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滑りやすい坂道

社会心理学や行動経済学の本を読んでいると、少し頭がくらくらする。

判断の不確かさや誤り、正しく理解できないこと、すぐに騙されること、人の心の弱さをまざまざと見せられ、うろたえてしまう。

車を運転していると、自分より速く走っている車は、飛ばし過ぎで調子に乗ってるヤツ、自分より遅く走っている車は、どんくさくて弱弱しいヤツ、と感じて、自分だけが正しい速度で走っていると思ってないだろうか。
たぶん、誰もがそう思う気がする。自分だけが、ちょうどいい。そんな中庸で普通であることを、どこか装ってしまう。

「中立的な視点」なんて本当にあるのだろうか。人々の判断はいろんなものの影響を受け、そのときの状況や力や制約によって、変化する。

時間を与えないことは判断を鈍くさせる。
いま、ここで、すぐに、を広告主や営業マンは呼び掛ける。

あえて苦労をさせる。
遠くの、分かりづらい場所に店を構えて、ここを見つけたあなただけの特別感を与える。

近くのものに焦点をあてる。
遠い先をみる視線は森を、近くを見る視線は木を見ている。

出口を隠す。作らない。
その場でがんばるしかなく、どんどんエスカレートする。その行為の善悪を問うことなく。

そうして判断を誤ったら、あらゆる手段で正当化する。
正当化は、あまりに人間らしい弱さだ。

指示に従ってやった、時間がなかった、周りがみえてなかった。天気が、体調が、時代が、よくなかった。悪気はなかった。もったいないと思った。

誰かを批判しているわけでもない、自分だけが特別なわけでもない。
ただ、誰にでも起こり得る、判断を誤らせる、鈍らせる仕掛けが世の中にはたくさんある。すべてを疑うことはできないし、そんな生き方も息苦しい。

それでも、私たちは「滑りやすい坂道」の上に立っている。

安易なほうに転がりやすい、騙されやすい。

情報は、正しく丁寧に書いたものよりも、嘘でも人の耳口に馴染みやすいもののほうが、すぐに広く伝わる、という。

坂道を転がらないために、坂道を意識する。心理を利用するのでなく、心理的に間違えやすいことを気づかせる、そういう仕組みを考えたい。

わたしたちは簡単に思い込み、簡単に騙されるから。

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