気を飛ばされた話
能力者に会ってもそんなに驚かなくなったのは、二十代の前半で気を飛ばされたことが大きいと思います。
その人はすごく親しかった人の血縁で治療者をしていました。肩こりや腰痛に悩まされがちな私はその人のマッサージをたびたび受けに行っていました。
ツボをぎゅっぎゅと押されたり、関節をバキバキ鳴らされるタイプのマッサージではなく、なんというのかな、ふわっとピンポイントな部分にちょっと触れたり、つついたりするだけ。
それだけで身体が風邪を引いたようにだるくなって(好転反応)、一晩寝ると良くなっている。
なんだこりゃ、と思いました。
ちょっと触れただけなのに、揺り戻しがすごいくる。
筋トレを二時間しても、こんな疲れ方はしないぞ。
人体って不思議だなぁと思いながら(ほんとはその施術自体が不思議なんだけど)、特に疑問に思うことなく通い続けていました。
ある日のこと、施術終わりに左足首だけ違和感が残りました。
そこだけ施術が甘かったのか、いつもの疲れとは違う重さをともなった痛みがありバランスが取れずによろめいていると、治療者の先生が来て、
「左足首のバランスが悪かったね。ごめんごめん。今治すからね」
再調整することになりました。
一瞬で身体の良し悪しが分かるのってすごいなと思っていると、数メートル先の先生が何かをつまんで上に放り投げる仕草を……。
そのジェスチャーをした瞬間に、わたしの足の痛みが取れ、身体のバランスも元に戻りました。
あれ、触れていないのに。
これは俗にいう「氣」というやつか?
呆然としていると「これで大丈夫。このまま様子を見てください」と軽やかに告げられ、店の外まで見送られました。
大丈夫? 確かに大丈夫になったんだけど、アレはなんだったんだろう。
まあ治ったからいいや(笑)
「遠隔治療」というものが実際に有効で、回復魔法みたいに手を触れずに治癒ってできるんだなあと、後になって気づきました。
気だったのか。エネルギーだったのか。
成分的なものは分かりません。
不思議な体験をしたのはその一回だけ、その後は変わりなくソフトタッチなマッサージを受け、肩こりや腰痛を治してもらいました。
その効きも常に良くて、一時代を助けられました。
(この文章がその時代に懇意だった人々には読まれないと思うけど)
この場を借りて、ありがとうございます。
あれからけっこう不思議な人に会ったし、会うたびにびっくりはしたけれど、興奮や畏怖や崇拝とは無縁のまま「まあ不思議な力はあるよな。だって足首に触れずに治せる人がいたもんな」と自然体でいられたのは、ありがたい贈り物でした。
そうそう、昔のバラエティ番組でも気功の達人が「氣」をぶつけて芸能人をプールに落としていたっけ。
今はスピリチュアルやオカルトがガチで人の心に食い込んでしまう時代になりました。
良いか悪いかといえば、良くないとはっきり思う。
一部のオカルト好きが不思議なことを探究して、周りの人が「あの人、変なことやってる……」と引き目で見るくらいが割合として健全だ。
そんなオカルト好き本人も「まあそういうのあるよな」という距離感で接するのがちょうどいいなと思います。
※お店の詳細は聞かれてもお答えできません。
オニキ ヨウ
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ゆきて、かえりし? 物語——「入出口(irideguchi)」
◆Introduction◆
すぐ帰ってくるかもしれない。
ずっと帰ってこないかもしれない。
実家に帰る友だちに、あちらの渋谷駅で遊ぼうと誘われる私。
Wi-Fiスポットと繋がるとき、五人(六人?)の運命がめぐりだす。
◇サイト内の「お試し読み」より、
「ゆきて」が無料で閲覧できます。
◇「はじまりのうた」朗読PVも公開中。
★音楽協力:ぺのてあ(@penotea)さん
◇「入出口」 刊行を記念して、
オカルト&スピリチュアルな体験記事をnoteに公開予定です。
お楽しみに!
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