業員に対し、職場職種の変更、転勤、出向、転籍および派遣等を命ずる。
2 前項の命令を受けた従業員は、正当な理由なくこれを拒むことができない。

(基本義務その1)
第9条
 従業員は、この規則その他の諸規程を守り、職制によって定められた上司の指示命令に従い、お互いに協力して職場の秩序を保持し、自己の職責を誠実に遂行しなければならない。

(パワーハラスメントの禁止)
第28条
 従業員は、職場の地位を利用して、人権侵害をする言動を行い、職場環境を悪化させる、あるいは雇用不安を与える言動を行ってはならない。

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