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ショートストーリー

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短い物語をまとめています。
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2023年6月の記事一覧

一番遠くにいる。

一番遠くにいる。

今はどこにでも行けるはずだ。
行き方の方法から到着後に必要なものまで、誰がパッケージしたものをいつでも選べる。店も開いてる。
はじめに背負った心配を引き摺って歩いて行くうちに、沢山の砂が付いたらしい。
時々、砂を払ってあげないから、旅行者から運搬者になっていたらしい。
砂運搬者は、砂を捨てに行く。
それは行こうと決めなくても勝手に脚が向うところだ。だって、わたしは既に砂運搬者なのだから。
砂を捨て

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それが好きなら、これも認めろ。

それが好きなら、これも認めろ。

雷雨の中に傘の花が咲く。

ガミガミとうるさい相手の顔は見たくないとばかりに、傘で視線を遮る。
本来の平等とはこんな風で、疎ましいことさえも大体同じように降りかかるものなのだ。

しかし、平等というと何故だか良い言葉として用いられるようだが、それは違う。「大体同じようなことが降りかかる」、それだけのことが大切なのだ。逆さの指の上で揺れるヤジロベーと同じで間抜けに見えたとしても、現実的かつ理想的。そ

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