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読書感想文「すべては森から~住まいとウェルビーイングの新基準」落合俊也著

「都市が森に進化し、はだかの皮膚感覚を取り戻す時代が来ることを願う~Artist "Laki Senanayake"」


すごい本に出逢ってしまった!

これは、建築家・落合俊也さんの、ある時は建築的観点から、またある時は林業や森の観点から、またある時はアートであったり、スリランカのアーユルヴェーダであったり、熱帯雨林の魅力であったり、各国のサウナであったり、、、と様々な観点から語られる壮大な哲学的旅行記(、、と勝手に名付けてしまいました、、)です。


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冒頭から、私の潜在意識が反応し、ポロポロ涙が止まらないまま、ずっと読み進めていました。
ここで書かれている、自然界のリズムを保つ森・建築・木材・アート・アーユルヴェーダ・サウナ・アロマ・諸々は、“つまりそういうこと(同調を促すエネルギーが込められているということ)なんだな”と思います。
勿論、本書自体がそうであることは言うまでもありません。

そして、これこそが今私たちに必要な「森羅万象の叡智からのメッセージ」であり、著者落合さんの感性を通して、私たち人類に伝えられているのだ、と、元来私たちに内在している叡智へのwakeupコールなのだ、と思わずにはいられません。

“森羅万象の叡智”

すなわち、、
本書の中でも述べられている「1/fのゆらぎ=自然界のリズム=サーカディアンリズム(太陽のリズム)」であったり、最終章の杉下先生(東京女子医科大学教授)の言葉を借りるならば「森の中に息づく高い秩序の高エネルギー」であったり、スポーツ界でよく聞く「ゾーン状態」、禅でいうところの「なりきる・無・“今”にいる」などと、言い換えることもできるかと思います。

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森羅万象の中で唯一、人類だけが思考し、エゴを持っています。
エゴは自然な現れなので決して悪いものではありませんが、悲しいかな、そのエゴが、内在している叡智をも覆ってしまっています。

現に、私自身も好奇心が旺盛で、知りたい欲はとても強い方です。
特に森羅万象の叡智など、理論的に知ろうとすればするほど、訳がわからなくなる、、、。
ところが、今年3月の、”ちょっとしたキッカケで意識がシフトした体験”により(この話は別途のコラムでお話しています)、「何も難しく考えることはない、ただ瞬間、瞬間を感じるだけでいい」と気づいたのです。
実にシンプルです。


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本書内、スリランカ出身のアーティスト・建築家のラキ・セナナヤキさんのインタビューに、


私自身の望みは、いつも幸福を感じていたいということ。
今現在に満ち足りていて、いつでも満足するようでありたい。
ただそれだけなのです。


とあります。

本当にそれに尽きるのだなと思いました。
私たちは難しくし過ぎているのではないでしょうか。

本書や、ラキさんのアート、その他自然界のリズムを保持する素材による建築にしても、森にしても、木材にしてもアロマにしてもetc…、そこから発しているリズム・エネルギーをただ感じることこそが“同調する”という意味なのです。
更に、それらのエネルギーは時として私たちのポテンシャルを引き出してくれることだって有り得るのです! 

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最終章、先述の杉下先生と落合さんとの対談で「人知を超えた存在への畏怖」という言葉が出てきます。
私はこれを「サレンダー(降参)」と理解しました。
これまで目覚ましく素晴らしい高度経済成長を遂げ、何でも生み出すことができる(と感じている)人類でさえ、圧倒的な自然の中では無力なのです。この度のコロナの猛威でもそれは十分に証明されました。もう今までのように人類は自然から目を反らし傲慢ではいられない。だからサレンダーなのです。でもこれは「負け」という意味ではない。まさに「一部になる・同調する」ということではないでしょうか。

また、ここで妖怪についても述べられていますが、本来の妖怪は私たちに対して、とても友好的でいつも心を開いている存在だったと思うのです(いる、いないは別として)。それがいつしか、支配欲の強い人間によって恐れられ(これは人間の、自分たちの領域に入り込まれる恐れからとも考えられます)、疎まれる存在になってしまった。

このように人類以外の森羅万象(身近で言えば一緒に暮らすペットも)は、自然界のリズム(1/fのゆらぎ)を保ちながら、今もこれまでもずっと変わらず私たちに対してwelcome状態にあるのです。
ですが人類は、そこ(自然界のリズム)へは意識がなかなか向かなかった。今はただそれと同調、または同調することを意識しさえすればよいと思うのです。

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最後に、本書の帯、ラキさんのメッセージを改めて感じてみました。


都市が森に進化し はだかの皮膚感覚を取り戻す時代が来ることを願う


無機質な素材でできた住宅が密集し、都市中心部には高層ビル、タワーマンションが立ち並ぶ、コンクリート、そして電磁波が飛び交う世界、ここをこれから森へと変えていくことは、誰がどう考えても無理でしょう。

では、誰しも森の中に住めばいいのか、、
そういうことではありませんよね。
繰り返しますが、自然界のリズム(森の中に集約されているリズム)は私たちの中にも内在しているのです。

ラキさんの言う「都市が森に進化し」とは、視覚的、物質的なことに限らず、まさに“1/fのゆらぎ=自然界のリズム”を、出来うる限りのものや人との間に、そして自分の中にも感じられる世の中である、ということ。

その為には、ラキさんは「はだかの皮膚感覚を取り戻す」と述べられています。
これは、皮膚の「緻密な神経を備えており、あらゆる感覚を察知し脳に伝える」という科学的な実に素晴らしい側面に加え、敢えて「はだかの皮膚感覚」を比喩的な表現として使い、いわゆる「ありのままの生」、言い換えれば、観念や恐れからくる思考に、すべてが囚われてしまうことなく、潜在意識から湧き出る感情・感覚のまま、シンプルな状態で生きる、と伝えているのではないでしょうか。

人間の意識がそちらに向き始めさえすれば、自然界のリズムを保持し切り出された素材で住まいを作りたいとも思うでしょうし(少なくともその良さを感じるでしょうし)、五感で味わう感覚(味覚・聴覚・嗅覚・視覚・触覚)も、リズムと同調したものを求めるでしょう。
本来、人間は心地良さを求めるのだから。

昨今よく耳にする”ウェルビーイング”の第一歩は、まずは“意識の方向を変えること”、そして次に“感じること”なのだと思います。
(加えて、思考だらけから離れる瞑想や座禅なども、より有効な気がしますが、ここで述べるのは割愛します、、)


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今夏出版された本書は、著者落合さんによると、決して時期を狙ったわけではないとのことですが、コロナ禍で世界中の意識が少しずつウェルビーイングに向き始めた今年、世に創出されたのは、偶然ではない気がしてなりません。
落合さんの、森への深い愛からの視点(それこそ叡智からの視点)で語られる様々な世界は、ここでは言い尽くせないほどの宝が、沢山詰まっています。そして読み終えた後、私たちに大きな癒しをも与えてくれます。また、とても美しく、まるで目の前に繰り広げられているような錯覚を起こす写真の数々にも心惹かれます。

だからこそ、これからの時代になくてはならない、一家に一冊の必読書だと心から思うのです。


*本書に出逢えた感謝とともに*




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