休職を決意するまで①

自律神経失調と不眠症の診断を受けたが、心療内科医からの休職の勧めは断った。配置転換が決まり、引き継ぎに奔走。失った自尊心も少しずつ取り戻していた。少し寝られるようになり、ご飯も美味しく食べられるようになった。

だが、特大ストレスが降りかかる。

心ない一言「不倫がバレたんか」

配置転換が決まり、引き継ぎをやっていたある日、男性のX先輩から電話がかかってきた。よく下ネタを言う人で、嫌だなあと思いながらも電話に出た。

「お前、サツ担外れるんか。何があったんや。警察官との不倫がバレたんか」

いやいやいや、何の話?と思うと同時に、怒りがこみ上げてきた。冗談で言っているので、普段なら「何言うてるんですか~そんなわけないじゃないですか~」と流すが、この時は絶句してしまった。

「情報のために寝んとは思うけど、まさかと思ってさ~(笑)まあ、さすがのお前でもそれはないわな~」

まだ話を続けたがるので、「はあ」「へえ」と相づちを打っていると、20分くらい別の話をして電話は終わった。

電話を終えて、近くにいた男性の先輩に相談した。「ちょっと気持ち悪くないですか?腹立つんですけど」。これまでにも、x先輩からはセクハラめいた発言を度々聞いていた。だんだんとはらわたが煮えくりかえってきた。

夫にもその話をした。「失礼な奴やな。人事に言うたら?」。一緒になって怒ってくれたので、私の気が少し治まった。女性記者にも電話を掛けて、話を聞いてもらった。2日間くらいは怒りの感情でアドレナリンが出ていたのだと思う。ちょっとハイテンションだった。

しかし3日後、「不倫がバレて代えられるとちゃうんか」という冗談の一言が、寝ても覚めても頭の中をぐるぐると回るようになる。

「私って、寝て情報を取ってるみたいに周りから見られてたんかな」

「だとしたら、自分のどういう行動がそういう発言に結びついたんやろう」

「地道に頑張ってきたのに。悔しい悲しいつらい」

「自分が気付いてないだけで、周りの人たちも不倫してるって思ってるんかな」

そんな考えが頭の中に浮かび上がっては涙が出て胸が苦しくなる。引き継ぎの書類を作っていても、人と話していても、食事をしていても、お風呂に入っていても、車で移動をしていても、悲しくなって泣いてしまう。

ついには食事が喉を通らなくなり、再び眠られなくなった。

涙が止まらなくて心療内科に駆け込む

発言から1週間半後、限界を迎えていた私はH先生に相談した。先生は、漢方薬をすぐさま半夏厚朴湯と抑肝散に変えてくれた。つらいことがあった、と話しただけで内容は深く聞かれず、休職を促された。

「10月から休みましょう。もう十分すぎるほど頑張りました

「でも、10月からかなり楽な役職になるんです。もう少し頑張ってみます」

「では、1週間行ってみてください。それで様子を見ましょうね」

もらった漢方薬はこれまたするりと喉を通った。抑肝散を飲んだら、あらゆる感情が心に渦巻いていたのが、ふわっとなくなった感じで、その夜はよく眠ることができた。

噂を流されていたことを知る

同期の女性記者と電話をした。私が配置転換になることについて、「みずいろが産業医にサツ担を変えてくれと申し出たっていう噂もあるねん」と聞かされた。誰が言うてんの?と聞くと、男性のY先輩とのことだった。

だが、Y先輩にはその数週間前、電話で体調不良のこと、産業医や人事、部長とのやり取りのことまで話していた。「不本意です。私はもっとやりたかったです」とも伝えた。「でも体調が第一やから。はやく治しや」と温かい言葉をくれた人だった。

でも、そのY先輩が「体調が悪いから変えてくれと願い出たのに、プライドの高さからか強がって、代えられるのは不本意やと言うてるらしい」と噂を流していることを知った。

男ってくだらねーと怒りがふつふつとわいてきた。2つの漢方ではもう抑えられないくらいに、怒っては泣き、悲しんでは泣き、感情がバカになった。

会社で倒れた日

10月1日は配置転換の日だった。前日も23時まで追い込みの仕事をしていたこともあり、しっかり眠れたのは3時間くらいだった。

朝、鍼灸院に行ってから会社に行くことにした。道路を歩いていると、また思い出す。「不倫してたんがバレたんか」。「自分から体調が悪いって申し出て代えてもらうのに、プライドが高いからうそついてるらしい」。言われたことが頭をぐるぐる巡る。

なんでそんなこと言われないかんのやろー。今日から新しい部署やのにしんどいなあ。

泣きながら鍼灸院に行き、鍼を打ってもらってうつぶせのまま泣いた。泣きながら電車に乗って会社へ行き、泣きながら上司と話した。

とてもじゃないけど、冷静な感情が追いついて来ない。周りにいる人には「すいません。何か涙もろくて」とだけ伝えた。配置転換初日なので、タスクもいろいろと振られた。

ミーティングがあり、私が配置転換になることが再び伝えられた。「この中にも、噂を信じてる人がいるんやろうなあ。信じてた人に色々話したのに、そんなこと言われるなんてなー」。ミーティング中も涙が止まらなかった。

続きます→

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