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ジェンダーインクルーシブな社会を実現するには?LITALICO研究所所長・野口 晃菜さんにインタビュー!

こんにちは!Lean In TokyoのEducation Program Specialist、りさこです!

女子中高大学生が一歩踏み出すきっかけを作る、教育コンテンツ企画を担当しています👭

今回は、「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、就労支援、幼児教室・学習塾などの教育サービスを提供する株式会社LITALICOにて、LITALICO研究所所長を務められる、野口 晃菜さんにインタビューを行いました!🎉

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野口 晃菜(のぐち あきな)氏
株式会社LITALICO LITALICO研究所 所長
1985年生まれ。小学校6年生の時にアメリカへ渡り、障害児教育に関心を持つ。高校卒業時に日本へ帰国、筑波大学にて多様な子どもが共に学ぶインクルーシブ教育について研究。その後小学校講師を経て、現在障害のある方の教育と就労支援に取り組む株式会社LITALICOの執行役員・LITALICO研究所所長として、障害のある子ども8,000名への一人ひとりに合わせた教育の実現のための仕組みづくり、公教育や児童養護施設との共同研究などに取り組む。共著に『発達障害のある子どもと周囲との関係性を支援するーコミュニケーション支援のための6つのポイントと5つのフォーカスー』『インクルーシブ教育ってどんな教育?』などがある。

ジェンダーの課題が浸透する社会

りさこ:お時間をいただき、誠にありがとうございます!

あきなさんとは、私が小学生の頃、まだ大学生だったあきなさんが英語の家庭教師をしてくださったところから始まり、その後たまたま新卒入社した会社で、あきなさんが執行役員を務められていたという、奇跡的な再会がありましたね!

あきなさんはインクルーシブ教育研究家として、ご活躍されていますが、ジェンダーの課題に関心を持たれたきっかけは、なんだったのでしょうか?

あきなさん女子少年院に支援に行き始めたことが、大きなきっかけでした。少年院って、女子と男子で分かれていて、女の子達も様々な経緯や背景から、少年院に入っているんですよね。

その中でも、女の子達が少年院に入る経緯として、性的に搾取されていたり、DVなどが多いということを聞きました。その話を聞いて、そして女の子達とも話し、なぜ女の子の方が性的搾取やDVを受けることが多いんだろう、と興味を持ち始めました。

少年院を出た後も、男子は建設業だったり、泊まり込みで働ける選択肢が少ない中でもまだある一方、女子は取得できる資格も限られており、選択肢が限られています

そこでまた性的搾取の対象となるような職業に就く子もいて、そのことを当たり前だとしている産業があります。そしてこういった状況に、誰でもすぐアクセスができてしまう。これはどう考えてもおかしいな、と思うようになりました。

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じゃあなぜ取り締まれないのだろう?とさらに背景を考えると、やはりこういった産業の取り締まりの役割を担う、意思決定者層では圧倒的に女性が少ないことが、挙げられます。

日本の社会全体がまだまだ女性軽視で、女性を商品化することが当たり前になってしまっているからこそ、このような事態が起きているのだと考えられます。

りさこ:社会の隅々に、ジェンダーや性別による格差、そして不平等が充満している中で、人々が焦点をなかなか当てることがない現場ですね。改善していかなければ、貧困や性的搾取の再生産につながってしまう、絶対にアプローチしていかなくてはならないと思います。

最初は少年院での支援から、ジェンダーの課題にご関心を持たれたとのことですが、ご自身も課題を意識するきっかけがあったのでしょうか?

あきなさん:私自身は強く課題意識を持っていたわけではないのですが、よく振り返ってみると、これまで男性と働く場面で、不快な思いをしたこともけっこうあるな、と思いました。

その時は笑って流していたものの、「今言われたこと、なんか変だな」と思うことも多くありました。そして自分自身も、そうすることでジェンダーバイアスを助長するような構造の一部になっていたな、と自覚しました。

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子供を産むことも、「私は積極的に子供を産まないことを選んでいる」、と思っていたのですが、実は心のどこかで、「子供を産んだら女性が育児をしないといけない」という考えが内面化されていることに気づきました。

社会の状況が偏っているために、自分自身も偏った選択をせざるを得なくなっていたな、と思います。

バイアスの内面化による、周りへの影響

りさこ:自分自身がジェンダーバイアスを内面化してしまっている可能性、私も日々感じます。教育者として現場で関わる際、子供達に社会や自身のバイアスを押し付けてしまっていないかな、とよく振り返ります。

教育はジェンダーバイアスに、どの程度、またどのように影響されてると考えますか?

あきなさん:けっこう影響してますよね。習い事や塾は、週に1回か多くても数回、限られた時間通う程度などで、そこまで影響しない可能性もあると思いますが、それでもどこかでやっぱり、自分自身の無意識の言動や、ちょっとした行動で、バイアスが出ちゃってるんだろうな、と思います。

毎日通う学校、そして家庭やメディアからも、どんどん影響を受けていると感じます。大人になってしまったら、ジェンダーバイアスが染み付いてしまっているので、学ぶ機会が必要だと思います。

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また、発達障害児の支援の一部として、保護者への介入をする際も、資料や教材がいかに母親を支援者としてキーパーソンにすることを当たり前としていたかも、感じています。

ジェンダーというメガネで教育を見た時に、改善すべきところはたくさんありますね。

りさこ:教育者や支援者側が、ジェンダーバイアスを内面化してしまっていることに気づかないと、子供達との関わり方にもバイアスがかかってしまいますよね。

私も教育現場で、無意識に女の子にはハートのシールを渡していないか、また発言にもバイアスがないか、振り返ることが多々あります。

違和感を、発信・共有していこう

りさこジェンダーバイアスに対する違和感を、あきなさんはどのように乗り越えているのでしょうか?

あきなさん:違和感に気づくようになってからは、フェイスブックやnoteでジェンダーに関することを発信するようになりました。

発信することで、他の同じ思いの人と話し合い、自分の感覚が麻痺しないように工夫しています。

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また、定期的に社内の女性社員や、ジェンダーバイアスに関するディスカッションや、ゆるく飲み会も開催しています。女性管理職のチャットグループを作って、それぞれの状況についてあーだこーだ話すこともありますね。

社外の人たちとも、定期的に話し合う機会を設けています。今後はダイバーシティ経営にも、取り組んでいきたいと考えています。

りさこ:違和感を共有することで、お互いを支え合い、一緒に一歩踏み出すきっかけにもつながりますよね。

あきな:そうですね。男尊女卑的な発言をする人も、実際はジェンダーバイアスがいかに他者を排除したり、傷つけるか、未学習なだけであることが多いと思います。

素直に間違いや失敗を認めて謝って、次は同じことをしないようにしようと思える空気が社会でできるといいと思いますね。

りさこ:あきなさん、貴重なお話をありがとうございました!

次回のインタビューもお楽しみに!

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