見出し画像

”戦わされない”これが今の私たちの現実。『あのこは貴族』

”貴族”と言われてあなたは何を想像しますか?

Cakesで読み、あまりにも面白くて文庫を手に取った
「あのこは貴族」
には、文字通り現代の”貴族”が出てきます。









あのこは貴族
東京生まれの華子は、箱入り娘として何不自由なく育ったが、20代後半で彼氏に振られ、初めて人生の岐路に立たされた。焦ってお見
cakes.mu



都市部、特に東京にしか存在しない階層を含む
『階級社会』の上位層に生きる女性と、
地方から東京に出てきて生きる女性の人生が交差する物語です。


1,東京にしか存在しない階級

「明治じゃあるまいし階級社会なんて」
と言える人、現代日本で社会人やってれば、いないですよね。
それを気にしてるか、気にしてないかは別として。

東京だけでなく関西や愛知にも、それなりの旧財閥と大富豪はいますが、
政治家が絡むとなると、ほぼほぼ東京に集約されてしまう。
それも、千代田区や青山や松濤や世田谷区に(たぶん。よく知らんけど)

え、千代田って住めるとこある???え? (←地方出身者)

この映画、リアリティを持って観るには、
できれば東京で働いたことがあるか、地方から大都市へ進出したことあるか、どちらかの経験はあった方が分かりやすいと思います。


2,だけど私たちは戦わない

こういう話、どこかでも見たことあるし、話したこともあるな?と思ったら、これですね。東京女子図鑑。

東京女子図鑑が好きな人、「あのこは貴族」お勧めですよ。
なお、私にこの2つを勧めてくれた人は、同じ人物です。

「あのこは貴族」は、
映画版公式が「シスターフッドムービー」と銘打っているように、
ヒロインたちの静かな戦いの物語でありながら、女の子同士の友情を描く物語でもあります。

細かい心理状態の機微は原作本の方が分かりやすいのですが、
映画では階級社会を目に見える形(※)で、
ものすごく丁寧に描いていて、そんな中でも「自分たちが悪いわけではない」ことでいがみ合わず、親交を紡ぐヒロインたちの姿、本当に素敵でした。

※移動手段がタクシーと自転車、ホテルラウンジと大衆居酒屋、アクセサリーがジュエリーとただのシルバー、27歳になっても飾られる大きな7段飾りの雛人形、無造作に持たれるエルメスのバーキンバッグ…等々

登場人物の一人のセリフにこんなのがあります。
「この社会には、女を分断させる価値観みたいなものが残ってる」

東京女子図鑑では、見事にこれに踊らされ、分断され戦う女子たちが出てきて、それが面白かったり怖かったりするのですが、
「あのこは貴族」では「分断されてたまるか」と戦う女の子や、分断を免れて結びつく女の子たちが出てきます。そこら辺が新しいと思います。

まさに令和の出だしにふさわしい物語として、
心に染み入ります。

階級差を描いている傍らで、映画版は世代差も分かりやすく映し出します。
原作本でも描かれているシーンはあるのですが、視覚って凄い。
世代が違うと、ものの見事に『自分たちを分断する価値観』で動く人たちが描かれています。

なお、前述のセリフ(女を分断させる価値観)、
原作と実写映画で、言う人が違います。でも意味が通じる。とても趣があります。
サラッと出てきますが、「そうそうそう!」と膝を叩く、大変な名シーンだと思います。

名シーンはそこですが、個人的には他にも好きなシーンがありました。

映画の終盤に差し掛かるあたりの、橋の上でのシーンがとても印象的で、好きでした。
一瞬身構える出だしなのですが、思ったのと違う展開にジーンと目頭を熱くしてしまいました。


3,出てくるホテルを映像でいくつ判別できるか

実写版映画、門脇麦ちゃん・水原希子ちゃんはもちろん、石橋静河ちゃんがとても良かったです。いやゴメンなさい初めて知りました初めまして。
良かったです。

それから、序盤のお見合い相手のモブキャラさんたちが非常に良かった。
絶望的にキモかったり、天才的に腹立つ「いるいるこういう奴!!」になってて最高でした。
マッチングアプリで頑張ったことのある人なら絶対首を縦に振れる

また、ホテルのラウンジやレストラン、ロビーがたくさん登場します。

私は東京のホテルにはあまり入った事がないので、
分かるロビー、分かるラウンジは少ししかありませんでした。
たぶん、椿山荘東京と、東京プリンスは分かったと思うんですがどうでしょう。

帝国は原作には出てくるんですが、出てきた…?
(なお、エンドクレジットを目を皿にして見てたんですが、帝国も東京プリンスも「撮影協力」に見つけられなかったので、勘違いの可能性あり)

さあ、映像だけ見て全てのホテル名が言える方は、どんな階級の方なんでしょうか。超上流?それとも、パパ活ママ活やってる大学生?


4,いちばん笑った話(映画関係ない)

私と友人は、シネコンではないミニシアターっぽいところでこの映画を観ました。
映画の後にゴハン行って感想を話したい、という流れではあったのですが、
映画がとっても良いのとは別に、私は映画中なんどもソワソワしていました。

お尻が…痛い。
あれ、こんなに映画中ジッとしてられない方だったっけ?
私この映画退屈なのかしら…?そう思うほど、お尻が痛いのです。

終わったあと「どこにゴハン行く?」となったのですが、
私よりずっと若い友人が言いました。

「その前にちょっと歩いて良いですか?お尻が痛くなっちゃって…」
「分かる!!!」

2人揃って爆笑でした。たぶんその日一番爆笑しました。
同時に私は安心しました。
そうよね?!椅子、硬かったよね?!
聞けば、お互い気付いてませんでしたが、それぞれにめっちゃ座り直しまくってました。良かった笑

なんだか潰れてしまったお尻を歩いて動かすべく、私たちは銀座の街へ繰り出したのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?