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【6/25 My Lean In Story 翻訳家・MPower Partners Fund L.P.ゼネラル・パートナーの関美和さん~新たな時代の、自由なキャリアの歩み方~】イベントレポート

Lean In Tokyoは6/25(日)に、翻訳家・MPower Partners Fund L.P.ゼネラル・パートナーの関美和さんをゲストにお呼びし、スペシャルトークイベントを開催いたしました。テーマは「広告代理店→投資銀行→法学部→翻訳家→起業家!?通説を疑う!?わりとノープラン!?な関美和さんのストーリー」
 
多種多様な挑戦をし、ユニークなキャリアを築き上げてこられた関さんに、これまでどのようなご経験をされてきたのか、その転機とともにお伺いしました!

3つの帽子をかぶる:今はMPowerに全力投球

Q:幅広い領域でご活躍されている関さんですが、現在の主な活動を教えてください!
関:
今は”3つの帽子”をかぶっています。
現在のメインの活動は、キャシー松井さん・村上由美子さんと立ち上げたMPower Partnersの仕事で、120%の時間を費やしています。
皆様の中には翻訳家としての仕事で認識いただいている方もいらっしゃると思いますが、それも大きな仕事の柱ですね。
もう1つは、アジア女子大学(Asian University for Women:バングラデシュにある国際大学)の支援財団での活動です。家族ではじめて高等教育を受ける、いわゆるファースト・ジェネレーションの女性が、全額奨学金でリベラルアーツ教育を受けられるようにするための支援を行っています。

これまでのキャリアと転機:「“失敗したらどうしよう”とは思わなかった。それまでに何か成し遂げたとも、思っていなかったから」

Q:社会人になられてから今日まで、どのようなキャリアを歩まれてきたか、転機とともに教えていただけますか?
関:大学を卒業した時には、ずっと大企業にいるイメージでいたような気がしますが、結果的には早い段階から次のステップに進むことになりました。大きな転機は3つありますね。

転機①:社会人1年目、ダンプカーにはねられて入院…見つめなおした「違う世界を見てみたい」気持ち

関:新卒で電通に入社して1年ほど経ったある日。当時は男女雇用機会均等法の施行から数年しか経っておらず、数千人もいる社内に女性は数十名しかいませんでした。そんな中、同期の女性たちで旅行に行くことになったのですが、集合場所に向かう途中でダンプカーにはねられて大けがをしてしまったんです。社会人になってから漠然と「このままでよいのか」という気持ちがあったところにこの事故が重なり、自分の気持ちを見つめ直したことで、「やはり違う世界を見てみたい」と、海外留学することを決めました。その後1-2年の準備期間を経て、ハーバードビジネススクールに留学しました。

転機②:夫に離婚を切り出されて…翻訳家への転身とFACTFULLNESSの大ヒット

関:帰国後は金融の世界で働き、モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長も務めました。結婚して子供も2人生まれ、体力的にはきつい時期もありましたが、40代前半までは大きな転機もなく、順調な日々でした。
44歳の頃、突然転機が訪れました。夏休みが終わった秋のはじめ、子供を学校に送り出した後に、夫から離婚を切り出されたのです。
忙しい時期だったので、夫から「話がある」と言われても、「帰ってきてからでもいい?」と聞き返しました。すると、「帰ってきてからではだめだ。なぜなら自分は帰ってこないから」と。
それから1年後に離婚したのですが、時は2008年、リーマンショックの真っただ中。本業の傍らはじめていた翻訳の仕事で生計を立てることにしたのです。

Q:まったくの異業種へのキャリアチェンジ。「失敗したらどうしよう」という不安はありませんでしたか?
関:ありませんでした。それまでの人生で何か成し遂げたとも思っていなかったので、そもそも失敗も何もなかったんです。
生計を立てなければならないことへの不安はありましたが、翻訳をはじめてすぐ、数冊本を出版する機会にも恵まれて、翻訳の仕事が楽しくなりました。新しい人と出会い、一緒に仕事をする中で、恩返しをしたいという気持ちもありましたね。10年程経って、Zero to Oneに続きFACTFULLNESSが大ヒット。翻訳家としての仕事が結実しました。

転機③:同年同月に生まれた旧友3人でMPowerを設立

関:現在注力しているMPower Partnersを始めたのは、2021年のことです。共同創業者のキャシー松井さん、村上由美子さんと私はともに1965年の2月生まれ。毎年2月には3人で誕生日を祝いあってきたのですが、50歳になったタイミングで、「次は、何をしようか」と。
3人のキャリアの共通点から金融・バイサイドという軸は決まっていたので、そこに「世の中へのインパクト」という軸を合わせて、VCをつくることに決めました。
翻訳家の時は1人の仕事がメインでしたが、今はチームを作る仕事。創業パートナーとしてチームを率いていく責任を、ひしひしと感じています。

 “ノープラン”ではあるけれど…振り返って思う、通底する価値観:通説を疑う・身の回りの“不”を解消する・そして、幸運を返していく

関:ノープランでその時の自分に合った選択をしてきましたが、後から振り返っててみると、いろいろな選択の根底には、一貫する「人生のテーマ」があったように思います。あくまで、「後から振り返ってみると」なのですが(笑)

人生のテーマ①:通説を疑う

関:1つめは、世間一般で言われていることを疑ってみることです。90%の人が言っていることは、だいたいにおいて正しいんです。でもたまに、そうではないことがある。そういう通説の裏に隠れた真実を探すことを大切にしています。
たとえば、「男女格差を解消するには、女性の社会進出を後押ししなければならない」という通説があります。これは、目的に対する手段として、正しいでしょうか?データを見てみると、そうではないことがわかります。
女性の就業率は、日本の値はOECDの平均より高い水準にあります。また、結婚・出産・育児で仕事を離れる女性が多いことを示すいわゆる「M字カーブ」も、だんだんとなだらかになってきているんですね。
海外と比較して日本が劣っているのは、むしろ男性の育児休業率、つまり「男性の家庭進出」の方です。男女格差の解消のためには、男性が家庭での役割を果たせるような支援が必要だ、と私は感じています。一般に言われていることとは少し違う角度で物事を見ることが、チャンスにつながるのではないかと思います。

人生のテーマ②:身の回りの”不”を解消する

関:また、今までの仕事・活動を振り返ると、多くが自分の「半径5m」の不便・不満を解消するためにはじめたことだったように思います。
翻訳の仕事も、はじめは「世の中にある翻訳本は読みづらい」という自分が感じた不便・不満から、「だったら、自分が読みやすい翻訳本を作ろう」と思ったのがきっかけでした。
でも、自分で翻訳できる本の数には限りがある「だったら、もっと多くの人が英語の本や情報に直接アクセスできるように、英語教育をしよう」と思い、次は大学で英語を教えることにしました。
MPower Partnersを立ち上げたときもそうです。「VC業界は男性ばかりだ」と思ったから、「だったら、自分たちで女性によるVCを作ってみよう」と思った。このように、自分が肌で感じた不便・不満を解消したいということが、これまでの様々な仕事に通底するきっかけ・モチベーションだったように思います。

人生のテーマ③:幸運を返す。それも、できる限り大きく

関:もう1つ大切にしていることは、「自分が受けた幸運を返す」ことです。私の育った地域では高等教育まで進む人が少ない中で、私はたまたま大学院まで教育を受ける機会に恵まれました。しかし、それは私が何かすごかったからではなく、偶然機会に恵まれたからにすぎません。だからこそ、自分が受けた幸運を世の中に返したいといつも思っていますし、返すときはできるだけ大きくして返したい。
今の目標はMPowerPartnersを通じて、世の中にできるだけ大きいものを残すことです。そのために、1号ファンド・その次の2号ファンドでしっかりとリターンを出すことに全力を注いでいます。

関さんからのメッセージ:「一歩踏み出さなきゃ」と身構えず、自然体で「自分の幸せには何が必要か」を見つめてみる

Q:最後に、参加者に向けてメッセージをお願いします!
関:
私は結果的に”ノープラン”でここまで来ましたが、”ノープラン”が必ずしもよいとは思っていませんし、計画した方がいいこともあると思いますよ(笑)それに、無理に「一歩踏み出そう」とは思わなくてもいいとも考えています。
Clayton M. Christensenが書いた、”Innovation of Life"という本があります。そこにも書かれていることですが、自分の幸福の源泉を考えてみることが重要だと思います。
自分が10-20年後に幸福でいるためには、何が必要かを考える。そのために、毎日の自分の時間や資源の使い方を考えていく。そうすれば、今はどうかはわからないけれど、何十年か経ったあとに、後悔の少ない選択ができるかもしれません。

おわりに

終了時間の直前まで、参加者の皆様から多くの感想・質問が寄せられました。特に「“失敗したらどうしよう”とは思わなかった。それまでに何か成し遂げたとも思っていなかったから」という言葉が胸に響いた方が多かったようです。
飾らない口調でこれまでのキャリアをお話くださり、何度も「私は幸運だっただけ」とおっしゃるところに、関さんの謙虚で自然体なお人柄を感じることができ、とても学び・気づきの多い濃密な時間となりました。
本イベントを通じて、皆様が自分らしくキャリア・人生を歩むことへのヒントを少しでも収穫していただけていたら嬉しいです!
(文責:奥永優香)


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