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Design&Art|デザインを覗く 〈02.大地の音色〉

日本でも世代を超えて長く愛されている、フィンランドのデザイン。アアルト大学でデザインを学び、現在は日本とフィンランドを繋ぐデザイン活動を行っている、lumikka(ルミッカ)のおふたりが、フィンランドデザインをつくる様々な要素を探り、その魅力を紐解きます。


空を見上げること、大地を歩くこと。

私たちは、外の世界を自分の目で見つめ、自分の足で大地を歩くことを通じて自然と出会い、そして新たな視点を発見します。極めて当たり前のことのようですが、都市に住んでいると久しく土の上を歩いていないことにふと気付くことがあります。アスファルトの大地は固く、土の香りは街の雑踏にまみれて霞んでいきます。

フィンランドでは、街のすぐそばに森があり海があり湖があり、またそこへ通ずる自然のままの小道がたくさんあります。それらは、ただ単に人々の散歩道としての役割を果たすだけでなく、五感を通じて自然を感じる豊かな時間や創造へのインスピレーションを与えてくれているのです。そして例外なく、フィンランドのアーティストやデザイナーも自然の中を歩くことを通じて数多のインスピレーションを感受してきたことでしょう。

今回は、フィンランドの大地を歩くことで発見できる風景 ── 足元に広がる大地の音色を、そっとのぞいてみようと思います。


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寒い冬の朝。ヒエタニエミ(Hietaniemi)の海岸には、波が描いた凹凸が潮の運動をあらわにし、取り残された波の欠片は光を浴びてきらきらと輝きます。無秩序に並んだ小石たち、まるで天の川のようにも見えますね。


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空気もろとも氷に覆われてしまうことも。絶え間なく動き続ける波が徐々に力を失って静止するそのプロセスを想像すると、自然に宿る生命のようなものを感じます。水・土・空気が互いに干渉し合い、時に美しく調和をしながら自然をかたちづくるのです。


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ある日の水溜まり。雨上がりの水溜りも寒い日には凍りつき、砕けた氷と黒い大地のぶつかり合いが垣間見えます。傷ひとつない真っ新な状態の水溜り(氷溜り...?)を目にすることもありますが、この写真のように先に見つけた誰かによって砕かれていることもよくあります。雪や霜柱の上を歩いてみたくなるように、凍った水にはどこか心惹かれてしまいます。


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雪。朝起きて窓からの眺めが真っ白に染まっていると、外へ出て歩き回りたくなる衝動に駆られます。消えてしまうかもしれない雪の儚さが、私たちの情動になにか働きかけるのでしょうか。


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雪あられの日には、こんな風景も。この上を歩くと、雪とはまた少し違った感触が足元から伝わってきます。目と耳と肌と、あらゆる感覚器官で自然を感じることができるのも、歩くことの醍醐味です。


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波、海、穏やかに。海のそばを歩いていると波のゆらめきに心惹かれます。海の上を歩くことはできませんが、人が歩かないからこそ波は一定のリズムを保ち続け、いつも穏やかな表情をみせてくれます。散歩中に、ぼーっと水面を見つめている人々を目にすることも少なくありませんでした。


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水面に映る空。風のない日は水面に空が反射して、綺麗な夕暮れを大きな水のキャンバスに描いてくれます。


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足元に広がる春の訪れ。雪のように見える白いものは、どこからか飛んできたふわふわの綿毛です。舞っている様子も幻想的なのですが、このように自然と生まれる緑と白のグラデーションも美しいです。


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秋のグラデーションはより鮮やかに、よりセンセーショナルに。長い冬を前に植物たちは最後の力を振り絞って世界を彩り、そして私たちを楽しませてくれます。

今回はフィンランドの大地を実際に歩いて出会った、足元に広がる美しい風景をピックアップしてみました。大地が奏でる色とりどりの音色が、写真を通じて聞こえてきたでしょうか。

冒頭にも書いたように、都市に住んでいると土の上を歩く機会が少ないことにふと気付かされます。同時に、自然の中を歩くこととは、様々な出会いと発見に満ち溢れているのだなと改めて実感します。例えば、雪の中を歩くこと。雪は、風景を真っ白に染めて視覚的な情報量を減らしてくれるだけでなく、街の音やノイズを吸収し、聴覚的にも静寂した空間と時間を私たちに与えてくれます。海岸では波の音が静かに揺らぎ、森の中では小鳥の声がいつもに増して響き渡ります。なんでも得られる現代だからこそ、なんにもない空っぽな時間が貴重だったりしますよね。

このように自然とピュアに向き合う豊かな時間は、きっとフィンランドの人々へ少なからずインスピレーションを与えていることでしょう。私たちも、歩きやすいアスファルトだけではなく、たまには舗装されていない小道へ歩みを進めてみてもいいのかもしれません。都市の雑踏に隠れて、大地が美しい音色を奏でていることでしょう。

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