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#189 「朝日新聞社事件」東京地裁

2007年8月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第189号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【朝日新聞社(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2007年3月19日)

▽ <主な争点>
いわゆるフリーランサーの労働基準法上の労働者性

1.事件の概要は?

本件は、A社において翻訳や記事執筆等を行っていたXら3名が、A社との契約関係が雇用契約であると主張して、同社に対し、雇用契約上の地位の確認および賃金の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A社について>

★ A社は、日刊新聞その他の新聞の制作、発行および販売等を目的とする会社である。同社は以前、夕刊の英字新聞である「アサヒイブニングニュース」を発行していたが、平成13年4月からフランスの「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」と業務提携し、日刊の「ヘラルド朝日」を発行している。「ヘラルド朝日」の編集は、同社の国際本部国際編集部が担当している。

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<Xの業務内容等について>

▼ Xは平成8年からA社の国際編集部において、「アサヒイブニングニュース」の制作業務を行うようになった。当初の業務は、情報欄の翻訳とイベントカレンダーの作成であったが、10年頃から記事の執筆を行うようになり、11年頃から翻訳の業務はなくなった。その後、13年4月頃から「ヘラルド朝日」の記事執筆の業務を行うようになった。

★ Xが翻訳の業務を行っていた期間は、業務を行う日を定めたスケジュール表が毎月作成されていた。しかし、遅くとも11年4月頃から、Xが業務を行う時間は定められていない。

★ Xは毎月末、原稿料支払い請求書に業務を行った日に印をつけてA社に提出し、原稿料という名目で報酬の支払いを受けていた。また、Xが取材に要した出張費や書籍資料代などの実費は原稿料のほかに支払われていた。

★ Xは取材活動に際しては、国際編集部よりカメラ、テープレコーダー等の機材を借りて取材しているほか、デスクの指示で国際編集部所属のカメラマンを同行させたこともあった。また、原稿執筆にあたっては、国際編集部備え付けのコンピュータ、事務用机、筆記具を使用していた。

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<Yの業務内容等について>

▼ Yは13年から、A社の国際編集部において、「ヘラルド朝日」に掲載する経済記事の翻訳の業務を行うようになった。

★ その際、YがA社から提示された条件は、「(1)パートタイムで契約期間は定めない、(2)業務を行う時間は、14時から22時まで、(3)時給は手取り3100円で、交通費は別途支給、(4)雇用保険、社会保険の加入はなし、(5)指示による残業の場合、残業時間にも時給を支払う」というものであった。

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