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世界史シリーズ vol.1 古代オリエント

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世界史の単元ごとのまとめです。 「古代オリエント」の通史について,順次オリジナル記事を掲載していきます。
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記事一覧

【古代オリエント1】 オリエントとは・・・

【古代オリエント1】 オリエントとは・・・

●世界史シリーズ Sec.1

 「世界史」のベーシックな通史を,できるだけ因果関係明らかに,適度にくわしく,しかしマニアックにならない程度に記していくことを目標としています。

 原則として,高校「世界史B」のカリキュラムをベースに進めますが…

 700万年にも及ぶ「先史時代」はいったん省いて,「古代オリエント」から始めます。

 直立二足歩行の人類誕生に始まる「先史時代」は,本来,人類学や考

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【古代オリエント2】 農耕の始まりと王権

【古代オリエント2】 農耕の始まりと王権

●世界史シリーズ Sec.2

1) 大半は砂漠とステップ オリエントの大半は乾燥帯です。なかでもエジプトやメソポタミア南部,アラビア半島などは,ほとんど雨の降らない砂漠気候にあたります。

 砂漠の周辺はやや雨が降る(年降水量250〜750mm程度)ため,ステップと呼ばれる草の丈の短い草原が広がっています。長い乾季と短い雨季があり,比較的降水量が多い地域では麦などが育ちます。降水量が少なく土地が

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【古代オリエント3】 シュメールとアッカド

【古代オリエント3】 シュメールとアッカド

●世界史シリーズ Sec.3

1) メソポタミアの地域区分 「メソポタミア」は,ギリシア語で「川の間の土地」を意味します。北のティグリス川と南のユーフラテス川の流域を指し,現在のイラクからシリア北東部にいたる地域です。

 メソポタミアは,バグダード周辺を境に南北に分けられ,北部を「アッシリア」,南部を「バビロニア」と呼びます。

 アッシリアはギリシア語で「アッシュルの地」を意味し,バビロニア

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【古代オリエント4】 バビロニアの王朝

【古代オリエント4】 バビロニアの王朝

●世界史シリーズ Sec.4

1) アムル人侵入→群雄割拠のメソポタミア ウル第3王朝の滅亡(前2004)後,シリア砂漠周辺の遊牧民だったセム語系アムル人がメソポタミアに定住し,勢力を伸ばしました。

 メソポタミアの諸都市では,アムル人が次々と支配権を奪って王朝を起こし,のちにバビロンのハンムラビ王に統一されるまで,多くの王朝が割拠する混乱期に入りました。

 南部のバビロニアでは,前2000

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【古代オリエント5】 諸王国の興亡

【古代オリエント5】 諸王国の興亡

●世界史シリーズ Sec.5

1) 前2000年紀後半のオリエント情勢 前2000年頃から,インド=ヨーロッパ語系の諸民族が,ユーラシア北部から南下し始め,アナトリアやバルカン半島に移動・定住します。

 アナトリアでは,インド=ヨーロッパ語系のヒッタイト王国が成立し,前16世紀初めにはバビロン第1王朝を滅ぼします。

 それ以降,オリエント世界には突出した大国が現れることはなく,力の拮抗する複

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【古代オリエント6】 古代エジプト史概説

【古代オリエント6】 古代エジプト史概説

●世界史シリーズ Sec.6

 「古代エジプト」については,オリエント世界の中でも独自性が強いため,一旦,教科書のカリキュラムを離れて,古代エジプトの王朝史だけをザッと通して概観することにしました。

1) 特異なる3000年王国 「古代エジプト」は,地勢的・文化的・歴史的に,他のオリエント諸国とは一線を画します。

 ナイルの豊かな恵みのもと,独自の世界観を育み,神の子ファラオを王として戴くエ

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【古代オリエント7】 ファラオの王国(1) 〜始まりから中王国まで〜

【古代オリエント7】 ファラオの王国(1) 〜始まりから中王国まで〜

●世界史シリーズ Sec.7

 前回は古代エジプト3000年の王朝史を概観しました。引き続き,エジプト文明の特質や統一王国の変遷などについて,3回に分けて記します。

1) 「ナイルの賜物」 〜そのメカニズム〜

[写真]エジプトの衛星画像(NASA提供)
 現在のエジプト・アラブ共和国は国土の95%が砂漠です。衛星画像では,赤茶けた砂漠が広がる中,上エジプトのナイル河谷と下エジプトのデルタ地帯

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【古代オリエント8】 ファラオの王国(2) 〜異民族支配と新王国〜

【古代オリエント8】 ファラオの王国(2) 〜異民族支配と新王国〜

 「ファラオの王国」2回目は,ヒクソス侵入から古代エジプト史のクライマックスとも言える新王国・第18王朝時代について記します。

1) ヒクソス王国 〜初の異民族支配〜 第13王朝の時代(第2中間期),王権の弱体化によって下エジプトのデルタ地帯の防衛がおろそかになり,デルタ北東部にシリア・パレスチナからの移住者が定住するようになりました。

 前18世紀には,デルタ東部(アヴァリス)を根拠地にシリ

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【古代オリエント9】 ファラオの王国(3) 〜新王国ラメセス朝〜

【古代オリエント9】 ファラオの王国(3) 〜新王国ラメセス朝〜

 「ファラオの王国」の3回目(最終回)は,新王国時代後半の「ラメセス朝」を中心に取り上げます。

1) ツタンカーメン 〜数奇な運命のファラオ〜 古代エジプトのファラオといえば,誰もがツタンカーメン(トゥトアンクアメン)と,その黄金のマスクを思い浮かべるのではないでしょうか。

 ところが,その群を抜く知名度にも関わらず,世界史教科書には全く記述がありません。

 その経緯とは…

 近年,新王国

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【古代オリエント11】 アッシリア帝国前史

【古代オリエント11】 アッシリア帝国前史

 古代メソポタミア史は,「アッシリアとバビロニアの興亡の歴史」であるとも言われます。

 今回は,古代オリエント世界に初めて「世界帝国」を築いたアッシリアの前史(中アッシリア時代まで)を,周辺地域との関わりの中で追ってみたいと思います。

1) 「アッシリア」とは… メソポタミアはバグダードの北方を境に大きく南北2つに分けられ,北部をアッシリア,南部をバビロニアと言います。

 アッシリアは,ギリ

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【古代オリエント12】 新アッシリア⑴ 〜「帝国」への道〜

【古代オリエント12】 新アッシリア⑴ 〜「帝国」への道〜

 前回の「アッシリア帝国前史」に続き,前1000年紀の新アッシリア帝国について2回に分けて記します。
 これ以降のオリエント世界は,強大な「帝国」が栄枯盛衰を繰り返す時代に突入します。

1) 「帝国」への序章▶︎前1000年を挟む混乱期

 前2000年紀の終わりに,メソポタミアを襲った大飢饉とそれに続くシリア砂漠周辺からのアラム人(西方セム語系)の流入で,アッシリアは大打撃を受け,急速に領土を

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【古代オリエント13】 新アッシリア⑵ 〜世界帝国とその崩壊〜

【古代オリエント13】 新アッシリア⑵ 〜世界帝国とその崩壊〜

 アッシリア史の3回目(最終回)は,新アッシリア帝国の絶頂期と,そのあまりにも呆気ない幕切れについて紐解きます。

1) 「世界帝国」完成へ サルゴン2世の治世までに獲得した広大な領土をもとに,史上初の「世界帝国」に成長した前7世紀初めからの約70年間は,アッシリアにとってまさに絶頂期でした。

▶︎センナケリブ 〜ユダ攻撃とバビロン破壊〜

 サルゴン2世の没後,皇太子として父王を補佐してきたセ

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アッシリア史 補筆 〜王の事績簿 & 帝国の構造〜

アッシリア史 補筆 〜王の事績簿 & 帝国の構造〜

 過去3回のアッシリア史の記事では,おもにオリエントの国際関係を背景とした王朝の興亡を,年代順に書き連ねました。

 かなり端折ってはいますが,それでも登場する王が多く,また,何度も同じような戦争が繰り返され,整理しないとよく分からないと思います。

 一方で,帝国の社会・経済のしくみなど,興亡史だけでは扱えない内容が残ってしまいました。

 この「補筆」では,覚書程度に,上記の内容について整理・

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【古代オリエント14】 メディア, リディア, 新バビロニア

【古代オリエント14】 メディア, リディア, 新バビロニア

 前612年の新アッシリア帝国の滅亡後,オリエントは4つの王国が分立する時代に入ります。

  ペルシア帝国の先駆者ともいわれるメディア王国,世界初の硬貨鋳造で知られるリディア(リュディア)王国,メソポタミア最後の光芒を放った新バビロニア王国,古代エジプト最後の繁栄期とされる第26王朝。

 のちアケメネス朝ペルシアに征服されるこれら4王国のうち,一般にあまり知られていないメディア,リディア,新バ

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