Design&Art|北欧デザインのとびら 〈15.ラプアン カンクリへのデザイン〉
「北欧デザインのとびら」は15回目を迎え、今回が最終回。2023年はラプアン カンクリ50周年ということで、最後はラプアン カンクリとの出会い、そして、デザイナーとしてラプアン カンクリで経験したことを書きたいと思います。
ラプアン カンクリと出会ったのは2012年。アアルト大学院のPattern Labというプロジェクトで、私たちが作ったパターンデザインを見てもらうために、オーナーのエスコさんとヤーナさんに初めてお会いしました。その時、二人がとても優しくラプアン カンクリについて話してくれたのを覚えています。そして、私たちのパターンを見る真剣な眼差しも。
ヘルシンキのショップを訪れたのもその時が初めて。プリントじゃないのが素敵!リネンの素材感がとても良い!ショップに並ぶラプアで織られたたくさんのリネンタオルを見て、とても感動しました。
私が初めて買ったラプアン カンクリのアイテムは、写真の一番右にあるサウナカバー・Naisten Sauna。今でもよく使っています。
現在もそうですが、その頃からショップにはテキスタイルだけでなくフィンランドならではの雑貨も置いていて、それも魅力的なものばかり。ラプアン カンクリと出会ったその時から「ヘルシンキで私の一番お気に入りのお店」として海外から来た友達を必ず案内するようになりました。
こんなに素敵なラプアン カンクリの商品をいつかデザインしてみたいと強く願っていた中、2014年にヤーナさんと再会。2015年には私のデザインしたリネンタオル・Timanttiとウールブランケット・Ainoが発売され、2017年にはリネンタオル・Sade / Sadekuuroが発売されました。
2018年にはHesinki Design Weekのメインイベントとして開催されたFiskars Summer Houseという展示会にラプアン カンクリのパートナーデザイナーとして参加。ラプアン カンクリのアイテムを使って、サウナルームをデザインするというプロジェクトでした。ヤーナさんと二人でたくさん笑いながら楽しく設営作業をしたことを今でも鮮明に覚えています。 この展示会に向けてリネンタオル・Jokiも発売されました。
2021年には、私のスタジオがあるハラッカ島から見える海の景色を描いたデザイン、Saariがリネンタオルとして発売。朝日や夕焼けの光が海に映った様子を描いたスケッチが、ラプアの工場でリネンタオルとして織られました。織りで表現された水彩の鮮明さには驚きでした。自然の新鮮な風景をテキスタイルに織り込む、これは高い技術を持つラプアン カンクリの得意技だと思います。
ラプアン カンクリのアイテムをデザインして感じることは、長く愛されるもの・長く使えるものを大切に作っているということ。もちろんリネンやウールといった天然素材にこだわりを置いているということもありますが、デザインもファーストファッション・テキスタイルとは違う、ワンシーズンだけではなく、ずっと愛されるようなタイムレスなデザインを採用しているということ。
私はラプアにある工場を2回ほど訪れたことがあります。ヤーナさんが工場で働く人を自分の家族のように紹介してくれたり、とてもアットホームな環境でした。このラプアの工場でひとつひとつ丹念に作った商品を、大切にずっと使って欲しいという思いが、まさに伝わってきます。
そして創業50周年を迎え、ラプアン カンクリは未来に向けて強い線を描いていると思います。 エスコさんは私に会う度、新しい技術について熱弁してくれます。ラプアン カンクリを次の世代にどのように手渡したいか、そして、環境に優しいものづくりをどのように続けていくか。数年だけではなく、長い先の将来を強く考える姿勢。ラプアンカンクリのこれからのJourneyがとても楽しみです。
初めてのラプアン カンクリとのコラボレーションから約10年が経ちます。これからもデザイナーとしてラプアン カンクリのものづくりをお手伝いできたらと思っています。次の50年はどのようなストーリーになるのでしょうか。
50周年おめでとうございます!
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