10年間御守デザイナーをやってみてわかったこと。#05お守の話~袋編~
神社仏閣の世界でお守のデザインをしてきた私ことりいなが、
神社仏閣とデザイナーの関わりについて、自分自身の記録として綴っているこのマガジン。
#05はお守の話の袋のデザイン編です 。
「神社やお寺のモノをデザインしてるんですー。」
と言うと10割から「あの袋のデザインしてるんですねー。」と言われます。
そんな訳で、神社やお寺の御守=袋と言っても過言ではない
代表的なアイテムです。
(実際は袋ばっかりではなかったです)
個人的にも神社やお寺に参拝参詣すると、他のアイテムより袋を見てしまいますね。
御守袋のデザインについて
お守の袋のデザインは5つの要素で出来ています。
1.柄
2.ネーミング
3.ロゴ
4.紐
5.形
①柄
第一印象の9割が見た目などと言われるくらい
雑貨類に近いお守を構成する要素の中では柄は重要です。
と、いうのも。他の要素は『定番』で『当たり前』なので同じような物が多いですし、同じような物が求められているので
『違い』を表現するには、結果的に『柄』で勝負する事が多いわけです。
また、業界的な事情もあります。
・OEMの柄
・小ロット
・低単価
・高品質
・安っぽくない
これらはお守としての最低条件であり、問題点です。
OEMでないものも勿論ありますが、『どこでも買えるお守』より『ここにしかないお守』が求められる時代。
しかし、1店舗でしか販売しないアイテムのロットがいかばかりか。
「宗教施設は税金がないんでしょ?」という勘違いによって仕入れ値が上がっても料金据え置きのお守。
神様からの授かりもの、人の願いの結晶だからこそ求められる高品質。
そして品格。
服飾や雑貨を手掛けたことのある人にはこの無茶ぶりがわかっていただけると思います…
それでもこの無茶ぶりは大切なことでもあります。
昔ほど、地域からの寄付が集まらなくなっているこの時代の大切な収入源であるお守。
零細神社って多いんです。墓地を持っていないお寺もしかり。
~閑話休題~
柄の話に戻ります。
こういった事情によって、小ロットのOEMに対応する為に柄が重要視されます。
お守の生地は機織りです。よく刺繍と勘違いされますが、(まれに刺繍のものもありますが)経糸と横糸が合わさるあの機織りです。
刺繍は高い。
小ロットだとまず考えられるプリントですが、あまり人気がありません。
金糸の文字がパキッとしていて品格を感じるみたいです。
様々な織場に協力して頂いて実現されている『オリジナルの柄』
このお守の顔とも言える柄のデザインは真剣に考えて作ります。
前回、中身についてお伝えしたように
袋の中には神様・仏様の力(エネルギー)が入り、参拝参詣者のサポートをします。
✖『持っていれば自動的に作用される』
〇『持ち主の努力によって作用される』
ただ持っている訳ではサポートが受けられない神力とご加護。
持ち主とお守の間に、願いが、想いが、スムーズに繋がる
デザインの力でそのサポートが出来たらと。
そういう思いで柄が作られています。
ノーマルな身を守るお守は神職さんの装束の柄が多い印象です。
また、日本の伝統文様はそれぞれに意味が込められているので
使われやすいです。
その他の例として用意しました。(神社用だけですが…)
御祭神の特徴であったり、社の歴史であったり、お祭りの特徴であったり。
社殿や塔、池、鳥居、橋、木といった風景であったり。
鶴と亀=長寿、打ち出の小づち=お金、サクラサク=合格、犬=多産・子授といったモチーフがもつイメージであったり。
こういった意味付けをして柄のデザインがされています。
いづれは、雑誌などで取り上げられている人気のお守の柄解説や分析をしたいと思います。
②ネーミング
お守には色々なネーミングがありますが、だいたいは願い事=ネーミングです。
心願成就守→願い事が叶う
厄 除 守→厄がふりかかるのを防ぐ
健康長寿守→いつまでも健康で長生きできるように
みたいなやつです。
この他に、モノの説明のネーミングがあります。
やすらぎの鈴守→鈴のお守で音色によって災難が去り、安らぎが得られる
幸せ小槌守→チャームは打ち出の小槌である
開運水晶守→開運の力がある水晶が入っています
願意+モチーフ説明
『このモチーフはこの願意』と知らなくても選べる親切設計です。
あまりキャッチーでカッコイイ名前は好まれませんね…
そもそも、重要なのは『効果』『願い事』なのでそこが伝わらなければ失敗とも言えます。
③ロゴ
神社やお寺のロゴは、
・シンボルマーク=社紋・寺紋
・ワードロゴ=社名・寺名
です。
中には意匠登録をキチンとされている所もありますし、
そこまで管理されていない所も多いです。
デザイナーとしては、こだわられている先の好感度高いです。
④紐
お守の紐の結び方には名前があります。
基本的にどれも同じ結び方をしていると思いませんか???
これも縁起担ぎでした。
お守は全要素で願いが叶うように応援しています。
⑤形
形は定番の他、ひし形や巾着型、勾玉型、苺型など様々あります。
作業効率を考えると定番が最強ですが
巾着型の丸みも可愛らしくて人気があります。
個人的には巾着型が一番好きです。
どうでしょうか?これから、お守を見るときがあれば柄も目を向けていただけると嬉しいです。
次回は絵馬についてです。
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