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パウダースノウ。

煙から匂いを全部取り除いたような白い雪。

これが妖精だと言われたら信じてしまうようなパウダースノー。

ブーツの底にへばり付いた妖精は、雪の上に置いた足を滑らせる。
だから、出勤時間に歩道にへたり込んでお尻のあたりを濡らしているのだ。

雪に上に飛び散るカバンの中身と一緒に雪をかき集めてしまっても気にしている暇はない。幸い、怪我は無いが、こちらの様子を伺いながら通り過ぎていく通行人を恥ずかしい思いでやり過ごすのが辛かった。

「やっちゃった~」と自己嫌悪する。
ムカつくこともできない性格だから、多分お気に入り(推しなんておこがましい)のVチューバーのライブ放送に、笑い話として投稿して読んでもらうのが幸せの最高地点だろう。

気が付くと、するりと猫がわたしの隣に寄ってきた。

どこから来たのか、ちょこんと揃った前足が雪の上に並んでいる。
「冷たくないの?」
自分のことは棚に上げて、そんな言葉をかけてしまう。
立ち上がる私を見上げる顔も可愛らしい。

平凡を特別にする妖精が、会社までエスコートしてくれる朝。
さっきまで聞こえなかったグッと踏みしめる雪の音がする。
どうやら妖精は存在するらしい。


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