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#4 『惨敗 青葉公園のハト』(静岡)

話し相手JAPAN TOURとは

今は出来ないですね。
50cm✕50cm✕30cmの二等辺三角形で、路上に置かれた小さなテーブルで向き合って『話し相手』をする事が、出来なくなる世の中になるとは、誰も思わなかったんじゃないかと思います。

あの頃、漠然とすら考えていたかどうかも覚えてませんが、20年後の世界では、もっと時代が進んで、人と人が向き合って話すというスタイルすらなくなるかもという怖さは、あった気がします。

けれど、今の状況は、時代が進んだわけでも後退したわけでもなく、止まってしまってる感じですね。

もちろん、話をするだけならリモートでも出来るので、そう考えると、もっと気軽に、もっとドライに『話し相手』になる事は、可能なのだと思うのです。それが新しいスタイルということになるのかどうかは別ですが。

前置きが長くなりましたが、静岡での『話し相手』は惨敗の記憶です。
とにかく、来ないのです、人が。そして、ずっとどうでもいいことを考えてました。

『平和の象徴・ハト』
青葉公園がいいらしい。まず、どこで『話し相手』をやるかというのは、非常に大事なことだ。駅前がベストやと思うが、駅前では、なかなか座る側も落ち着かない。(オレなら絶対座らない)

駅前でも、なんか、ちょっとした広場があったりして、ストリートミュージシャンが程よい音量で歌ってるような場所やったら、きっと座る側も、ストリートミュージシャンの歌声をBGMにしながら、座って話せるんじゃないかと思う。(それでもオレなら座らないやろうな、きっと)

で、静岡駅にはそんな場所がなかった。地元の人に聞くと、青葉公園がいいんじゃないかという情報を得た。

最初に来てくれた人は

「あ、ど〜なってるの!?(番組名)で、探してる人ですよね?いつから静岡ですか?」
「今です。たった今、ここに座ったとこ。え?探されてんの?オレ、番組で探されてんの?」

番組では「福島カツシゲ情報をFAXでお寄せ下さい。」と言ってくれてたそうだ。ただ、番組が追いかけてくれてるわけでもないし、今日は、どこどこでやってますっていう情報を流してるわけでもないので、なんていうの?

めちゃくちゃ規模のデカイ『かくれんぼ』みたいになってる。声をかけてくれた彼女的には

「みぃ〜つけた、しかも超偶然」

という感じらしい。

そんな彼女に見つかってから、誰も来ない。誰もだ。ハトばっかりいる。江ノ島で知り合ったえのさんがいたら、大騒ぎして調教するぐらいハトだらけだ。

ハトをずっと見てた。ハトは平和の象徴だというが、さすがにこんだけ多いと平和感がない。正直うっと〜しい。

キミら白じゃないと、今イチ平和っぽさないからな。
たぶん、ハト自身もその辺は分かってるのだと思う。なんていうか平和感出そうという気概を全く感じない。

むしろ、ヤサグレてる。

そんなハトたちは、あっちこっちでグルグル回ってる。喉というか首というか、めちゃくちゃ膨らましたハトが、たぶんオスだ。

基本、喉を膨らましたハトが、もう一羽のハトの前で、頭を下げて回ってる。頭を下げられてるのが、たぶんメスだ。

そういう前提で書く。

オスのハトが喉を膨らましてる分、なんかメスのハトが、めっちゃスタイルのいいモデルみたいに見えてきた。

これは・・・求愛行為に違いないな。求愛にはうるさいオレは、ピンときた。

あまりにヒマだったから、そんな求愛だらけのハトに、なんかアフレコしたくなった。アイツらだ、あのカップルバトにアフレコしよう。

「たのむ、なッ、なッ、ええやろ?」
「・・・」
「なぁ〜って、たのむわ」
「ちょっと、ウチいまエサ食べてんねん」
「エサ、あとでええやん。後で俺が取ってくるから、な、な?」
「もぉ、ちょっと、そこどいて!」
「なんやねん、そう言うなって」
「目の前でウロウロせんといてよ!」
「ウロウロしてないやん、グルグルしてるやん。」
「ちょっと〜、あの子にエサ持っていかれたやん!」
「いや、今のエサっぽかったけど、小石やったで」
「・・・」
「ほら、あいつ、出してるやん。」
「・・・」
「一回食ったけど出してるやん、ほらほら、見てみ」
「え?なに?聞いてなかった」
「聞いてなかったって!そんなん言うなや。」
「もぉ、ホンマ、うるさい!大きい声出して、ハト呼ぶで」
「ちょ、それやめてや〜」
「そしたら向こう行って!」
「なぁ、メシ食ったら眠たくなるやん?その前に、な、な、俺、自慢やないけど、こっち回りも出来んねんで(逆回り!)」
「そんなん、誰かて出来るわ!」
(バサバサバサ)
「おいッ!どこいくねん!」
「アンタが行けへんねやったら、ウチが行く」
「お〜い!そんな電線の上にエサないで〜」
「ほっといて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「そうかそうか、そうですか、もぉええわ!お前が、そういうつもりならなぁ・・・(すぐ隣りにいてたハトに)なぁ、な、な、どう?ちょっとお茶でもせぇへん?アッチにええ噴水あんねん。な?え?ちゃうねん、ちゃうねん、さっきのアイツとは何でもないねん。え?いやいや、逆、逆、俺がな、付きまとわれて困っててんって(めちゃくちゃ耳元で)キミにだけやで、こうやって回るの。なんなら逆回り見せたろか?」

さっきより勢いよく右回りと左回りをかましてる。めっちゃ回ってる!節操ないハトやなぁ〜

そしたら、電線のハトが

「ちょっと、なんやの、アイツ、ウチの時、あんなに回ってなかったやん!しかも、なに?今口説いてるん、ウチの地元の後輩やん!うわ、めっちゃ腹立ってきた」

(バサバサバサ)

「ちょっと!」
「え?なに?」
「あッ、先輩!!」
「え?先輩って・・・」
「この子、ウチの地元の後輩やねんけど」
「いや、違うんです、この人がなんか声かけてきたっていうか、あの、あの、フルッフ〜フルッフ〜」
「なにテンパってんの?」
「いや、テンパってません、すみませ〜ん」

(バサバサバサ)

「戻って来てくれる思てたわ」
「そういうつもりちゃうし!」
「わかったわかった」
「アンタ、サイテーやな」
「まぁ、ええがな、ええがな」

で、戻ってきたメスにいきなり後ろから覆い被さった。

「・・・」
「・・・」

バサバサバサ
覆い被さった後、秒速でオスが電線に飛んで行って止まった。

んッ?え?終わり?終わった・・・の?終わったみたいだ。電柱の上で一息入れてるハト

「ふぅ〜ッ」

終わった後に、ベットでタバコを吸ってる男みたいに見えた。
で、メスのハトは、ナニゴトもなかったように、またエサとか小石をつついてた。

平和やな、ハトって。
そんなハトばっかり見てた青葉公園だった。

他にも、いくつか『どうでもいいこと』が日記には書かれていて、ただ、20年前の、あのタイミングでは、決して『どうでもいいこと』ではなかったんだと思うのです。

人生で初めて、パラオでヒッチハイクをした時に、明らかに日本では違法の葉っぱを吸ってる2人組に乗せてもらって、早く降りたくてしょうがなかった事と、もうひとりは、フラワーアレンジメントの仕事をしてる黒人のおばちゃんに乗せてもらって「アンタ息子に似てるのよ」って言われてた事を書いてた。

他にも、ひとつ上の兄貴が、夏休みに全く宿題を放置して無計画すぎる過ごし方をしてて、最終日に友だちに借りたノートを全部写して終わらせたのに、オヤジにバレて全部消しゴムで消すように言われて消したのだけど、部屋に戻ってきて、ニヤッて笑いながら「えんぴつの跡残ってるから大丈夫やねん」って言いながら、宿題終わらせてた事も書いてた。

まぁ、どうでもいいことなのだけど、全く繋がりがない事でもないなぁと思いながら読み返してました。

ただ、そんな事も書いてたら、この【話し相手JAPAN TOUR】が終わらないので、今回は、ちょっと省略しましょう。

『地下街の通路』
通勤時間の雑踏に起こされた。
目が覚めると視界は横向きになっていて、目の前を革靴が同じ方向に進んでた。日常の風景を、こういう角度で見たことはなかったなぁ。

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東京で明け方まで飲んで、そのまま始発電車に乗って、気づいたら結構人が乗ってる時間帯にイスに横になって寝てた自分に気づいた時の気まずさとは違った「うわッ、やばい」やった。

そのまま地下通路のトイレで歯を磨いて顔を洗って、寝床に戻って缶コーヒーを飲んでる自分がいてる。

缶コーヒーを飲みながら、しばらく地下通路で通勤してる人たちを見て、静岡を出た。

『ラテンのノリ、HAMAMATSU』
もう一日やったな、静岡市の青葉公園では、もう一日やっときゃよかったな。いや、やっぱり駅前でやったほうが良かったんかな?

浜松の駅前で、そんな風に思った。

浜松駅前での2日目。
同じ場所に、最低2日はいないと分からんもんやな。という事に気づいた記念日。

だいたい人は、同じ場所を通って通勤、通学してるもんだ。そういう生活をしてる。オレのようなパターンは、珍しい生活だ。いや、これは生活というマジメなもんではない。なので、マジメに生活してる人の視界には、なかなか入っていかない。

昨日いた『話し相手』という珍しい生き物は、一旦スルーしたものの、2日続いて見かけると、ちょっと気になるもんだ。(オレなら気になる)

「あれ、今日もいるなぁ」
「なぁ、占い(え)ませんって書いてるけど、なんだろ?」
「話し相手って、なにすんの?」
「話の相手じゃない?」

みたいな会話が繰り広げられるかどうか分からんけど、2日いると、『話し相手』と書かれた看板を見て首をかしげる人とか、そのまま通り過ぎたけど、しばらくして「えッ?」って振り返る人、見た瞬間笑う人(微笑んでくれる人と、鼻で笑う人と、ふたパターンある)など、いろいろいる。

3人の若いサラリーマンがやってきた。

「昨日もいたでしょ?」
「はい、昨日からですけど」
「なんなの、アレ、なんなの?って職場で話してて、今日も座ってたから見に来た」
「見に来たって!話しに来たんちゃうんかい!」
「あ、話す話す。ナニ話すの?」
「いや、もぉそれは、お任せで」
「なに、お任せコース?じゃぁ、とりあえずビールで」
「ぎゃははははは」

いや、まぁ、酔っぱらいなんですけど、心地の良い酔っぱらいだった。

「なになに、全国回ってんの?」
「まだ始まったばっかりやねんけど」
「え?どっち回り?」
「どっち、回り・・・そうか、回る事考えてなかったわ」
「これからどっち行くの?磐田?舞阪?」
「おぉ、その歩み、小刻みやな。ここの前は静岡市でやってた」
「静岡は、ダメでしょ?」
「え?なんで?」
「静岡、ノリ悪いもん。」
「そうなん?」
「静岡って城下町だから、なんかお高いんだよ」

いや、もちろん彼らの言い分なので、静岡の人全部がお高いわけではないと思うけど、なるほど、そういう土地柄というのがあるのか・・・そうか、そうなんか。2日いてたら違うとか、そういう事ではないのか!

「浜松はラテンだから。ブラジル人すげぇ多いの」

そう言って、サンバのリズムで帰っていった。いや、もう1軒いくな、あの感じは。

何気なく駅前の地図を見たら浜松にも浜松城があった。

いやいや、浜松も城下町やん。

次回は、豊橋で出会った酒田のおっちゃんの話。

THE・NEWSPAPERというグループにいた時に全国まわってました。ちゃんと日時と公演場所が決まってる『全国ツアー』です。

NEWSPAPERというだけあって、新聞からネタを作ります。
全国を回ってる時に、その土地のいわゆる地元ネタをその日に取材してやってた時に、よく聞いたのが「城下町なんで、お高いんです」という分析。

長岡京市(京都府)で公演した時に、公演前に長岡京の人に取材をしてたら
「京都人はお高いから『長岡は京都やない』って言われますねん。で、大阪の人には『長岡は大阪ちゃうやろ、京都やろ』って言われますねん。まぁ、大阪と一緒にされるのは、こっちからお断りですけど」
って最後にちゃんとオチつけてました。

たしかに、そういう土地柄みたいなのは全国にありました。

ひとりオモシロ企画のスタート。
話し相手JAPAN TOUR #0 半年間、話し相手に行ってきます

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