見出し画像

#406 「広島中央保健生活協同組合事件」広島地裁

2016年3月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第406号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 参考条文

★ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第9条
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

─────────────────────────────────────

■ 【広島中央保健生活協同組合(以下、H組合)事件・広島地裁判決】(2012年2月23日)

▽ <主な争点>
妊娠・出産等を理由とする降格と均等法など

1.事件の概要は?

本件は、H組合に雇用され副主任の職位にあった理学療法士であるXが労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ(本件措置)、育児休業終了後も副主任に任ぜられなかったことから、同組合に対し、本件措置は男女雇用機会均等法(均等法)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して、管理職(副主任)手当の支払いおよび債務不履行または不法行為に基づく損害賠償を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<H組合およびXについて>

★ H組合は、組合員の出資によって経営される医療介護事業を営む協同組合である。

★ Xは、平成6年3月、H組合との間で理学療法士として期間の定めのない労働契約を締結し、同組合が運営する甲病院の理学療法科(リハビリテーション科)に配属された者である。

--------------------------------------------------------------------------

<本件各措置に至った経緯等について>

▼ Xは平成16年4月、H組合から甲病院リハビリ科の副主任に命ぜられた。

▼ Xは16年10月28日から17年2月11日までの間、産前産後休暇を取得し(16年12月17日、第1子出産)、17年2月12日から18年2月11日までの間、育児休暇を取得した。

▼ Xは18年2月12日、リハビリ科に職場復帰した。

▼ H組合は19年7月、リハビリ科の業務のうち、訪問リハビリ業務を訪問看護ステーション「乙」に移管した。Xはこれにより、乙の副主任となった。

▼ Xは20年2月、第2子を妊娠し、労働基準法65条3項による「軽易業務への転換(具体的には、訪問リハビリ業務から病院リハビリ業務への転換)」を希望した。これを受けて、H組合は同年3月1日付でXに対し、リハビリ科への異動を命ずるとともに副主任の地位を免じた(以下「本件措置1」という)。

▼ Xは20年9月1日から12月7日まで産前産後休暇を取得し、翌8日から21年10月11日まで育児休暇を取得した。

▼ Xは21年10月、育児休業を終えて職場復帰をし、リハビリ科から「乙」へ異動になったが、副主任に任ぜられることはなかった(以下「本件措置2」という)。

3.職員Xの主な言い分は?

ここから先は

4,062字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?