自律神経失調~体の異常に気付くまで②~

ここで簡単に記者の仕事について記しておこうと思う。

サツ担って何よ

会社員のみなさんに営業やマーケティングといった分野があるように、記者にも行政、医療、教育、警察、暮らしのフィールドがある。私は入社時から警察の担当だった。

警察担当は業界内で「サツ担」と呼ばれ、記者の登竜門とされる。取材の内容は、事件や事故など。決して楽しい話題ではない。

かつて、社会部で出世していく記者=サツ担を勤め上げた人という風潮があった。大手の新聞社ではいまだに、「サツ担至上主義」で、警視庁や大阪府警を担当した記者が出世街道を走る。海外特派員を希望していても、その下積みのためにサツ担をやらされ、そのご褒美として海外勤務を手にする--なんて話もある。

まあ、とにかくサツ担はしんどい仕事なのだ。

直感が磨かれる仕事

何がしんどいって、公務員は法律で秘密を守る義務があると定められているから、取材先に真正面から会いに行っても取り合ってもらえないのだ。

例えば、「●●の事件で被疑者が明日逮捕されるという情報がある」という情報が入ったとする。業務時間内に捜査員たちに、「知ってます?」と聞いても、「何言うとんねん、アホか」と一蹴されて終わる。

なので、朝掛け夜討ちといって、出勤前や帰宅途中といったプライベートな時間に情報を取りに行く作業が必要になる。この朝掛け夜討ちが、私の場合は早い時で4時半、夜は23時頃まで続いた。

その際、「情報があるんですけど…」と聞いてもなかなか答えてもらえない。世間話から事件の話に入り、顔色や反応、温度感を見ないといけない。

例えばのやり取り…

「お疲れ様です。今日も遅いですね。飲み会じゃなさそうですねえ」

「仕事や仕事」

「もしかして、あの事件ですか」

「言えない」

「あの事件、帳場にずっと捜査員が張り付いてません?結構動いてますよね。もしかして、逮捕近いんじゃないですか」

「・・・・・」

この時の受け答えや仕草、言い回しに注目して、慎重に情報をつかむ。全神経を集中させて、相手の立ち回りを見ないといけない。これがなかなか大変なのだ。

「逮捕、明日午前ですか」

「午前か午後かは言えない」←逮捕すること前提に話が進む

「容疑は●●罪ですね。最近、なかなかないパターンの事件ですね」

「せやねん。全国的にもこの罪名は珍しいわ」←●●罪の適応で当たり

という風に会話の中で当たり、外れを付けながら、記事を頭の中で完成させていく。この取材が不確実だと、誤報やミスリードにつながる。不確定要素を排除しながら、いかに必要な情報を得るかが重要になってくるのだ。

新聞記事を見ると、「捜査関係者によると・・・・」という文言が出てくるが、その記事をつくる土台になっているのはこういった記者の地道な朝掛け夜討ちによって得られた情報が基になっている。

記者の下積みとして警察を担当させられるのは、警察官が最も保秘を徹底する職種だからだろう。記者にとって重要となる直感力が磨かれる(それと、理不尽なことで怒られるのでメンタルも鍛えられる)。

プライド高いのは努力の結果

とにかく、元々プライドが高く、真面目だった私は1日3人の捜査員に会うことを目標に朝掛け夜討ちを始めた。月曜日に1週間の予定をたて、スケジュール帳に今週は誰を取材するかを考える。計画的に効率的にが仕事のモットーだった。

だが、そう上手くはいかない。日々のルーティンがある人、飲み会が好きな人、奥さんに駅まで送ってもらう日がある人ーなどなど。十人十色で、行動パターンはいろいろ。1人も会えない日もあった。

不規則な生活で朝が早く、夜が遅いので、サツ担にはハイヤーが与えられる。最初の異変が出たのは、昨年の11月ごろ。ハイヤーの中での出来事がきっかけだった。

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