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映画館にもっとエンタテインメントな進化を ゼロからのスタートとなった異業種からの挑戦

ユナイテッド・シネマは、邦画・洋画の話題作の上映の他にも自社オリジナルコンテンツの企画開発・製作・配給にも取り組んでいます。その担当者として初の自社制作・配給の第1作から関わっている蒔田さんに、チャレンジの意義ややりがいについて語っていただきました。

ユナイテッド・シネマ オリジナルコンテンツ開発担当 / 蒔田まきた 隆之たかゆき
1974年、長崎県生まれ。観光系の専門学校卒業後、医療系メーカーや漁業組合を経て、2000年8月ユナイテッド・シネマ長崎のオープニングスタッフとしてユナイテッド・シネマ入社。稲沢(愛知県)、としまえん(東京都)、浦和(埼玉県)の劇場にてマネージャーや支配人(劇場責任者)を歴任。2016年10月より本社・事業開発部に着任。自社オリジナルコンテンツの開発業務に従事している。一番好きな映画は『セントラル・ステーション』。


漁連から映画館へ

  蒔田さんはユナイテッド・シネマに入社する前は、医療機器メーカーや漁業協同組合連合会(漁連)で働いていたそうですね。映画とは全く関係ない業界・業種から、なぜ映画館に転職したのですか?

元々は旅行のツアーコンダクター(添乗員)になりたくて、高校卒業後は福岡の観光の専門学校に入学しました。でも卒業する頃は就職氷河期真っ只中。観光業界含め、全業界の求人が少なく、学校の推薦で就職できたのが医療機器メーカーでした。色々な理由が重なり、1年ほどで退職後、地元長崎に戻り父が長年勤めていた漁連で働くことになりました。
漁連で働き始めてから4年半ほど経った頃、ユナイテッド・シネマ長崎のオープニングスタッフの求人を見つけました。そもそも映画は子供の頃から好きで、特に学生時代はミニシアターブームで毎週映画館に通っていたくらいでしたから、自分が好きなことを仕事にしたいと一念発起し、応募したところ、採用となったんです。

映画館がオリジナルコンテンツを作る?

  現在はユナイテッド・シネマ本社の事業開発チームのマネージャーを勤めているとのことですが、仕事ではどのようなチャレンジをしているのですか?

ユナイテッド・シネマと言えば、さまざまな映画を上映する”映画館”というイメージがあるかと思いますが、それ以外にも様々なチャレンジを行なっています。中でも、私が主に取り組んでいるのが、ODS(Other Digital Stuff)という、当社オリジナルコンテンツの企画開発です。
基本的に映画ビジネスは大きく分けて製作・配給・興行という3つの軸があります。この川上から川下まで全ての業務を一気通貫で担当しています。これまで8作品ほど手がけてきました。

右も左も分からないゼロからのスタート

  中でも一番印象に残っている忘れられない作品は?

やはり第1作目の『劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き コトラ家族と世界のいいコたち』(2017年10月公開)ですね。これまで当社で誰も手がけたことのない業務だったので、どこから手を付けていいのかわからないという暗中模索状態。全くのゼロからのスタートだったので、まずは製作・配給に関わる業務を全て書き出すところから始めました。その後、配給業務に関しては、これまでお付き合いのあった配給会社の方に相談して、具体的な業務内容や宣伝手段などを一つずつ丁寧に教えてもらったり、興行会社の方を紹介してもらったりもしました。

  それから具体的に業務ではどのようなことをしたのですか?

例えば告知用の宣材物の制作に関しては、お客様に作品を観たいと思っていただけるように、メインビジュアルの検討、伝えたいメッセージを表現するキャッチコピー、作品の魅力が伝わる文章など考え抜いて作りました。宣伝業務は映画の情報をいかに効果的に認知してもらえるかが最も重要な使命です。この作品の場合は、まずは岩合光昭さんのファンの方・ネコ好きの方に認知してもらいたいと考え、岩合光昭写真展の会場での作品宣伝を強化、岩合さんにはトークショーでの告知にもご協力いただきました。販促では、前売券としてネコの型抜き型のチケットを作ったり、映画館の売店で販売する特典付きのオリジナルポップコーンカップを作ったり、知恵を絞っていろいろな工夫を重ねました。その他にも出演者や監督の媒体取材や公開記念舞台挨拶など、多岐にわたる業務を行いました。

  製作や興行の面では?

最初はテレビで放送された、津軽のリンゴ農家で暮らすネコの家族の番組映像を映画用に再編集する予定でしたが、制作の方々と協議した結果、より作品のクオリティを上げるために、その後のネコたちの成長の姿を追加撮影した映像を本編に追加することになり、実際に私も撮影隊に同行して撮影に立ち会わせて頂きました。岩合さんが実際にネコの目線で撮影しているシーンを見た時は感動しました。
興行面では、大手のシネコン様を含め全国各地の興行会社(映画館)様に作品の魅力と自分の思いも含めて丁寧に伝えて、多くの興行会社様に上映を決定して頂きました。

一人でも多くの人に感動を届けたいという思いがスマッシュヒットにつながった

  その初めての困難なチャレンジにはどのような思いで取り組んでいたのですか?

業務を通じて作品に対する思い入れもどんどん強くなっていったので、この作品を元々のテレビ番組の視聴者の方は元より、それ以外の、番組や岩合さんを知らない方々にも届けたい。そして、一人でも多くの方に劇場に足を運んでもらい、この作品を通して少しでも楽しかったとか感動したと思ってもらいたい。その一心で取り組んでいました。

  初めての多岐にわたる業務で辛すぎて心が折れそうになったことはなかったですか?

確かに初めてのチャレンジだったので色々と大変なことや辛いことはありましたが、なんとしてもこの仕事は絶対最後までやり通して、作品をヒットさせたいと固く心に決めていたので、途中で投げ出そうと思ったことはなかったですね。

  その1作目は2017年10月に公開されたそうですが、興行成績はどうだったのですか?

おかげさまで観客動員数が8万人、興行収入も1億円を超え、スマッシュヒットとなりました。

涙が出るほどのうれしさからさらなるチャレンジへ

  初めての難しいチャレンジを成功させた時の気持ちは?

結果を出せたことは素直にうれしかったですし、自分たちの手で企画制作、配給、興行した作品は、最初から最後まで全てのフェーズに関わっている分、より思い入れが強いので、全国の大勢のお客様に観ていただけたのは、やりがいと感動もより大きかったですね。
今までの苦労が報われた、頑張ってきてよかったと思いました。各興行会社の方々から「この作品を上映できてよかった」と言ってもらえた時はうれしくて涙が出ました。同時に、協力してくれた方々への感謝の気持ちでいっぱいにもなりました。

  実際に経験してみて改めて感じた自社コンテンツの開発の意義は?

トレンドをとらえた作品を製作することは、競合他社との差別化になりますし、お子様からお年寄りまで楽しんでいただける作品を製作すること自体が、当社の企業理念である「私たちはエンタテインメントを通じて”みんなと暮らすマチ”を幸せにします」の実現に繋がっていくと考えています。
今後もこの思いを胸に、新たな映画製作に携わっていきたいと思います。

  現在チャレンジしていることは?

現在、『劇場版 ダーウィンが来た!』の第4弾『日本列島生きもの超伝説』を制作中です。前作・前々作はコロナ禍の影響を大きく受けてしまいましたので、今作は多くの方に作品を認知してもらい劇場で鑑賞してもらえるように、宣伝手段の見直しや、新たなアプローチ方法を考えるなど日々チャレンジしています。
また、世の中には魅力的なコンテンツがたくさんあるので、他のコンテンツホルダー様にも協力を仰いで新たな作品の展開にもチャレンジしようと考えています。

  今後の目標を教えてください。

これからどんな映画が大ヒットするか、誰にもわかりません。そのような可能性を秘めた作品をいち早く発掘して、自社配給作品として、興行収入10億円越えレベルの大ヒット作品を生み出したいですね。

チャレンジしやすい社風

  ユナイテッド・シネマという会社の魅力は?

当社で働いている人は明朗快活で視野の広い人が多い印象で本社だけでなく、各劇場にいるスタッフ/マネージャー/支配人など仕事の相談ができる人がたくさんいるんですよ。「こんなコンテンツはどうかな?」と提案してくれる映画好きのアイデアマンが多いのも大きな魅力ですね。
会社としても、ODS以外にもお客様にいろいろな新しい鑑賞スタイルを提案していて、体感型アトラクションシアター「4DX」は国内導入実績ナンバー1ですし、3面型のワイドスクリーン「SCREEN X」や、映画館の中でお酒や料理を楽しみながら映画を鑑賞できるPDC(プレミアム・ダイニング・シネマ)も展開しています。さらに、12月からはユナイテッド・シネマアクアシティお台場に、日本初となる音響体感プレミアムシート「FLEXOUND Augmented Audio」を新たに導入します。このように会社全体で、いろいろな新しいことにチャレンジしているんです。

趣味のレコード専用部屋が疲れを癒すオアシス

  仕事の疲れを癒やす趣味やストレス解消法は?

気に入った映画のサントラ盤のレコードを20代の頃から集め始めて、ジャズ/ソウル/ワールドミュージックなど色んなジャンルのレコードを購入しています。仕事で疲れた時やその時の気分に合わせてレコードを選んで聴くのが好きなんです。

  レコードは何枚くらい持っているんですか?

現在は1000枚以上持っているんですが、これでも結構処分したんですよ。部屋が狭くなり、以前はレコード専用のトランクルームを借りて保管していました。引っ越し後はレコード専用の部屋を作って棚に入れて保管していたのですが、先日あまりの重さで棚の足が折れちゃって(笑)。

自身の手がけた作品で娘が映画鑑賞デビュー

  プライベートでもよく映画を見るのですか?

以前は好きな時に好きなだけ映画を観ていましたが、子供が生まれてからはなかなかできなくなりました。でも子供がいるからこそのうれしい出来事もありました。
去年(2021年)、『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』を3歳の娘が観たいというので一緒に観に行ったんです。この時が娘の映画館デビューだったのですが、初めて観る映画が私が担当した作品となったのがすごくうれしかったですね。上映中、自分の娘や他の子どもたちが映画を観ながら笑っているのを見た時、思わずじーんときて配給冥利に尽きるとしみじみ思いました。娘に「この映画はお父さんが関わったんだよ」と言ったらわかってくれたようでうれしかったですね。あらためて、好きなことを仕事にできてよかったと心底思いましたね。

  では学生時代に戻れるとしたら、今と同じ仕事をしたいですか?

そうですね。今の仕事が面白くてやりがいもあることももちろんですが、この仕事を通して一期一会と思える素晴らしい出会いがたくさんありました。今の自分があるのは、右も左も分からない時に業務を一から教えてくれた人をはじめ、いろいろな人に出会って支えてもらったおかげです。だから生まれ変わっても、映画に関わる仕事がしたいですね。それほどの充実感、満足感を今の仕事に感じています。

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