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続・微生物の寿命について。無限に増えない酵母と、無限に増える(?)細菌。

生物の構成単位である細胞。

細胞は2つに分かれて増えます。

微生物の場合で言えば、倍々ゲームで増えていくので、一つの微生物の細胞が一晩たったら一億個、なんてことも決して珍しくありません。

では、細胞は無限に増えることができるのでしょうか?

実は細胞の種類によって、傾向が異なるので、まずは細胞の種類を整理してみます。

細胞の構造によって、生物は「真核生物」と「原核生物」に分かれます。

「ヒト」、パンやビールの発酵に用いる微生物「酵母」、「乳酸菌」「納豆菌」を2つに分類してみると以下のようになります。

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同じ微生物であっても、「酵母」と「乳酸菌」「納豆菌」とは分類が異なります

さらに細胞の構造だけで見れば「酵母」は「ヒト」と同じ分類になります。

まずは「酵母」のお話から。

パンやビールの発酵に用いる微生物が「酵母」です。家庭でパンを作るときに入れている「ドライイースト」が「酵母」ですね。

パンやビールに使う酵母は、出芽といって芽を出すように増えます。

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そして、出芽のたびに、お母さんにあたる細胞(母細胞と言います)に「出芽痕」という構造ができます。

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ひとつの母細胞の出芽回数は、文献によれば平均で23.9回。無限に増える、というわけではないようですね。

1個の細胞が出芽しうるのは最高43回,平均23.9土8.3回であった
「酵母の出芽」林部 正也 日本釀造協會雜誌 / 68 巻 (1973) 5 号 p. 352-359

娘細胞には「出芽痕」がないので、その後も分裂できます。

一方で、「乳酸菌」や「納豆菌」などは「寿命がない」と言われていますが、「調べるのが難しい」と言うのが実際のところのようです。

微生物には寿命がないといわれている。細菌のように均等に分裂する細胞では,分裂後の2 個の細胞を区別できないので,1 個の細胞に注目してその寿命を調べることは難しい。
「母は娘のために老けていく」向由起夫 生物工学会誌 – 90巻1号

まとめると、「真核生物」と呼ばれる「ヒト」や「酵母」には寿命がある一方、「乳酸菌」や「納豆菌」などの「原核生物」はよくわからないが「寿命がない」とも言われている、と言うことになります。

人にとっても酵母にとっても「母と娘」は特別な関係のようです。


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