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右派と左派の思考回路

ロシアのウクライナ侵攻に対して、憲法9条に関する共産党・志位委員長の発言が炎上している。

憲法9条をウクライナ問題と関係させて論ずるならば、仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです。

志位委員長ツイートより

これに対して、右派/左派両方の意見が飛び交っているが、それらを見ていると、右派と左派の思考回路の違いがよくわかる。

右派と左派の目指すゴール

右派/左派の意見という際、政策は、経済、外交、国防、社会保障等々、多岐にわたり、それぞれに対する左派/右派の主張は異なる。結果、経済においては左派的意見の人が外交においては右派的意見ということは、当然に起こる。

そのため、この記事では、ウクライナ侵攻を機に議論されている国防に対する意見を対象に、右派=自民党に近い主張、左派=共産党に近い主張という位置づけで書いていく。

ウクライナ侵攻というイレギュラーな事態におけるそれら右派/左派の意見を見ていると、改めて、右派と左派というのは思考回路が異なると同時に、同じことを目指しているのだなと感じる。

右派も左派も、目指しているのは平和であり戦争反対である。

ただし、目指す平和に向けて、思考の出発点と、そこからの思考回路が異なる。左派は「理想を実現」するために思考する。右派は「問題を解決」するため思考する。

ウクライナ侵攻に対して、左派は理想の実現に対して「今こそ憲法9条が大切」と主張する。そして理想を仮定して「ロシアに憲法9条があればウクライナ侵攻は起きなかった」と言う。それを聞いた右派は「?」となる。

右派は現実問題を仮定して「ウクライナに憲法9条があってもロシアに侵攻されていた」と言う。その解決には「憲法9条の改訂が必要」と主張する。それを聞いた左派はやはり「?」である。

これらは、どちらも言っていることは正しい。そして、目指しているのはどちらも同じである。しかし「理想を実現」と「問題を解決」という出発点と思考回路が異なるから、双方「?」の状態になる。

右派と左派の脆弱な部分

そして、この右派も左派も、脆弱な部分がある。

左派は、理想の実現が優先されるから、現実の問題解決力が乏しい。理想と異なる事態が起これば「どうして理想と違うんだ!」と怒るが、問題解決力が乏しいため、理想と異なる事態は無視するか力で封印するしかない。

冒頭の志位委員長においても、批判を受けて憲法9条について発言を重ねているが、日本がウクライナと同様ロシアや中国に攻撃された場合という、現実問題を仮定した議論については無視を決め込み、発言していない。

また、第二次大戦で帝国主義が崩壊した後、反対勢力の大量虐殺を行ったのは、ソ連スターリンによる大量粛清、中国の文化大革命、ポル・ポトの大虐殺と、いずれも左派である。最近でも、中国共産党は香港を弾圧した。

これに対して右派は、現実の問題解決を優先するため、解決後から理想までの道筋が不明瞭である。

問題解決ばかりしていると元々の目的や理想を忘れてしまうことは普段においてもよくあることで、また、大量にある現実問題はより効率的に解決することを目指すようになる。

そのため、他国がどうこう世界平和どうこうと言っていられず、自国の利益が優先され、それが行き過ぎると、排他主義や民族主義に傾いていく。

この場合、国民の生命と財産を守る政権は、右派と左派どちらがよいかとなると、右派の方が安全ということになる。

なぜなら、政権には大量にある現実問題を解決してもらう必要があるし、それを左派が担うと、国防の観点からいえば、他国からの攻撃という現実問題への対応意識が希薄なため、他国から侵略されて民族滅亡のリスクが高まる。

戦後の日本は、長いこと右派=自民党が与党で左派が野党という構図であり、そのため、言語化していなくとも多くの日本人は「右派(自民党)に票を入れるのが最も安全」ということを感じていると思われる。

最近、野党に対して「批判ばかりしていないで対案を出せ」という声があるが、野党=左派は、対案など出さず批判するのが正しい姿と感じる。

与党である右派が現実問題を解決する。しかし、前述したように現実問題ばかり対応していると、元々の目的や理想を忘れてしまう。それを防ぐのが野党=左派の役目で、与党=右派が現実問題を解決し、時折、野党=左派が「理想と違う!」と批判し、与党=右派の行き過ぎを抑制する。それが最も安定した国会の姿といえる。

現在の野党議員も政党も、本気で政権交代しようなどと思っていないことは想像できる。本気で思って行動したのは、政権交代をライフワークにしている小沢一郎くらいで、他は、批判する野党の役割を理解しているだろうし、だから批判ばかりしている。批判するのが正しい姿だからである。

ウクライナ侵攻に対する不毛な議論

このように、右派と左派は、同じゴールを目指して異なるアプローチで思考するから意見が合致することはない。どこまで行っても平行線である。

これが、一方が世界平和を目指し、一方が世界征服を目指すといったようにゴールが全く異なれば、意見が一致しなくとも妥協点を見出したり意見の修正もできるだろうが、ゴールが同じなので難しい。

どちらも同じゴールを目指しており、だから、どちらの言い分も正しいのである。

そのため、批判合戦を繰り広げても、ネットで非難しあっても、意見が交わることはない。不毛である。

現在、右派にとっても左派にとっても同じゴールである平和を脅かすウクライナ侵攻が行われた。

この事態において必要なのは、憲法9条に対しての批判合戦を繰り広げることでも非難しあうことでもないことだけは、明らかである。

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