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覚えている、あの、瞬間。 | 父とのこと #1

わたしがとても小さかったころ、父はわたしのことをそれなりにかわいがってくれていたのだと思う。少なくともわたしは、それなりにかわいがられていると感じていたと思う。

なぜそう思うのかというと、そう感じなくなった瞬間をハッキリと覚えているからだ。

覚えているのは、

電気が走ったような感覚と、

こたつ布団の端を転がる、ご飯用のお茶碗と、

「泣けばなんでもやってもらえると思うなよ」という言葉と。


こちらを振り向くこともなく、向こうを向いて台所に立っている、

本当はすべてを聞いているであろう背中。


叩かれたのかどうかは、覚えていない。


わたしは、ただ、固まっていた。

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