20歳、失う
僕は以前から、よく「やらかす」人間だ。
周りからは「しっかりしている」とか「真面目」と言われたこともある。だが、それは違う。自分が「やらかす」側だと知っているから、注意を怠らないだけなのだ。
先日、こちらの記事を書いた。
インプット、読書についてなど書いた。
思ったより好評でした。読んでいただきありがとうございます。
このエッセイの中で、意図せず精神安定剤と酒を摂取してしまった話に触れた。
今日は、そのときの話をしようと思う。
20歳の頃だった。
あるとき、僕が所属していた課程の学生を集めた飲み会が開催されることになった。
その日は講義もあまり入っておらず、僕は昼過ぎから既にわくわくしていた。大人数の飲み会など、当時は参加したことはなかったというのもある。
何度か書いたが、僕は18歳の頃から精神安定剤を服用していた。
その頃の僕は、薬剤師の方からの説明をあまりちゃんと聞いていなかった。そして、薬に関しての知識は、ほぼなかった。
夕方になり、居酒屋へと向かう準備をする。そこで、処方薬の袋が目に入った。
もしたくさん飲んだら、帰ってきてから薬を飲み忘れるかもしれない。
続けて飲まないと効き目が薄くなるかも。
「そうだ!薬飲んでから居酒屋行けばいいじゃん。」
説明しておくが、精神安定剤とアルコールは「絶対に」同時服用してはいけない。効果が何倍にもなって、過剰摂取の状態になるからだ。そして、安定剤の効き目は長時間続くので、先に飲んでも後に飲んでも、アルコールと組み合わせたらアウトなのだ。絶対にやめてほしい。
そしてもうひとつ説明しておく。
僕は、絶対的にアホであった(今も変わっていない)。
安定剤を服用してから、意気揚々と居酒屋へ向かう。
飲み会自体は楽しかった。気心の知れた友人も多く、にぎやかだったのは覚えている。だが、特筆すべきことは、ここでは起きない。多分、起きなかったと思う。
気がついたとき、僕はアパートの自室にいた。
半裸であった。パンツのみを身に着けていた。ベッドに横たわっていた。
目の前にはコンビニおにぎりが三つあった。
前夜の記憶が、ない。
まず最初に心配したのは、コンビニで万引きしてきたのではないか、ということであった。
その心配はすぐに消えた。おにぎりの下にレシートがあったからだ。
おにぎり三つと、栄養ドリンクと、いかがわしい本を買った旨のレシートだった。記憶がなくても、僕は僕のままだったようだ。ちなみに、いかがわしい本は、枕の下にあった。素晴らしい本であった。何を思っていたのか、あのときの僕に訊いてみたい。
次に、いつから半裸だったのかということが、僕を悩ませた。
帰宅してからならばいい。なんの問題もない。だが、帰宅する以前からだったら、近所で、そして大学で「やばい奴」の認定を受ける。
少し悩んだが、杞憂であると気付いた。
飲み会をした居酒屋は、盛岡の大通りにある。アパートまで相当の距離がある。半裸の大男が11月に歩いていたら、確実に通報されるはずだ。
そして、大通りにはいつも、びっくりするくらい警察官がいる。半裸だったとしたなら、職務質問のオンパレードになっていたはずだ。
何より、昨日身に着けていた服は、律儀にたたんで置いてあった。なぜだか冷蔵庫の上にあったのは、奇妙なことだと思っている。
最後に、昨日何かしでかしたんじゃないか、と心配になった。
友人に「昨日俺何かしなかった?」とメールする。当時はメールであった。今ならばLINEなのか。時代も変わるなあ。
そして、テレビをつけニュースを見る。時刻は朝6時。ちょうど各局ニュースを放送している。それらをザッピングしながら、携帯で岩手のローカルニュースをチェックする。
何も起きていなかった。
犯罪はしでかしていないようだ。ならば、飲み会で何かをしでかしていなければ、何の問題もない。
だが、安定剤併用のせいとはいえ、記憶が飛ぶほど飲んでしまって、何かをしでかしていないはずもない…。僕は絶望した。
そのとき、携帯が鳴った。友人からであった。
「お前、昨日二次会にも行かないで普通に帰ったよ。特に変なことなかったけど、どうした?」
友人に、事のあらましをメールで説明する。折り返しで電話が鳴る。
友人は電話口で大笑いしていた。
別段変わったこともなく、男女それぞれと普通に会話して、10時過ぎに帰ったことが発覚した。友人は終始笑っていた。
これが、お酒による僕の人生第二位のやらかしである。
ちなみに第一位は、酔って携帯をなくした話である。
他にも、知らないおじさんとスナックで熱唱している途中で酔いがさめた話とか、ちょっとしたものならば山ほどある。
お酒は怖い。だが、精神安定剤はもっと怖い。
そして、一番怖いのは、アホである。つまり僕自身である。
この日を境に、薬剤師のいうことを守るようになったのは、言うまでもない。
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