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【これからのキャリアアップ②】ホワイトカラー(事務職)の生産性向上がポイントに!

 前回は、これからの時代は自分のキャリアは自分で作っていかなければならないのだということと、年齢や職種に関係なく学びや学び直しがキャリア形成に重要になってきた、ということを書きました。今回は企業の立場からみた、人材育成の考え方の変化について見ていきたいと思います。

 これまでの日本の企業の従来型の考えでは、人件費のことを「最大のコスト」とか「固定費」などと呼び、「経費(コスト)」のひとつとして捉えられていることが一般的でした。コストというのは原価に含まれるものなので、利益を拡大するにはコストは抑えるに越したことはない、人件費も全体の利益に見合ったものであるべきだと考えられていました。毎年の春闘では、賃上げを巡って「総額人件費」をいかに確保するか、あるいは抑えるかが労使の論点でした。

 これに対して、近年は新しい考え方、「人的資本経営(Human Resource)」が浸透し始めています。この言葉が一躍脚光を集めたのは、令和2年9月に経済産業省から公表されたひとつのレポート、「人材版伊藤レポート」がきっかけでした。このレポートでは、「今日企業が抱えている様々な経営課題は人材面での課題と表裏一体である」から、「企業の競争力の源泉が人材となっている中、人材の“材”は“財”である」との認識に立ち、人材戦略に大きな変化をもたらす必要性がある、としたものでした。「人材」ではなく「人財」と考えようと言うのです。

 詳しくみていきましょう。「人材」では人件費をコスト(原価)としてみていましたが、「人財」となることで企業のリソース(資源)、つまり投資の対象とみられるように変わってきたのです。投資対象ということは、レバレッジ(てこ)を利かせて会社に大きな収益をもたらす可能性を秘めたものとみられているのです。
企業に収益をもたらす資源(リソース)のひとつとして人件費がみられるようになると、働くわたしたちはいっそう成果を出すことが求められるようになります。特に非製造や非営業の仕事群、いわゆるホワイトカラーと呼ばれてきた「事務職」であっても、成果が問われるようになってきました。

❝ 特に日本では、雇用者のおよそ7割を占めると言われるホワイトカラー層の生産性が低いとされており働き方改革が効果を挙げるためにはホワイトカラーの生産性向上が不可欠である。(塚田聡、2017)❞

 このような状況の変化は、わたしたちのキャリア形成に対する考え方も変えていきます。わたしたちは、どれだけ成果をあげられるかという、自分を価値のあるリソースとして高めていくことが、これからの時代大きくもとめられてきます。長く会社にいたからそれだけ会社に貢献してきたではだんだん通用せず、どんな成果をあげてきたかがキャリアアップに直結するようになるのです。

 そして、わたしたちがそのために求められているのが、学びや学び直しによる新たなスキルの獲得なのです。これは若い人にとっては大きなチャンスです。年功にしばられずに自分のスキルを発揮できるようになるからです。では、これまで長く会社に奉公することで頑張ってきた中高年にとっては厳しい淘汰の時代になるのでしょうか。いや、けっしてそのようなことはありません。学びや学び直しによるスキルアップの可能性は、年齢や職歴に関係なくわたしたちが等しくもっているものです。これまでの経験にしばられることなく、自分の経歴の棚卸をしてレバレッジポイントを発見し、教育訓練給付金制度を活用してあらたな資格(ポータブルスキル)を獲得する。こういったやり方で、わたしたちは立派なリソースになっていくことが可能なのです。

 次回は、今後必要とされる具体的なスキルについて見ていきます。

・・・04/08/17・・・