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奇跡のお菓子屋さん

こんばんは。

れふとです。
今夜もどうか皆様の貴重なお時間を少しだけシェアしてくださいませ。

私の周りには変わり者がよくいます。

本日はそんな中から「持ってる男」を紹介させて頂きます。

当時音楽をしていた頃、コールセンターのバイトで知り合った先輩がいます。
その方はスティーブン(仮)と言う、作家をしつつ、8mmカメラでショートフィルムを作ったり、
箱を貸し切って舞台を転々と回るような、
夢を追いつつも決して焦ることなく、それでいて無駄にヒゲが濃い先輩でした。

スティーブン先輩はジャンルも違う私とよく仲良くしてくれて、
コールセンターの電話が鳴っていない間、色々な話をしていました。

「れふと君さぁ、俺な?今度舞台やんねんけど、暇やったら一回来てみん?」
『え、良いんですか?私みたいなの行って場違いになりませんか?』
「そんなんないわぁ。そんなカッツリした舞台ちゃうねんでいやしかし!」

私は勝手なイメージで、作家とか舞台とかを映画の試写会のような、
そんなイメージで考えていて、
ドレスコードとかあるんじゃないだろうかとか、そんな心配を勝手にしており
舞台を観に行きたいとスティーブン先輩に言えずに、
出会ってから2年が経過しようとしていた頃に切り出されました。

…あれ、もしかして私先輩に勇気を出させてしまったのかしら…

私は先輩と仲良くなる、いえ、打ち解けるまでに2年を要してしまいました。

「後輩やったら自ら
えっ作家されてるんですか?観に行きたいです〜
くらい気ぃ使って言えや!」


きっと先輩は2年間ずっと、こう思っていたのだと思います。
今でも先輩には申し訳なく思っています。

でも、観に行った回数は1回でした。

奇しくも私が初めて観たその舞台終わりに、
スティーブン先輩が舞台に上がり、
みんなに拍手をされながら、カーテンコールを味わいながらも

涙ながらに引退の話をされたのでした。

ぇええええ…。


私は激しく2年間を後悔すると同時に最初で最後の先輩の晴れ舞台に
複雑且つ絵もしれない罪悪感と、1周回って笑いをこらえていました。

先輩…大阪出身の人って、本当に面白いんですね…。

決して笑ってはいけない感動のシーンなんですが、いつもバイト先でくだらない、
本当にくだらない話をあたかも大爆笑をかっさらう芸人かのようなドヤ顔で話してくれはる先輩を、
私は心の底から尊敬しています。
それを加味して笑いをこらえていた事を、どうか誤解なきようお願いいたします。

あ、すいません。
それくらい先輩を感じさせないフランクで気を使わせない、素敵な先輩です。

そんな「持ってる」先輩が、感動のラストを飾る数日前、
朝一番でみんなの前でいつものドヤ顔で話し始めました。

「なぁみんな聞いてくれるかぁ?」

お、何かが起きるぞ。

人間観察の鬼である私は先輩の目を見てすぐに察しました。

「この間ロケで栃木に行ってん。
ほんでな?帰りのロケバス(恐らくマーチ)で帰る途中に小腹空いたなぁ言うてて、
そしたらな?たまたま洋菓子屋があったから寄ったのよ。」

耳だけ傾けて仕事の準備をする人、
はいはい と流し気味に書類整理する人、
完全に話を聞いておらずPCを立ち上げる人、
オチを期待して目を輝かせる私とエツオ君(仮)。

「その洋菓子屋がめっっっちゃうまかってん!お土産買うたろおもてんけど、
帰るまでになくなってもうてぇ!
都内戻る頃にはえぇえええええ言うてぇ!」

なんか、千原Jrっぽい。
練習してきたのかしら。

私は冷静に分析しつつも先輩の話に夢中になっていました。

「しかもそこなんでもあんねん!洋菓子屋やねんけど和菓子もあんねんで?
きんつばとか4/4行ってもうたわ!俺一人でやで!二人ちゃうねんで!?」

…。
私は夢から覚めはじめていました。
夢は、夢中だから夢を追いかけられるのかな なんて、心の中で思っていました。

「今度栃木行ったら絶対買うて来たるわぁ!」

…そろそろ欲しいのかな。

『そんなに美味かったの?何て言う名前なのよ。』

気を利かせたエツオ君がスティーブン先輩に問いかけました。

「いや、これなぁあそこにしかないんちゃうかな。HPとかあるんかなぁ?」

私は夢から覚めるどころか、若干イライラしていました
オチわい!15分引っ張る話ちゃうやろがい!そう、心の中で絶叫していました。


「シャトレーゼって言うねん。」



エツオ君がその後、コツコツとスティーブン先輩を説得しました。
シャトレーゼはチェーン店である事。
割と目にする機会があるお店である事。
大阪人は知らなくてもしょうがないかと涙ながらに背中を叩き、
埼玉県出身のエツオ君の説得を、じっとりとした目で訴える大阪出身の先輩。

私はその日1日、一生懸命スティーブン先輩を慰め続けました。

ただ、心の中でずっと思っていました。

大阪にも多分ある。シャトレーゼは。


今では先輩もご結婚されて、素敵なご家庭を築いていらっしゃいます。
先輩、私はあなたが大好きです。
どうかそのまま「持ってる」先輩でいてください。


ご静聴ありがとうございました。
どうか素敵な夜を。

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