見出し画像

【パート2】 デザイン思考を通じて、クリエイティブコンフィデンスを身につけよう!トロント大学・木島 里江教授にインタビュー

こんにちは!Lean In TokyoのEducation Program Specialist、りさこです!

前回の記事に引き続き、2017年より女子中高生を対象にSTEAM教育プログラムを展開する、一般社団法人スカイラボ を立ち上げ、そして21世紀人材の育成や研究に取り組まれる、トロント大学・木島 里江教授にインタビューをさせていただきました!

【パート1】自分らしく一歩踏み出す、 21世紀のSTEAM女子中高生!

【パート2】デザイン思考を通じて、クリエイティブコンフィデンスを身につけよう!←今はここ!

画像7

木島 里江教授
一般社団法人SKY Labo共同設立者
トロント大学マンク国際問題研究所助教授

世界銀行中東・北アフリカ局及び東アジア局にて、ラオス、モロッコ、チュニジア、ベトナムなどの女子教育、貧困層やマイノリティーのための初等教育から高等教育、教員訓練などの教育政策に力を注ぐ。JICAチュニジア事務所でインターン、ボストンのNGO で教育コンサルタントとして働く。デザイン思考を中心に、スタンフォード・デザインスクールやヌエバ・デザイン機関にて研修。USJLP (米日リーダーシッププログラム) 2015/16 代表団。国際基督教大学教養学部人文科学科学士。スタンフォード大学教育学部博士号(国際比較教育)。2013年から19年の6年間、スタンフォード大学教育学部講師に従事。2019年よりトロント大学マンク国際問題研究所助教授。専門分野は開発教育、国際比較テスト、STEAM教育。小学校に通う、二人の女の子の母親。

STEM × リベラルアーツ × デザイン思考

りさこ:SKYlaboのプログラムでは、デザイン思考を取り入れていらっしゃいますね。STEM、リベラルアーツのA、そしてデザイン思考をかけ合わさることによって、どのような効果があるのでしょうか?

りえさん:今、シリコンバレーをはじめとする最先端の教育現場では、デザイン思考をクラスルームに取り入れ、従来のSTEM分野、つまり理・数・工学に、芸術・デザインに加えて、哲学・文学・倫理学・史学・文化人類学などリベラル・アーツ領域の視点や手法をとりいれた「STEAM」が、将来の人材を育てる鍵として世界の注目を集めています。

画像8

デザイン思考を取り入れたSTEAM教育の特色は、グループで課題の取り組み、インタビュー、ブレーンストーミング、プロトタイプ作り、フィードバックを通じて、発想力、コラボレーション力、積極性、そして、失敗を怖がらないレジリアンス力が育つことです。

デザイン思考は、世界的デザインコンサルファーム、IDEOの創設者であるデイビッド・ケリーらが、その幅広い経験から生み出したイノベーションや解決策へ至るためのアプローチ手法です。

徹底的にユーザーの気落ちや感じ方に寄りそって発想するのが、デザイン思考です。

画像8


デザイン思考では、数多くのアイディアを出してみる事、スケッチを描いたり、流れを紙に描いたり、プロトタイプ(模型)を作ったりする事を、とても大切にしています。

思いつきを声に出してみて、手を動かして考えて、ひとまず目に見える形にしてみる。そうすると、もっとこうしたらいいかもしれない、という発見が見えてきます。それにさらなる改善や修正を施して、また、プロトタイプを作ってみる。

この繰り返しの中で、本当に人を中心に考えた製品や解決方法を編み出すことができるようになるのです。

画像9

また、スタンフォード大学、それを取り巻くシリコンバレーには、STEAMの専門性を使って活躍する人材が溢れていますが、その中には多くの女性たちも含まれています

例えば、ロボットに硬い、柔らかいという感覚を与える研究をする機械工学者アリソン・岡村教授、人間中心のAI研究を先導するコンピューター科学者フェイフェイ・リー教授、そして、脳科学とロボット工学を融合する新領域「ニューロ・ロボティックス」の開拓者として知られる松岡ヨーキー博士です。 

彼女達の活躍を理解するのに、鍵を握るのがSTEAMという概念です。最先端のテクノロジーや複数の領域を使いで研究や開発のプロセスをデザインする能力だけではなく、相手の視点に立つ「エンパシー」を忘れず、常に「人間を中心に発想している」という態度なのです。

人類に役立ちたいから、それぞれがSTEAMの専門性を研鑽し、複数の領域を越境しています。つまり自分たちの専門性はツールであって、目的ではない。

したがって、素晴らしい活躍をするSTEAM人材になるには、この「人間を大切にする心」を育てることが何より大事ではないかというのが、シリコンバレーの最先端で活躍する人々から学んできたことです。

画像7

クリエイティブコンフィデンスを身につけよう

りさこ:教育現場では特に感じる課題ですが、失敗を恐れている女の子達が多く見受けられます。私自身も今でこそ少し自信が付いてきましたが、中学生の時は周りの目を今よりも気にして、意見を言うことにいつも怯えていました。

デザイン思考を通じて、どのように自信や自己効力感を身につけることができるのでしょうか?

りえさん:デイビッド・ケリーらが提唱する概念でもう一つ、クリエイティブコンフィデンスが挙げられます。

'Gain(ing) confidence in your creative ability(自分の内なる創造的能力に自信を持つ)'ことを意味し、まさにデザイン思考を活用することで、クリエイティブコンフィデンスを身につけることができます。

画像10

革命的で斬新な発想の根源にあるのは、人々への共感 (empathy)であり、創造性は「自分は創造的だ」と信じるところから生まれると、デイビッド・ケリーらは、自らが執筆した「クリエイティブ・マインドセット:想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」で述べています。

実際に、デザイン思考を取り入れたスカイラボのワークショップでは、参加者の間で「答えのない状況でも課題に取り組んでみる」という指標が伸び、クリエイティブコンフィデンスが身についたというデータが出ています。

IDEOのパートナーであり、デイビッドと一緒に本を執筆したトム・ケリー氏は、「日本人は世界で最もクリエイティブでありながら、世界で最も自分たちはクリエイティブでないと信じている民族でもある」と繰り返し指摘していますが、このクリエイティブコンフィデンスは「大きな失敗をしても諦めずに挑戦し続ける」というマインドセットにつながる重要な要素です。

スクリーンショット 2020-07-27 19.50.45

一歩踏み出せば、無限の可能性が広がる

りさこスカイラボ設立から、過去5年間の活動を通じて、どのような成果がみえてきたのでしょうか?

りえさん:この5年間の活動を通じて、私達は大きな成果を得ることができたと感じています。

まずプログラム初日に、生徒達にSTEAM人材をイメージしてもらうと、白衣を着て、研究室で一人黙々と実験や研究をしている人が多く挙げられます。

ですが、実際にSTEAM分野で活躍されている方にトークセッションをしていただくと、STEAMとはいろんな分野での人材を指すんだ!エンジニアやNASAの研究者、デザイナーなど、多様な分野で活躍している人がいるんだ、とアイディアがすごく広がります。

元々、世界の生徒の学力を測定するPISAのテスト結果を見ると、日本の女子高校生は、数学やサイエンス科目でも世界トップの成績を誇っています。

しかし、その後、大学で技術系やサイエンス系の専攻を選択する女子学生の割合は、最低レベルに落ち込んでしまうのです。

画像11

その理由は、先ほど挙げた様にSTEAM人材のイメージが、固定化してしまっているなど、女の子自身も内面化してしまっているバイアス、そしてロールモデルの少なさが影響しています。

また、社会に自分が貢献できる、と感じると答えた参加者も、プログラム後は増えることがわかりました。

STEAMを通じて、なかなか社会に貢献できると想像できなかったところから、エンジニアリングを通じて誰かに貢献できる、そういった意識が高まった生徒達が多くいました。

画像3

さらに興味深かったのは、生徒達の間で、将来STEAMの分野で活躍できることが可能なのだ、と思える割合が増えたことです。育児と仕事を両立しているロールモデルに出会うことで、私もできる!と思う生徒が増えたことは、とても意義を感じました。

りさこ:STEAM分野、そして将来に対して、無限の可能性を信じることができる女の子達が増えたことは、素晴らしい成果ですね!

りえさん:本当にそう思います。これから多くの女子がSTEAM領域に入っていく事で、これまでこれまでと異なる発見や発展を遂げることができる領域です。

最後に、こちらのジェンダーエンパワメント指数は直近の2018-19年のデータで、18歳から64歳までの「起業割合」をジェンダー別に示しています。東南アジアでは残念ながら日本が一番低く、さらにジェンダー格差も見られます。

画像4

とはいえ、これらのデータは、日本でイノベーションを起こすために、これから私たちにできることがまだまだあるという、伸びしろや可能性を示しています。

より多くの日本の女子生徒が、良い成績を修めるだけで終わらず、勇気と自信を持ってSTEAM分野に乗り出し、活躍していくために、これからも活動を続けていきます。

画像6

りさこ:りえさん、貴重なお話をたくさんお伺いさせていただき、ありがとうございました!

次回もお楽しみに!

🏃‍♀️一般社団法人スカイラボの公式サイトはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?