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オーストラリアの幼稚園*リピートや通園しない選択も*

日本で生まれ育った私。外国の教育システムとの差異にはいつも驚かされます。今日は、オーストラリアの幼稚園事情について、リピート制度を中心にノートします。

◆オーストラリアにおける幼稚園の多様な通い方

オーストラリアで出会うお母さんたちと話していると。

「幼稚園どうするか決めた?」

「んー、息子は行かないうちでアクティビティや習い事を沢山してるし、兄弟も友達も多いから、それでもう充分かなって」

「私のところは、3歳(年少さん)はいかない。どっちみち近所の公立は週2日、3時間だけだからね。補助金が出る4歳から行かせるわ」

「そうだよね。私も4歳から行かせたんだけど、まだ小学校には早いからっていうことになって、4歳キンダーをリピートすることになったの」

「うちは3歳をリピートしたよ。1年目はずっと部屋の隅っこにいただけだったけれど、2年目はすごく楽しんでるみたい!」

「私のところは、IB(最近、日本でも人気のバカロレアという教育システム)を実施してる私立で、週5日みっちり通っているよ

・・・という感じで、家庭ごとに、幼稚園に行かないという選択肢も含め、幼稚園の過ごし方の、その多様な事。

お互い、それぞれ教育の選択が異なることも多く、違って当たり前という反応でもはやあまり驚きもありません。

制度的には、ギフテッドと認定される子供に、より早い段階から入園を受け付けるなど、いわば飛び級的なシステムも設けています。

◆どんな時にリピートする?

もしかしたら、日本ではあまり馴染みのない「リピート」という制度ですが、進級せずにもう一度同じ年のカリキュラムを繰り返すことです。最近ではお笑い芸人のパックンがアメリカの幼稚園でリピートしていたことをお話し、ニュースになっていました。

誤解を招きがちかもしれませんが、頭脳や聞き分けの良さはリピートを決める際、優先事項ではありません。

年少さんの場合、積極的に園のアクティビティやお友達との遊びに参加しているかどうか、などの社交の側面が重要な判断基準です。多少わんぱくでも、文字や数字などに関心がなくても、今の学年のお友達と楽しくわいわい過ごしていれば、そのままお友達と一緒に次の学年に進みます。

でも、中には、一年間、先生としか関わらなかったり、ずっと隅っこにいたり、とても人見知りで友達を作りづらく、活動にも積極的に参加しない子供がいます。

「リピートしたら、お友達もできて、より楽しく、充実して、次の一年を過ごせるのではないか」

と親と先生が判断に合意したとき、リピートになります。

4歳(年中さん)のリピートは、次がプレップ(年長さんだけど、0年生のような感じで通う場所が小学校)になるため、心理面や行動面も含め、

「小学校に上がる準備が子供の中でできているか」

も、重要なリピートの決定要因になってきます。

いずれにしても、日本語の「留年」のイメージとは大きく異なります。

リピートを決めるというのは、その子の成長具合に沿って、次の一年にとってベストな過ごし方を決めることなので、とてもポジティブな選択です。

◆発達障害の子供にとってのリピート制度

では、自閉症スペクトラムを含む発達障害の子供にとっては、リピート制度がどう適用されるのでしょうか。

もちろん、発達障害があっても、今の段階で、先生たちが園に順応してると判断し、今のお友達に慣れていれば、普通に進級となります。

しかし、娘のように、他者とのコミュニケーションに著しい困難がある場合、行動だけ鑑みれば、リピート対象かと思います。

そこで、セラピストさん、医者、幼稚園の先生に話を伺う他、Webinarのセミナーなどにも参加し、自閉症スペクトラムの子供のリピートについて色々な話を聞きました。

一般論として、結果的に分かったことは、

「あと一年で伸びしろがあると判断されれば、リピートがふさわしい」

ということでした。

逆に、一年延ばしても変化があまりないだろう、もっと長期的に付き合っていかなければならない問題だろう、と判断されれば、例え、今、お友達と馴染めていなくても、リピートせずに進級となるのです。

実際、ASDの子供たちは、リピートする子も、しない子もいるということもわかりました。

親は、現在の子供については誰よりも理解しているかもしれないけれど、今後一年でどのくらい成長するかについては、心もとないもの。

そうすると、進級に関しては、セラピスト等の専門家の見立てもかなり重要になってくるのかな、という気がしました。

娘の場合には、とりあえず、来年は年中さんに進み、そこで一年様子を見ることになりました。

「お友達」と呼べるような同級生はいないけれども、同級生の名前は憶えているし、人見知りも激しいので、同じ顔触れの中で過ごした方が安心できるだろうと判断してくれたのかもしれません。

また、人とのかかわり方については、この先一年云々でどうにかなる話ではなくて、ずっと付き合っていく彼女のASDの特性でもある、ということも考慮のうちかと思います。

◆感想

今まで、Noteの中でも、オーストラリアにおけるホームスクーリングやリモート教育について触れてきましたが、幼稚園においても、多様な教育形態が存在しています。

私の中のイメージでは、オーストラリアの教育形態はカスタムメイドです。

幼稚園でもその先でも、学校選びの前段階で、選択肢が多く、自由。教育の幅が広く、多様で自由であることは素晴らしいですが、その分、発達障害があってもなくても、先生たち、そして親にとって、迷いどころも増えるなと思います。

ただ、少なくとも、多様性が社会の基盤にあると、勇気と信念に溢れる人間じゃなくても、「マジョリティの教育に合わせなくていいの?」という不安に駆られず、「一人一人の個性にとってどのような教育形態が最適か」の選択に集中できます。どんな選択をしても、周囲の理解も得やすいです。この点は、ありがたい社会環境だと思いますので、それを心に留めつつ、色々と、今後もその都度迷いながら進んでいこうと思います。

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