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意味のストライクゾーン「英語の受動態は「~される」なのか?」

中学2年の終わり頃に英語の授業で受動態って習いますよね?
be動詞+過去分詞で「~される」って訳すんだよ、って習った記憶がある人もあるんじゃないでしょうか?

でも、不思議に思ったことないですか?

The window was broken by him. 
ならば「その窓は彼によって壊されました」ですが、
The window is broken.
は「その窓は壊されている」のか「その窓は壊れている」なのか?

これ、そもそも英語に「~される」っていう概念が日本と同じように存在していないんじゃないかって思うんですよね。

過去分詞形を「~された」と覚えさせることにはデメリットもあるんじゃないかと思います。

過去分詞形を「~された」と考えるのをやめる

過去分詞形を「~された」ではなく、「動作が済んだ状態」と捉えるとこの問題を回避できると思います。

The window was broken by him. は「その窓は彼によって壊す動作が済んだ状態でした」⇒つまり「壊された」

The window is broken. は「その窓は壊す動作が済んだ状態です」⇒「壊れている」のようにです。

日本語の「される」と何が違うかと言うと、行為を「受ける」というある種のベクトルを持ったエネルギーがあまり感じられない点でしょうか?

現在完了形の捉えかたへの応用

現在完了形は中学英語でなかなかハードルが高い項目ですが、これも過去分詞形が「動作が済んだ状態」であると捉えると理解がしやすくなります。
例えば He has written a poem.  という文章を例に取りましょう。

中学校で習った通りだとこの文の考えられる意味は2つです。
① 彼は詩を書いたところだ(完了)
② 彼は詩を書いたことがある(経験)

じゃあ、どっちなの?ってことですが、この時点ではどちらでもなく、
「彼は詩を書くのが済んだ状態を持っている」という意味です。

この表現が"Have you ever written a poem?" の質問の答えであれば②の意味になりますし、"Have you written a poem yet?" の質問の答えであれば①の意味であろうということになります。

つまり、そこには「したところだ」も無ければ「したことがある」もありません。

「詩を書いたという状態を持っている」というだけ。

意味をはっきりさせるために just を付けて完了のニュアンスを出したり、before を付けて経験のことだとわからせることはするにしても、文章の表現自体は同じです。

でも日本語にはそのニュアンスの違いを表すためにそれぞれ別の表現があるので、方便としていくつもの意味があるように説明せざるを得ないのだと思います。

「どうも」のストライクゾーンの話

日本語を学ぶ外国人の多くが日本語の「どうも」に苦労します。
文脈によって「ありがとう」だったり「ごめんなさい」だったり「こんにちは」だったり、非常にいろいろな使われ方をするのが難しいみたいですね。

これも以前の記事で述べた「意味のストライクゾーン」の違いによって生じる、言語学習で遭遇する大きなハードルのひとつです。

日本語を母語とする人は「どうも」がどうしてそんなに多様な意味を持つのかにあまり疑問を持たずに使っています。

それはやはり膨大なインプットの中で「どうも」が使われる文脈を体験することで無意識的に形成された「意味のストライクゾーン」で、しかもそれはある意味「暗黙知」になっているために非常に説明が難しいわけです。

Core Meaning を捉える試みの歴史

だからこそ「この場合はこういう意味」みたいに意味を分断することになってしまうのですが、それを統合する方法が慶應義塾大学の田中茂範先生を筆頭とする英単語の "core mearing"(核となる意味)をイメージで理解しようというアプローチです。

今では辞書や参考書にも前置詞などのイメージがイラストで載るようになりましたし、以前NHKでもこの考え方を導入した英語の番組がありましたね。

もうちょっと遡ると私がこのようなアプローチに初めて出会ったのは、私が大学入試の勉強をしていた頃(35年前w)で、西村喜久先生の「英語は動詞だ!」とか「英語は前置詞だ!」という本でした。

当時私はものすごく大きな影響を受けたのですが、それが今回私が現在完了形の意味を core meaning で統合的に捉えようという試みの原型となっているのは間違いありません。

まあまあ、昔話はさておき(笑)
この「ストライクゾーン問題」に関して私の考えをまとめると以下の様になります。

① 意味のストライクゾーンは言語によって異なる
② その違いを理解すると意味が細分化してしまうのは仕方ない
③ でも、何とかそれを統合的に捉えられる方法が欲しい
④ できれば体系化されたメソッドとして確立できないか?

ってことなんですが、それは一人じゃできないので、いろいろな英語指導者さんとの共同作業が必須なんじゃないかなと思っています。

というわけで、一緒に楽しくこういうことを考えてくれる仲間募集してます♪(^^)



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