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ポケモンと中南米の微妙に深いかかわり【うすくちラテンアメリカ_5分エッセイ no.3】

かの有名なスマホゲーム、「ポケモンGO」をプレイして、早三年になる。

といっても、途中数か月単位でやらなくなる期間を何度も挟んでいるので、正味プレイ期間は一年くらいなものだが、それでも私のポケモンボックスにはそこそこポケモンたちが集まってきている。

既プレイの方ならよくご存じだろうが、ポケモンを数集めること自体はそれほど難しくない。画面上の地図に表示されるアバターの周辺に、そこそこの頻度でポケモンが出現する。モンスターボールさえ切らさなければ、結構簡単に300体くらい集まってしまう。

私は個人的なルールとして、一種類につき一匹しかボックスに残さないことにしている。かぶったポケモンたちは「博士に送る」ことでボックスから消去できるので、同じ種類がたくさん集まった場合は、その中で一番強い奴だけを残して、他の連中を博士送りにしてしまう。博士に送られた子たちがその後どういう運命を辿るのかは知らないが、データ上はただ単にボックスから消えるのみ。こうして私のポケモンボックス内には、選りすぐりのメンバーたちが少しずつ増えていく。

私のポケモンボックスには現在、大きく分けて4種類のポケモンたちがいる。南米で捕獲したやつ、中米で捕獲したやつ、それ以外の外国で捕獲したやつ、そして日本産だ。捕獲したポケモンを表示すると、合わせてそいつを捕獲した土地名も表示されるので、ブラジルで捕まえたやつとパナマで捕まえたやつが、後からでも一目で区別出来るようになっているのである。

この機能のおかげで、ああこいつはあの国のあの場所で捕まえたなと、ポケモンが一種の日記代わりになってくれるのだ。

中でもベネズエラ産のポケモンが何匹かいて、こいつらは下手したら結構レアなのではないだろうか、などと思っているが、誰かに見せるわけでも、品評会に出すわけでもないので、自分で「レアだ」と思っているだけで、特に意味はない。


さて、私と同じ世代(平成初期生まれ)のポケモンフリークの方なら、これもご存じのことだろうが、実はポケモンとラテンアメリカにはちょっとしたかかわりがある。

いわゆる第一世代と言われるポケモンの「赤」「緑」バージョンには、データ上ゲームカセットに存在はするものの、通常のプレイで出現させることが出来ない隠しキャラである「幻のポケモン」というのがいて、名前を「ミュウ」という。小さくしなやかな体躯に薄いピンクのカラーリング、長い尻尾に大きな目を持つこの可愛らしいポケモン、当時は最強と名高いエスパータイプであったことに加え、どんな技でも覚えるという特徴を持っているのだが、実はこのミュウが南米のギアナ高地に生息しているらしい、という描写があるのだ。

ギアナ高地といえば南米大陸の北側、国でいえばコロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、仏領ギアナ、そしてブラジルにかけて広がる高地であるが、地球上でも貴重な、「秘境」という言葉が似合うこの地にミュウが生息しているというのは、なんともロマンのある話ではなかろうか。

となれば、ポケモンGOでもミュウはぜひともベネズエラ産にしたい。私はこう考えて、ミュウを確実にゲットできるイベントを、ベネズエラに滞在できる機会までやらずにとっておいた。

いざベネズエラ出張となり、ミュウを入手するためのイベントを一つずつこなしていったが、なかなか思うように進まない。治安の問題から、スマホを手に外を自由に出歩けないというのもあるし、そもそも出張中で自由時間が少ないというのもあった。移動の車内でなんとかポケモンを集め、一歩一歩ミュウ出現まで近づいて行ったが、ベネズエラ滞在最終日に課題を一つ残してしまった。

私は何とかミュウ出現にこぎつけるべく、深夜、狭いホテルの室内を歩き回り、部屋の端から端までを何度も行ったり来たりしてみたが、課題クリアに必要なポケモンたちがなかなか出てくれず、結局クリアを諦めて眠りについた。

最後の希望だった翌日も、アプリを開く時間もないまま、ベネズエラを後にすることとなってしまった。

結果、今私のスマホの中には、ブラジル産のミュウがいる。ベネズエラを後にして、その当時居を構えていたブラジルに戻ってから、意外なほどあっさりと最後のミッションを完遂。ミュウと相まみえることは出来たが、念願のベネズエラ産は儚い夢と消えた。だが、ミュウの生息地はギアナ高地。一応ブラジルの北部エリアも、ギアナ高地に含まれる。

ということで、妥協の結果ではあるが、私のミュウは古の伝承の通りギアナ高地(らへん)出身ということで、特に誰に自慢するでもなく、自己満足にほくそ笑む。

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