志望動機は企業と応募者が一緒に作っていくもの
買い物しようと思って出かけたけれど、実際は全然違うものを買ってしまった。そんな経験はたぶん誰にでもあると思う。
ある海外の企業の調査では、こんな話もある。
これから何を買うのですか?とスーパーの入り口で聞いて、出口で実際に何を買いましたか?と聞いたら、入り口で聞いたものを実際に買った人は30%もいなかった。
就活や採用にも似たようなところがある。
先日、新卒向けの求人サイトの担当者と話していて、その人は自慢気にウチのサイトからの内定者は7~8割は志望業界とは違う会社に入ってるんですよ!と語っていた。
思わず「すごいですね」と答えてしまったけれど、ふつうは少しおかしなことを言ってるかもしれない。それは買いたいと思っていたものを買えずに、別のものを選んだ人たちのことだから。
実際の買い物でも本当に買いたいものが買えるとは限らないし、いろんな商品をみていたら、違うものが欲しくなることもある。
もちろん在庫にも限りがあるし、本命のものが買えないとか、欲しかったけど買えなかった、こともある。でも、ショップの店員さんと話をしていて「あ、いいかも」と思うこともあるし、店員さんの人柄、レビューの良さ、いろいろ調べているうちに心変わりする要因はたくさんある。
なんでウチを選んだの?なんてことは、本当はどうでもいい。ウチを選んでくれるように採用担当者は動いているし、よく知ってもらえるように丁寧にメディアで、またはカジュアルな面談で魅力を伝える。困ってることや悩み、やりたいことがあれば、それを聞き出して「それウチで働いたら解決するよ!」と提示する。
そうやって、志望動機を応募者と一緒に作っていく。ただ会社の説明やイメージをサイトや資料にまとめていたって、そこから会社の魅力を汲み取ってくれるほどの熱意を持って来てくれる人なんて、ほとんどいない。
応募者と一緒に、働くイメージを、キャリアのストーリーを作っていく。そうやって入ってきた人は、いつのまにか志望度も高まってるし、会社に期待してくれる。面接も通りやすいし、内定辞退も少ない。
買おうと思っていたものとは違うけれど、きっと満足度が高い。
ほとんどの応募者が志望業界とは違うところで内定を承諾している、という事実は、承諾までのプロセスのなかで、きちんとその応募者に魅力を伝えれば、はじめは本人の望むものではなかったとしても、納得して働いてもらえる、ということだ。
このことは知名度のない多くの中小企業やスタートアップ企業にとっても希望になる。
小さな会社は、知名度に頼れないために、こういう丁寧なコミュニケーションを採用過程に組み込むほうが、手間はかかってもきっと上手くいく。
お金だけがかかって情報の溢れかえっているナビサイトではどうせ埋もれてしまうから、なんとなくいいなって思ってるくらいの人にカジュアルな場で、自分も働いてて楽しいよ、って話から魅力を伝えていく。一見回り道のようだけど一番確実で、お互いにとってもいい結果が生まれやすい。
そうやって、いい会社にめぐり合えたと思ってくれたら何よりも嬉しい。