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Design&Art|デザインを探して 〈01.黄昏の海〉
日本でも世代を超えて長く愛されている、フィンランドのデザイン。アアルト大学でデザインを学び、現在は日本とフィンランドを繋ぐデザイン活動を行っている、lumikka(ルミッカ)のおふたりが、フィンランドデザインをつくる様々な要素を探り、その魅力を紐解きます。
私たちlumikkaによる「デザインを覗く」シリーズは、新たな視点で再スタートします。今回からのテーマは「デザインを探して」。長らく、遠くの場所から眺めることしかできなかったフィンランド。少しずつ、少しずつではありますが、いま、北への扉はまた開こうとしています。
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旅をしませんか、デザインを探して。
このコラムでは、土地を歩いたかつての記憶を頼りに、フィンランドのデザインやデザインの種となる美しい風景を探す旅に出かけます。おだやかな波のような、言葉と写真がゆらぎ混ざりあう記憶の旅です。
デザインに関係するものも、そうではないかもしれないものも。そのすべてを「フィンランドデザイン」の一部としてご紹介します。自然も、文化も、人間も、そしてデザインも、境界はなくひとつながりだと思うから。それが、フィンランドデザインなのだと思うから。
デザインをめぐる私たちの旅に、どうぞお付き合いください。
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染まる夕日と黄昏の空。西の海へ。
ヘルシンキが海に囲まれていることはもはや言うまでもないかもしれませんが、ヘルシンキの西側に大きなビーチがあること、そして、そこで見る夕日がとりわけ美しいことはまだ知らない方も多いかと思います。そこは「ヒエタニエミビーチ」という、人工的につくられた砂浜です。
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ヘルシンキの中心部から近い、とはいえビーチがあるのは長い散歩道を通り抜けた先で、しばらくは森と海の間を歩くこととなります。ちなみに、この散歩道の右側にあるのはヒエタニエミ墓地。アアルトをはじめとする芸術家や冬戦争の兵士など、この国の歴史をつくってきた多くの方々が眠る場所です。
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見上げれば、夕日に照らされた木々のかがやきが。足元には、夕日のはじける波のきらめきが。まるで、ゆりかごのような心地の自然のゆらぎは、散歩をする人々の心をやさしく癒してくれます。
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実際のところ、対岸にある施設はかつて療養所として使われていたそうで、このおだやかな風景は昔から市民の生活と精神を支えていました。そう教えてくれたのは、犬の散歩をしていたご年配の方。フィンランド人はとても内向的だといわれることもありますが、この散歩道では、なぜだか自然と会話が生まれます。それも、この美しい空間と時間を共にしているためでしょうか。
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走ったり、駆け抜けたり、話したり。みんながみんな、それぞれ自分の時間を楽しんでいる。その風景はなによりも美しくて、だから、ビーチに辿り着くこともなくずっとこの道が続いてくれればいいのにとすら思うことがあります。
人も、自然も、歩くたびに全く違う風景がそこにある。それが散歩の魅力だと思うのです。
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そうして歩いているうちに、ヒエタニエミビーチが見えてきます。長く伸びる海岸線にはトレーニング器具やビーチバレーのコートが設置されていて、夕暮れ時にはいつも誰かが先にいます。ひとりの人も、ふたりの人たちも、沈みゆく夕日を眺めながら。
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波打ち際に残されるのは無数の足跡。人々の痕跡は砂に記録され、波は、潮の満ち引きにしたがってその一切をかき消してゆきます。
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このビーチに広がる風景は、なんだかとてもフィンランドらしいなと感じます。また同時に、この風景の延長線上にフィンランドデザインがあることが、何ら不思議ではないというか、妙な納得感があるようにも思えます。
極寒のツンドラの大地にも灼熱のサハラ砂漠にも文明があるように、人は周囲の環境に影響されながら、適応しながら文化をつくりだす生き物です。ゆえに、私たちが見ている風景や肌で感じている空気は、何らかのかたちで私たちの存在の一部となっているはずで、それが世界の多様さをつくっているのだと思います。「デザイン」もたぶん同じで、デザイナーが日常的に見ている風景はきっとその人の創作に少なくない影響を与えていることでしょう。
とすると、「なにを見るか」と「なにをつくるか」というふたつの行為は、本質的には同じことなのかもしれません。
この黄昏の海の風景からは、どのようなデザインがうまれる(うまれた)のでしょうか。きっとそれもまた、この場所のように美しく、物語に富んだものであることでしょう。
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