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厳冬期のカラコルム・ハイウェイをちょっとだけ訪れた話③

カラコルム・ハイウェイを南下しているお話の続き。

前回はこちらから


車は最終目的地のカラクリ湖に向けてさらに山道を進む。

標高は3300mを超えている。これまで私が到達した最高高度は槍ヶ岳山頂の3180mなので、いつの間にか更新してしまっている。

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さすがにこの高度には集落はないが、ヤクの放牧が行われているのが遠目に見えるので、この地の住民の生活圏ではあるのだろう。

とはいえ12月である。放牧をするにももっと適した場所がありそうなものだが...

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遠くには雪山、前景にはただ荒涼とした岩山が延々と続く。

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このような光景を眺めていると辺境に来たのだなぁという実感が湧く。朝まではカシュガルの街にいたことを思い起こすとその落差を感じる。

それでもこの先、パキスタンとの国境までの間にはまだ街があるのだ。人の営みの強靭さにはただただ頭が下がると同時に、人類学の一端に触れているものとして彼らの生活が放つ強烈な存在感には惹きつけられる。


ただこの先の街タシュクルガンでは、現在空港が建設中であり、完成の暁にはこの地の人々の生活も一変するのだろう。新疆への圧力を強める中国政府の思惑や経済的な発展を求める地元の人々の欲求、そのようなものが混ざり合って景観は刻々と変化していく。

古く伝統的なものを惜しむ気持ちがないわけではないが、かつてのコロニアリズムに毒された人類学者、あるいはオリエンタリズムに浸されて西に向かう西欧人バックパッカーのように消費するような人間ではありたくないと思う。

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しばらく走って車はようやく目的地カラクリ湖に到達した。

車を降りると、見事しか言いようがない景色が広がっていた。



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写真中央から右にかけてがコングール山(公格尔峰、7649m)、左奥がムスタグアタ山(慕士塔格峰、7509m)である。

それぞれ国境線を跨がない中国国内にある山としては屈指の高峰である。(ちなみに中国国内の山として最も高いのはシシャパンマ峰8013mである。)


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http://peaklist.org/WWlists/ultras/china2.html#FOotnotes

当然のことながらこの湖も全面結氷している。

アイスバブルをはじめ氷が織りなす造形も見事である。

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ということでカラコルム・ハイウェイのお話はここまで。

このあと高山病で痛む頭を抱えながらカシュガル市内まで戻り、夜行列車でウルムチへの帰途についた。

この旅の直後、武漢市内に端を発する感染症で国境が閉ざされてしまったのはご存知の通りである。次は夏に訪れ、パキスタンに越えたいと思っていたがいつ実現できるか全くもって分からない状態である。

再訪したいが中国政府による統制も徐々に厳しくなり、観光客が自由に新疆を旅できるような機会は二度と来ないかもしれない。

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ここまで長文をお読みいただきありがとうございました。

この記事で取り上げた写真も含む、新疆ウイグル自治区にテーマをあてた同人写真集を2021年12月30日~31日に開催されるコミックマーケットC99にて頒布します。スペースは31日金曜日 東ネ30bになります。

https://webcatalog.circle.ms/Perma/Circle/10434620/

また同人ショップのメロンブックスさんで委託販売も行っていますので、こちらからも購入いただけます。

この写真集のサンプル画像等々はこちらの記事に

次回は新疆で訪れた街について書こうかと思います。

ではでは

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