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Cuisineと食生活(その1)〜肩を張らずにフランス27

フランスに来る前は料理に手をつけることはなかった。せいぜいインスタントラーメンをアレンジした程度のものしか作った覚えはない。今になって白状するが、ここまで料理に興味があるとは思わなかった。ブリコラージュが面白いのは、やりたい時にやれることをやれるだけできるという面があると思う。料理は違う。少なくとも1日2回は何か作らないといけない。やりたい時にやるだけでは料理が好きとは言い難い。ただ都合のいいことに仕事の関係上昼過ぎまで時間があるので、自然とやるようになった。

全く苦にならなかった。料理に関する逸話は日本の情報サイトに数多く見かける。日本とフランスで特に違う点はなく、大概その面倒くささと買い物の大義さ、時間調整とレシピ選択のうざったさを書いている。確かにレシピの選択は自分だけだと行き詰まることが多いが、今ではクッ⚫︎パッドという必殺技もある。料理を始めた当初はレシピ本に頼りっきりだった。それでも無理やりやっている気もしなければ、嫌気がさすこともなかった。今もそう。なんでだろう?

大袈裟な言い方だが、料理には理科系研究者に共通の好奇心と探究心がくすぐられるところがある。男女に関係なく、「ここをちょっとこうすると」が面白いと思えるなら料理は基本その人にあっていると思う。うまくいった時の満足感はモチベーション維持に効果大だし、ダメだったとしても半日経てばまた試せばいい。毎回が実験みたいなものだ。

さて料理をしていると物持ちになる。調理道具は減ることはない。むしろ溢れるくらいになるのでいい加減取捨選択しないとと思うことがしばしばある。

調理用具、、、日本にいないことを残念に思う理由の一つ。ありとあらゆるアイデア商品が「日本製」品質で手軽に手に入る。羨ましい。帰国するたびにリストを作って買って持って帰る。フランスに来た当初は日本の精密電化製品に涎を垂らしたものだった。今では台所用品ばかり物色している。

3年前にキッチン « cuisine »スペースを根本からリフォームした。リフォームというより造り直しで、元々あった暖炉を破壊することから始まり、断熱材を敷くため床を30cm掘り起こし、石膏版の貼り上げ、配線工事、床タイル張り、壁紙貼り、ペンキ塗りまでやった。大部分は業者に頼んだ。コンセントの位置の決定、タイル選択は自分でやったし壁紙は自分で貼りペンキも塗った。以前の面影は片鱗もない。ただ言いたいことはこれではない。

リフォーム前

システムキッチンを完全にやり直した。自分でレイアウトから引き出しのサイズ、位置まで考えた。スペースにピッタリ合う設計にしてくれるということで各部分の幅まで考慮した設計をレイアウト図で業者に見せた。ほぼ変更なく実現した。3年経った今でも欠点が見当たらない。自画自賛が止まない。

右端に冷凍庫と冷蔵庫、その左にフリースペースとシンク、調理台は真ん中に持ってきて左がガスコンロ、そのまた左にフリースペース、最後に高さ2mを越す大きなストック棚。キッチンには流れがあるという話を昔どこかで聞いたので、自分が動く姿を想像しながらレイアウト図を書いた。満足しないわけがない。

リフォーム後

キッチンは家の中で最も重要なスペースだと思っている。準備にかかる時間、できた料理を囲む時間、食後のまったりした時間をここで過ごす。わざわざ « salon »居間に移動することも滅多にない。寝る以外はここで費やす時間がいちばん長いんじゃないか?と思うくらいだ。人生でシステムキッチンを入れ替えることが何回あるだろう?多分もうない。これが最初で最後。自分が料理をするからいよいよだけれども、妥協はしたくなかった。結果、大層贅沢なキッチンが出来上がった。

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