見出し画像

どうしているの? 犬や猫の献血・輸血/AND PET#28

ツイートで知った献血・輸血問題

先日、「愛犬の治療のため輸血に協力してもらえる犬を探している」というツイートを目にしました。勉強不足の私は、犬や猫にも献血・輸血があることをこの時初めて知りました。
 
よくよく考えれば、確かに犬や猫も大きな病気やケガの時に輸血が必要なこともあるでしょう。でも、人間のように「献血ルーム」などがあり思い立ったら献血できるような環境が整っているわけではありません。ましてや犬や猫が自ら献血したいと申し出るわけもなく。「どこで献血ができるのか?」「献血にはどのような条件があるのか?」「どのようにして必要な血液を集めているのか?」「犬や猫も同じ血液型でなければ輸血できないのか?」疑問だらけです。
 
そんなことを思っていたところ、「第165回日本獣医学会学術集会」の市民公開講座で「犬猫の献血システムの普及の取り組み」という講演があることを知り、参加しました。

私にとって初耳となるような貴重なお話をいろいろと聞くことができましたが、中でも一番興味深かったのが、輸血用の血液はどのように用意されるのかということ。講演によると、輸血はその病院内で採血し必要な処理を施した血液でなければ行えず、動物病院内の供血動物や献血ボランティアから血液を提供してもらうのだそうです。ここでまた耳慣れない言葉が出てきました。「供血動物」とは一体?


血液を提供する「供血動物」

「供血動物」が今一つ分かりにくかったので、講演後にある本を読んでみました。はせがわまみさんの『空から見ててね いのちをすくう〝供血猫〟ばた子の物語』です。

『空から見ててね いのちをすくう〝供血猫〟ばた子の物語』
(集英社みらい文庫)

犬や猫の血液センターが法的に認められていない日本では、各動物病院で血液を確保しなければなりません。しかし、設備や技術などの問題から、血液を必要なだけ保管できる病院は限られています。各病院では輸血が必要になる度に献血ボランティアを募るなどして対応しますが、それでも必要な血液が足りなくなることも。そのため、病院内で献血に協力できる犬や猫を飼育する場合があるのだそうです。これが「供血動物」。文字通り血液を提供する動物です。
 
輸血が必要な犬や猫が来院すると、院内の供血動物の体調に問題がなく血液型も適合すれば、採血となります。もちろん1回の採血量は決まっていますし、採血と採血の間には一定期間が設けられ、採決後の健康サポートもしっかり行われます。


献血ボランティアをするには?

では、献血に協力したいと思ったらどうすればいいのか。講演によると、定期的に献血できるか、緊急時に対応できるか、病院までの交通手段が確保できているかで判断し、可能であれば、かかりつけ医に相談したり、献血募集をしている動物病院を調べてボランティア登録したりするとよいとのこと。
 
なお、献血できる犬や猫には、主に以下のような条件があります。ただし、病院によって内容は異なるので、実際に献血を検討するのであれば確認が必要でしょう。

献血できる犬・猫の条件
年齢…犬も猫も1~7歳
性別…交配予定のないオスまたは出産経験のないメス
体重…犬は10㎏以上、猫は4kg以上
予防…ワクチン接種、ノミ・ダニ予防(犬はフィラリア予防も)
生活環境…犬は屋内外問わず、猫は完全屋内


溶血性貧血に輸血は有意な治療法だったか?

参加した市民公開講座の最後に、質問をしてみました。聞きたかったのは、4月に旅立った我が家の猫、ぼたんの免疫介在性溶血性貧血の治療に、輸血という方法もあったのかということ。「貧血なら輸血も有効なのでは?」という素人丸出しの短絡的な質問でしたが、講師の内田恵子先生(獣医・日本獣医輸血研究会会長)から、「重度の貧血の場合に酸素吸入を助けるための対症療法として輸血をすることはあるものの、根治治療法ではない」といった旨の丁寧な回答をいただきました。やはりそんなに簡単なものではなかったか……。


人工血液の実用化に期待

ペットの平均寿命は確実に伸びており、その分、病気などで輸血が必要な猫は増えていると予想されます。では、生後6カ月の我が家の猫、こはくが成長して条件を満たした時、献血ボランティアに参加させられるのか。自分ならまだしも、意思表示ができない猫の体に影響する決断を飼い主が下すのは、正直難しいところです。2018年には中央大学とJAXAが猫用の人工血液の開発に成功したと発表。なるべく早く実用化されることを期待しています。

電池切れで舌を出したまま爆睡。まだまだ子ども。


文・横山珠世
女一人と猫の暮らしから人と猫が
共に健康で幸せに生きていく術を考える、
株式会社ジャパンライフデザインシステムズの
編集兼ライター。
『セルフドクター』や書籍などの制作・発行に携わる。


この記事が参加している募集

ペットとの暮らし

猫のいるしあわせ